学資保険とは、大学進学費用などの子どもの教育費を計画的に貯めて、必要なときにまとめて受け取ることができる保険です。
途中で簡単に解約することができず、半ば強制的に教育費を貯めることができるため、貯金が苦手な人でも貯められる堅実な方法とも言われています。
また、契約者である親が亡くなったときに保険料の払込みが免除になることや保険料控除の対象となることなど「貯蓄」ではなく「保険」の形にするメリットも大きいため、学資保険は利率が低くなった昨今においても根強い人気があります。
妊娠中や子どもがいる家庭では、一度は学資保険について考えてみたことがあるケースがほとんどですが、実際にいつから必要なのかということは案外知られておらず「落ち着いたら保険会社へ相談に行こう」「家計に余裕が出てから加入しよう」などと思っているうちにベストな加入時期を逃してしまうことも散見されます。
この記事では、学資保険がいつから必要かということや、加入のタイミングを逃さないことで得られるメリットなどを解説していきます。ぜひお役立てください。
1.学資保険はいつから必要か
最初に、学資保険はいつから必要かということを解説していきます。
1-1.そもそも学資保険はいつから加入できるのか
学資保険は子どもが生まれてから検討しようと思っている家庭も多いのではないでしょうか。
実は、学資保険は妊娠中から加入することが可能です。具体的に言うと、多くの学資保険で出産予定日の140日前から加入できることになっています。
1-2.学資保険はいつから加入するのがベストか
学資保険の加入は「早ければ早いほど良い」と言われています。妊娠中から加入できるので、妊娠中に加入しておくのがベストということになります。
出産が近づくにつれて健診の回数が増えてきたり、出産準備も本格的になってきたりと忙しく、学資準備のことにまで目が向かないと思われがちですが、実は出産後のほうがもっと目の前の赤ちゃんの世話に手一杯になり学資保険のことまで考える余裕がなくなってしまいます。
現在妊娠中の方は出産前に検討すること、既に子育て中の方はできるだけ早いうちに検討することをおすすめします。
2.学資保険の早期加入メリット
次に、学資保険に早期加入する経済的メリットを解説していきます。
2-1.返戻率が高くなる
学資保険のメリットの一つに、銀行預金よりも利率が高いことがありますが、その理由は加入者が支払った保険料を保険会社が債券などで運用して高い利率を還元してくれているからです。
学資保険に早期加入すると返戻率が高くなります。それは、より長期間運用してもらえることとなりその分高い利率を還元してもらうことができるからです。
2-2.毎月の保険料負担が抑えられる
学資保険は、学資として受け取りたい金額を200万円や300万円などと決め、毎月一定額を分割で支払っていくことになります。
当然ですが、早く学資保険に申し込むことによって払込み期間を長く設定することが可能になるため毎月の負担を抑えることができます。
逆に、加入が遅れると急ピッチで積立てなければならなくなるため月々の負担が増え保険料の支払いが難しくなるなどのリスクも考えられます。
短期払いなど払込み期間をあえて短くすることができる商品などもありますが、早く申し込むことによって払込みのスケジュールをより広い選択プランの中から選ぶことが可能なので、ご自身の家計にマッチした学資保険を選ぶことができる可能性もその分高くなります。
2-3.年齢制限を気にせず選択できる
学資保険は何歳まででも申し込むことができるものではありません。保険会社によって年齢制限は異なってきますが、6歳前後をリミットとするものが多いです。中には、3歳までという商品もあるので、より早い段階で学資保険の検討を始めると多数の商品の中から選ぶことができ、結果的に最も条件の良いものに申し込めることになります。
また、親である契約者の年齢にも制限がある商品もあることや、親の年齢が低ければ低いほど保険料を抑えることもできるため早期加入の経済的メリットは大きいと言えます。
3.学資保険は満期のタイミングと払込期間も重要
学資保険にはいつから入るべきかということの他にも満期のタイミングや払込期間など、返戻率を左右する条件があります。詳しく見ていきましょう。
3-1.学資保険受け取りの3つのパターン
学資保険の受け取り時期には保険会社によっていくつかのパターンがありますが、ここでは代表的な3つのパターンについて見ていきます。学資保険にいつから加入するかということと同様に大切な部分なので、学資保険加入前に確認してみてください。
3-1-1.大学入学に合わせて受け取る
学資保険で最も一般的な受け取り方法は、大学進学に合わせて子どもが17歳もしくは18歳のときに一括で受け取るというものです。17歳もしくは18歳受け取りを選択すると、子どもがその年齢に到達したあとに最初に迎える契約応当日以降に一時金を受け取ることができます。
なぜ17歳も選択可能かというと、早生まれの子どもの場合、18歳受け取りにしてしまうと大学入学の年の受け取りとなり、契約した時期によっては大学入学までに間に合わないという事態になってしまうからです。
大学の4年間在学中に必要な学費は、国立大学で約242万円、私立文系で約385万円、私立理系で約521万です。さらに、自宅から通えない場合には仕送りも発生してくるため、一般的に大学在学中が子どもの教育費の中で最も大きなウエイトを占める時期と言えます。その時期に備えられるのがこちらのタイプです。
3-1-2.祝い金をこまめに受け取る
小学校、中学校、高校、大学、大学卒業時など、進学の都度祝い金を受け取ることができる学資プランもあります。こまめに受け取る分、毎回の祝い金は少額になります。学費として使うというよりは、入学準備金として使うイメージです。
あらかじめプランを決めたら変更できない商品もありますが、小中高入学時に必要がなければ据え置くことができる商品もあります。
3-1.3.22歳で受け取る
学資保険というネーミングに違和感があるかもしれませんが、22歳の大学卒業時に受け取ることができるプランもあります。就職祝い金のような形となります。「このタイミングに一時金は必要ないのではないか」という意見もありますが、場合によっては大学院進学などを見越してこちらのタイプを選ぶ家庭もあります。
3-2.ベストのタイミングは18歳
学資保険の受け取り方法について3つのタイプを見てきましたが、もっともベストなタイミングは18歳(早生まれの場合は17歳)と言えるでしょう。
やはり、大学進学時には入学金、初年度授業料、一人暮らし準備金などまとまった費用が必要になってくるケースが多いです。
また、学資保険は受け取り時期を遅くすればするほど返戻率が上がるという特徴があります。したがって、小中高でこまめに祝い金を受け取るとその分トータルの返戻率も下がってしまうのです。理由は、学資保険を早く始めるほど返戻率が上がる仕組みと一緒で、より長く保険会社に資金を置いておくことでその分長く運用してもらうことができるからです。
返戻率の高さで言うと、22歳受け取りが最もコストパフォーマンスが上がりますが、大学院に進学しなければ結果的に学資金として使うことができなくなってしまいます。
以上のことから、大きな学費が必要なときにまとめて受け取ることができて、なおかつ比較的高い利率を期待できる大学入学時の受け取りがベストな方法で、最も一般的です。
3-3.払込期間と返戻率の関係
次に払込期間と返戻率の関係を説明していきます。
保険会社によっても異なりますが、学資保険の中には10歳払い済みなどの早いうちに保険料支払いを終えてしまう短期払いという方法があります。
早期に加入することや、受け取り時期を遅くすることと同様に、短期払いで早期に払い込みを終えると保険会社の運用原資が大きくなるので返戻率が上がります。
もし家計に余裕があれば、短期払いを選択することも一つの方法です。
学費の貯めどきは0歳から小学校卒業までとよく言われます。中高生になると部活動費や教材費などで何かとお金がかかってきてしまい思うように貯蓄に回すことができなくなってしまう傾向があるからです。
0歳から中学生までは1万円〜1万5千円の毎月の児童手当がありますし、2019年10月からは幼児教育・保育無償化も始まるので、子どもが小さいうちは貯めやすいというのはもっともかもしれません。
一方で、短期払いを選択すると契約者である親に万が一のことがあった場合に適用される保険料払込免除の恩恵を受けられる期間が短くなるというマイナスポイントもあるので、短期払いで得られるメリットとデメリットを比べながら払込期間を選んでみてください。
4.学資保険加入の注意点
次に学資保険加入前に知っておきたい注意点について解説していきます。
4-1.学資保険の種類と特約
学資保険は保険会社ごとに返戻率や加入できる年齢など違いがあることを説明してきましたが、他にも違いがあります。ここでは商品性の違いについて見ていきます。
4-1-1.貯蓄型学資保険
貯蓄型学資保険は、これまで説明してきた一般的な学資保険のことです。契約者に万が一のことがあった場合に、保険料の払込が免除となり、あらかじめ設定していたタイミングで一時金を受け取ることができます。
貯蓄型という名称のとおり、返戻率が100%を超えるものがほとんどで貯蓄性をもっとも重視しています。堅実に積立をしながら増やしていきたい場合にはこちらの学資保険が適しています。
4-1-2.保障型学資保険
保障型学資保険は、貯蓄型学資保険の毎月積立をしながら万が一のときに保険料払込が免除となるという制度に加えて、親が死亡したときに死亡保険金もついてくるというタイプの学資保険です。まとまった死亡保険金ではなく、育英年金として分割で給付されるタイプもあります。
死亡保障の保険料がプラスされる形になるため、貯蓄型学資保険に比べて返戻率は低く、支払った保険料より受け取る学資金は少なくなります。
貯蓄型より安心感は大きいかもしれませんが、学資保険とは別に親の死亡保険金を生命保険などで準備している場合には、あえて学資保険で死亡保障を付けずに貯蓄型で学資の確保に特化するのがおすすめです。
4-1-3.学資保険の特約とは
学資保険では、特約として子どもの病気や怪我に備える医療保障や子どもの死亡保障を追加出来るタイプもあります。
こちらも保障型学資保険と捉え方は一緒で、追加された保障分の保険料がプラスされるので、返戻率は100%を割ってきます。
学資保険に追加する医療保障は、特約の形態のため、学資保険が満期を迎えると同時に消滅してしまいます。子どもの医療保険であれば単体で加入してもそれほど高額にならないケースがほとんどなので、あえて学資保険に付加するのではなくあらかじめ単体で加入しておくのも賢い選択です。
保障型学資保険と同様に、保障が多いと何かと安心のように見えますが、その分学資金の貯まりも悪くなってしまうため、学資保険加入時には学資保険加入にあたり何を重視したいかということを考えた上で契約するようにしてください。
4-2.中途解約について
学資保険を申し込む上での最大のリスクは中途解約をしたときの元本割れです。
やむを得ず、毎月の保険料支払いを継続できなくなったときには、保険を解約することとなります。
保険商品によっては、2ヶ月連続して支払いが滞った場合に保険が消滅してしまうというものもあります。
子どもが小さいうちからコツコツ積立をしても中途解約で元本割れをしてしまっては本末転倒になってしまうため、保険料の金額設定は慎重に、無理のない金額で申し込むようにしてください。
4-3.金利上昇のリスク
近年、マイナス金利政策の影響で日本の金利は非常に低い状況となっています。それに伴い、保険会社の予定利率も低くなっており学資保険の返戻率は一昔前と比べて格段に低下しました。
一般的に学資保険は、固定利率となっており、契約時の利率がそのままずっと続くことになります。したがって、もし近い将来金利が上がりより条件の良い学資保険が出てきたときには、返戻率の面で相対的に損となってしまうリスクがあります。
しかし、将来の金利は誰も予測できるものではありません。金利が高くなったら入りたいと思っているうちに学資保険に加入できる時期が過ぎてしまうことも別の意味でリスクになるので、学資保険を早く始めることで得られるメリットに目を向けて出来るだけ早く加入してしまうのが無難でしょう。
5.学資保険以外の貯蓄方法
教育資金準備と言えば学資保険というイメージが強いかもしれませんが、円建て学資保険の利率が低い昨今は、学資保険の代替商品が多数揃っており、学資保険ランキングには「本来は学資保険ではないけれど学資保険代わりとして使えるもの」がランクインしていることも珍しくありません。ここでは、学資保険以外の貯蓄方法を紹介していきます。
5-1.円建て低解約返戻金型終身保険
学資保険の代わりに低解約返戻金型終身保険を利用する方法は今や保険業界の定番となっています。
低解約返戻金型終身保険とは、保険料を払い込んでいる期間に解約すると返戻率が低く大幅な元本割になりますが、払込期間完了から受取期間までの間に大きく解約返戻金が増えるという仕組みの生命保険です。
学資保険代わりに使う場合には、払込期間を10年や15年などに設定し、大学進学で資金が必要になるタイミングで解約するという方法が一般的です。返戻率で学資保険に勝っている商品が多いためこのような使われ方をするようになりました。
終身保険なので、契約者(=被保険者)である親が亡くなったときの保障も付いており、死亡保険金についても学資保険の育英年金より多く受取ることができるケースが多いため人気になっています。
また、親が契約者・被保険者として加入するものなので、出産前140日以内という期間に関係なく、いつでも申込みが可能です。
中途解約さえしなければリスクがないと言える商品なので、学資保険を検討するときにはこちらも選択肢に入れることをおすすめします。
5-2.外貨建て終身保険
外貨建て終身保険とは、学資保険や先出の低解約返戻金型終身保険が円建てで保険会社が運用しているのに対し、米ドルやオーストラリアドルの外貨建てで預ける形を取る終身保険です。毎月の支払いのときには基本的に「毎月1万円」「毎月100ドル相当の日本円」などのように円で支払うのですが、それを保険会社でドルに変えて高利率で運用するというものです。
あらかじめ設定した年齢まで毎月一定額の払込みを続けて必要なときに解約するという保険の仕組み自体は、低解約返戻金型終身保険と同様ですが、大きく異なる点が二点あります。
第一は、金利が高いということです。特に近年は米ドル建ての金利の高さが目立ちます。3%台という商品も登場しています。
第二の違いは為替の影響を受けるということです。払込み期間は円高になるとよりお得に積立てができていることを意味しますが、解約時に円高になってしまうと、せっかく高金利で預けてきたにも関わらず元本割れをするリスクもあるのです。
逆に円安のタイミングで受け取りをすると、高金利でなおかつ為替の差益で更に良い運用ができたということになります。
高い利率が魅力的な商品ですが、儲けることではなく、学費という必ず必要な資金の準備を目的とする場合には、為替の影響によるリスクも大きいことを認識した上で慎重に選択してください。
5-3積立定期預金
銀行の積立定期預金は、毎月設定した金額が自動的に普通預金の口座から積立口座に振替えられる仕組みの預金です。学資保険と同様に積立を解除しない限り強制的に貯蓄をすることができるため、貯金が苦手な人にも向いている方法の一つと言えます。
しかし、積立停止や解約に関するペナルティが一切ないため、学資として使う前に他の資金として使ってしまう可能性もその分高くなるかもしれません。
利率は0.05%とする銀行が多く、金利で増やす期待はほぼゼロと言えます。また、親がなくなった場合の払込免除や死亡保険といった保険のメリットは受けられません。
生命保険で一家の大黒柱の死亡保険はしっかり準備できており、積立を別の用途で崩さないという自信がある場合には、学資保険代わりに使うのも良いでしょう。
5-4.投資信託
学資を投資信託で準備するというのは、投資経験がある方に向いている方法です。
NISA(少額投資非課税制度)が2014年から始まり、年間一定の投資額までは、投資信託で利益が出たときに利益部分に対して本来かかる20.315%の税金が非課税になりました。
毎月1万円や2万円といった金額であれば、全額NISA枠に収まり税金の優遇を受けることが可能です。銀行や証券会社には積立投資信託という積立に適した商品が用意されており、価格の変動率によってレベル分けされた様々なタイプのファンドがあります。
しかし、債券、株式などどのようなものにどんなタイミングで投資をするかによって利益を得るか損をするかが変わってくるので、株価や世界情勢に興味があり運用経験もあるといった場合に限り選択されることをおすすめします。
6.まとめ
学資保険は早ければ早いほどメリットが大きいということを説明してきました。返戻率アップや毎月の保険料の負担が抑えられるというメリットだけではなく、妊娠中や子どもが0〜3歳くらいまでであればほぼ全ての学資保険の中から選りすぐりのものを選んで加入することが可能です。
また、学資保険にいつから加入するかということと同様に、受け取り時期や払込期間によっても返戻率の良さは変わってくるので学資保険に加入するときには家計と相談しながら色々なパターンを検討してみてください。
また、教育費の貯蓄には学資保険以外の方法もあるので、低解約返戻金型終身保険や外貨建ての保険など様々なものの見積もりを出してもらうと良いでしょう。ぜひ、この記事で紹介してきた情報を保険選びにお役立てください。