学資保険のデメリット|低返戻率・インフレリスク・元本割れなど

学資保険の最大のデメリットは「返戻率の低さ」です。それをカバーする代替商品として、近年は低解約返戻金型終身保険や外貨建て終身保険が注目されています。これらは利率の高さを売りにしていますが、学資保険とは異なるデメリットも潜んでいます。ここでは学資保険、代替商品それぞれのデメリットを解説します。ぜひ保険選びにお役立てください。
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学資保険は、代表的な学費の貯蓄方法ですが、近年は返戻率が低いなどのデメリットによって加入を躊躇する家庭が目立ちます。保険会社では学資保険に代わる商品も提案していますが、代替商品にもデメリットがあるため適切な判断が必要です。ここでは学資保険と代替商品のデメリットを解説します。

1.学資保険とは

学資保険とは、子どもの進学時の入学金や授業料を準備するための保険です。毎月1万円や2万円などの定額保険料を積み立てて、18歳で満期保険金を受け取るという方法が一般的です。

途中で解約しない限り、銀行口座やクレジットカードから自動的に引き落としされるため、コツコツと確実に子どもの学費準備をすることができ「進学費用の準備と言えば、学資保険」という考えを持つ人も多いです。計画的に子どもの教育費を貯めていきたいという家庭では、子どもの誕生とほぼ同時に加入するケースが目立ちます。

その他にも、学資保険は、積立期間中に契約者となっている親が死亡したり、高度障害になったりするとそれ以降の保険料の支払いをしなくても満期保険金を受け取ることができる「払込免除特約」という機能がついており、親に万が一のことがあっても子どもの学費は確保できるという魅力があります。

このように、学資保険は貯蓄と保障という二つのメリットを備えた保険商品です。しかし、最近では「学資保険にはデメリットもある」という声が多く聞かれるようになり、実際に保険会社や複数社の保険商品を取り扱う保険ショップで学資保険加入について相談しても、学資保険以外の保険商品を勧められるケースが増えてきています。次の章では、学資保険のデメリットについて見ていきます。

2.学資保険のデメリット

ここでは、学資保険のデメリットについて解説していきます。

2-1.返戻率が低い

学資保険は、契約したときに定められている保険会社の予定利率によって返戻率が決まります。

過去には、学資保険の形で積立をすると、払い込んだ保険料に比べて満期に受け取る一時金が大きく増えるため、その魅力も追い風となって学資保険が人気だった時期もありましたが、2016年からマイナス金利政策が始まり、学資保険の返戻率が大きく低下しました。貯蓄性を重視する学資保険でも105%前後が平均的な返戻率となっています。

最近では、「学資保険は増えない」というイメージが定着しており、学資保険に加入しない家庭も増えてきています。

もちろん、学資保険の魅力は増やすことだけではなく、前章で説明した貯蓄の確実性や保障といった側面もありますが、返戻率という点から言うと現在は学資保険に加入しづらい時期であるということは事実です。

2-2.インフレリスクがある

学資保険は契約をする段階で何年後にいくら受け取れるかが決定している返戻率確定型の商品です。将来の資産の見通しが立ち安定的であるため、この特徴をメリットと捉える人もいますが、景気が良くなり国の金利が上がったり、物価上昇(インフレーション)が起こっても学資保険ではその恩恵を受けることができません。

銀行預金であれば利率が上がればその都度利率が変動しますし、投資信託などの金融商品であれば物価上昇が起こるとその相場環境に合わせて値上がりを期待できるものもあります。

それに比べて学資保険は、良くも悪くも契約時に満期保険金を決めると、金利や物価の上昇が起きてもその金額は変わることはありません。仮に、満期金を300万円に設定していたとします。10%の物価上昇が起きていた場合には、契約時に想定していた300万円の価値を得るために必要な金額は330万円となるため、学資保険だけでは足りないという事態が起こることも考えられます。

実際に、「学資保険に加入したから大学進学費用のことはもう心配しなくて大丈夫」という時代ではなくなってきています。大学の授業料は物価上昇の傾向にあるのです。

国立大学の年間授業料は現在53万5,800円です。しかし、この金額の2割増までの範囲で大学側が個別に授業料を決められるようになっており、ある国立大学が2019年以降の入学生の授業料をこの標準額から10万円引き上げるということを発表しました。

今の大学進学費用の基準に合わせて学資保険に申し込んだとしても、子どもが進学する頃には授業料が上がっている可能性もあるのです。

2-3.元本割れのリスクがある

学資保険には二つの元本割れをするリスクがあります。一つは、中途解約をした場合です。中途解約時の返戻率は年数経過とともに増えていくのが一般的ですが、それでも満期前に解約をしてしまうとほとんどのケースで元本割れが起こることとなります。

せっかく早くからコツコツ積み立ててきたお金が減ってしまっては本末転倒となってしまうので、中途解約をせずに済むよう支払い保険料は無理のない金額で設定することが大切です。学資保険は確実に毎月払うことができる金額にして、余裕のある時期のみほかの銀行の積立預金など他の積立をプラスするという方法も中途解約を防ぐために有効な手段です。

もう一つの元本割れは、そもそも契約時に決まっている満期一時金の返戻率が100%を割っているというケースです。そのような学資保険には、一般的な保険料払込免除特約のほかにも、子どもの医療保障や死亡保障などのオプションがセットになっていることが多いです。それらの保障の保険料が「掛捨て保険」の形で上乗せされているため返戻率が100%未満ということが起きてしまうのです。

後者の元本割れを防ぐためには、学資保険を選ぶ際にオプションは払込免除特約のみというシンプルな商品を選ぶということが大切です。

2-4.親の年齢によって保険料が高くなる

医療保険、がん保険、死亡保険など多くの保険に共通するのは年齢が高くなるほど保険料が上がるということです。学資保険も例外ではなく、契約時の親の年齢が高いほど保険料は高くなります。また、一般的に女性よりも男性の方が保険料は高いです。年齢や性別から保険料払込免除特約を使う確率を予測して、その確率に応じて保険料が高くなっていっているためです。

したがって、年齢が高くなるにつれ保険料が割高になります。更には加入できる年齢を制限している学資保険も多く見られます。このように同じ満期金を得るためでも保険料が割高になることや、選択できる商品の幅が狭くなってしまうことは学資保険のデメリットと言えます。

2-5.保険会社破綻時のペイオフがない

銀行預金の場合は、銀行が破綻したとしても1,000万円と利息が保障されるペイオフという制度があります。したがって、一つの銀行に1,000万円を超える預金がなければ銀行破綻によってお金が戻ってこないということはありません。

一方、保険会社が破綻した場合には、保険契約が別会社に引き継がれるなどして保険契約がなくなってしまうという最悪の事態は避けることができますが、状況によっては予定利率が下がる、保険金を満額受け取ることができない、早期解約の場合に解約控除がかかるなどのリスクがあります。

保険契約社保護機構によって責任準備金の90%は保障されますが、保険契約の条件が悪くなる可能性もゼロではないのです。

3.学資保険の相談に行くと提案される二つの保険商品とは

ここまで学資保険のデメリットを見てきました。最初に挙げた「返戻率が低い」というデメリットを背景に、近年では学資保険の相談に行くと必ずと言って良いほど代替保険商品を提案されるようになっています。

保険商品であれば、前章のデメリットであげた「中途解約時の元本割れリスク」「親の年齢が上がるごとに保険料が高くなること」「保険会社破綻時のリスク」は避けて通ることはできませんが、返戻率を改善する商品は存在します。ここでは、学資保険よりも高い返戻率を期待できるため、近年代替商品として提案されることが多くなった二つのタイプの保険について見ていきます。

3-1.低解約返戻金型終身保険

低解約返戻金型終身保険は、積立タイプの終身保険です。

学資保険として活用する場合は、積立期間を10年間や15年間と設定し、子どもの大学進学時のタイミングで解約をするという方法を取ります。

積立期間の10年間、15年間の解約返戻金を低くする代わりに、積立期間満了後の解約返戻金や死亡保険金を高く設定しています。

保険会社によっては、この契約方法を「学資プラン」と大々的に宣伝しているケースもあります。

学資保険と比較すると、積立期間満了後は一般的に低解約返戻金型終身保険の返戻率の方が高いため、学資保険の代用商品として利用されるようになりました。

3-2.ドル建て終身保険

ドル建て終身保険は、低解約返戻金型終身保険と同様に積立タイプの終身保険ですが、大きな違いは外貨で積立をしていくことです。

ドル建て終身保険を学資保険代わりに使う場合には、学資保険と同様に毎月積立をしていく方法を取ることが一般的です。積立金額は日本円で毎月の金額が固定されているものと、外貨で◯◯ドルなどと設定されており為替レートによって毎月保険料が変動するタイプのものがあります。

円建て保険に比べてリスクは大きくなりますが、利率が高く増える効果も期待できるため、外貨建てを選択する家庭も増えています。近年のアメリカの金融市場で金利引き上げが行われており、予定利率が上がっていることも売上好調の背景にあります。

「将来お子さんを海外に留学させるときにドルで貯めたお金を使うことができます」など夢のあるセリフで勧められることが多いですが、学資保険や低解約返戻金型終身保険のように解約返戻金や死亡保険金額が確定しているものではなく運用状況によって変動する商品なので注意が必要です。これらのリスクについては5章で解説していきます。

4.低解約返戻金型終身保険のメリット・デメリット

ここでは、学資保険の代替商品として人気のある低解約返戻金型終身保険のメリット・デメリットを見ていきます。

4-1. 低解約返戻金型終身保険のメリット

まずはメリットを見ていきます。

4-1-1.学資のための貯蓄と親の死亡保険を兼ねることができる

低解約返戻金型終身保険の本来の目的は、被保険者が亡くなったときに死亡保険金を受け取ることです。

学資保険では、万が一のときには払込免除特約でそれ以降の保険料支払いなしで満期保険金を受け取れるという制度がありますが、その額はあくまでも当初から予定されていた満期保険金の範囲内となっています。

学資保険の払込免除特約によって保障される金額と低解約返戻金型終身保険の死亡保険金を比べると圧倒的に低解約返戻金型終身保険の死亡保険金が高額となります。したがって、よりしっかりとした親の死亡保険と貯蓄を準備することができます。

4-1-2.学資保険に比べて積立期間満了後の解約返戻金が高い

低解約返戻金型終身保険は、積立期間の解約返戻率を抑える代わりに積立期間満了後の解約返戻率を高くしています。

基本的に、積立期間満了後であれば学資保険の返戻率よりも高くなっています。

保険相談をすると、設計書を作成してもらうことができます。経過年ごとの解約返戻率の一覧表を確認できるので、ぜひ低解約返戻金型終身保険と学資保険の返戻率を比較してみてください。

4-1-3.そのまま置いておけば増え続ける

低解約返戻金型終身保険は、その名前からもわかるように終身保険です。すなわち満期のない保険で、解約しない限りずっと契約を続けることができるのです。

学費準備のために保険に加入したものの、実際には別の貯蓄で対応する場合や、進学しなかった場合にはそのお金を使わずに済むことも考えられます。

その場合には、解約せずにそのまま保険の形で残しておくことで解約返戻金額は増え続けますし、死亡保障も継続が可能です。

このように満期が決まっている学資保険に比べると自由な使い方ができるようになっています。

4-2. 低解約返戻金型終身保険のデメリット

次にデメリットを見ていきます。

4-2-1.積立期間満了前に解約すると大きく元本割れする可能性が高い

低解約返戻金型終身保険のデメリットは、学資保険に比べて中途解約時の元本割れの額が大きくなることです。

積立期間中の解約返戻金を低くする代わりに、積立期間満了後の解約返戻率を上げるという仕組みを取っているため、積立期間中は大きく元本割れをすることとなります。

したがって、積立期間中は学資保険よりも更に換金性が低く、一度加入すると積立期間が終わるまで自由がきかなくなってしまいます。

低解約返戻金型終身保険を選択する場合は、積立期間中確実に継続できるかをしっかりと見極めることが大切です。

4-2-2.インフレリスクがある

低解約返戻金型終身保険のインフレリスクは、学資保険と同様のデメリットです。詳しい内容は2章で解説した内容をご覧ください。

5.ドル建て終身保険のメリット・デメリット

ここでは、ドル建て終身保険のメリット・デメリットを見ていきます。

5-1.ドル建て終身保険のメリット

まずはメリットについて解説します。

5-1-1.予定利率が高い

近年加入されるドル建て保険の多くはアメリカドルかオーストラリアドル建てで運用されるものです。

現在、特に利率が高いのは米ドル建て終身保険で、予定利率が3%を超えるものも販売されています。

円建て保険では実現できない利率となっているため利率の高さが決め手となり外貨建て保険を選択する家庭が増えています。

5-1-2 加入と同時に円建て保険に比べて高額な死亡保障が付く

ドル建て終身保険の場合には、加入と同時に高額の死亡保険金を備えることが可能です。

一般的に、円建てで運用されている低解約返戻金型終身保険と比べて更に充実の死亡保険金額となっています。

5-1-3.そのまま置いておけば増え続ける

終身保険は、本来はより長い保険期間で加入するものですが、あえて学資で活用するために子どもが18歳になるタイミングなどに解約して保険金を学費に充てるという方法をとっています。このタイミングで解約しても十分な返戻率を確保できることが予想されるため、外貨建て保険を学資保険に使うという手法が取られていますが、そのタイミングで学資金の必要がなければそのまま保険契約を続けることができるのです。

長く置けば置くほど更にドルベースでの返戻率が高くなるため、学費として使わなかった場合には老後資金のためにそのまま高利率で置いておくなど柔軟な対応が可能です。

5-2.ドル建て終身保険のデメリット

ドル建て保険にはメリットある一方で、気をつけなければいけないデメリットもあります。解説していきます。

5-2-1.為替リスクがある

「高利率で増える」「高額の死亡保障が付く」というドル建て保険のメリットを見てきましたが、これらはすべて「ドルベース」で見たときの話です。為替レートは日々変動しており、解約したいタイミングや死亡保険金を使いたいタイミングで円高になっている場合には、ドルから円に変えることによって資産が目減りしてしまいます。場合によっては、進学費用に充てるはずの資金が急激な円高によって元本割れを起こしてしまうリスクもあるのです。また、ドルの固定額で保険料を納める場合には、円安になればその分円に換算した保険料が上がるというリスクもあり、毎月の負担額が常に変動するため家計の管理がしづらいなどのデメリットもあります。

逆に為替差益で運用成果をより高められる可能性もありますが、外貨保険には為替変動リスクがあるということはしっかり押さえておきたいポイントです。

5-2-2.為替手数料がかかる

多くの外貨建て終身保険では、保険料支払いのとき(円→ドル)と解約返戻金を円で受け取るとき(ドル→円)に両替手数料が発生します。

保険商品ごとに為替手数料は異なりますが、1ドルにつき50銭などの手数料が発生するケースが多いです。

5-2-3.金利変動リスクを伴うケースもある

外貨保険が高利率とは言っても、毎月金利が変動する金利変動型の商品も多くあるのが現状です。その場合、金利が高いことが決め手となり加入したとしてもその後の景気によっては金利が下がり期待していた返戻率に到達しないという可能性も十分に考えられます。高利率を維持できるかどうかは誰にも分からないことなので、外貨建て保険では金利変動リスクを伴うこととなります。契約時の設計書に記載されている返戻率などの数字は、仮の利率で計算されており実際にどのような運用実績になるかはやってみなければわからないため、注意が必要です。

中には、固定利率を取る外貨建て保険もあるので、現在の金利で継続したいと考える場合は固定利率を採用している保険会社を探して加入するということも一つの方法です。

6.まとめ

この記事では、学資保険のデメリットと、そのデメリットの一つである「返戻率さの低さ」を改善するための代替商品として話題になっている低解約返戻金型終身保険及びドル建て終身保険について見てきました。

代替商品は、学資保険よりも高い利率が期待できるというメリットばかりに目が向けられがちですが、4章と5章で見てきたようにデメリットも潜んでいます。

契約する場合には、リスクをしっかりと把握した上で申し込むことや、特に外貨建て終身保険の場合には、学費のための積立金を外貨建て保険一本に集中させるのではなく、他の元本確保型の貯蓄手段と上手く組み合わせて利用するなどの方法を取ることをおすすめします。

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