生命保険の生前贈与で相続対策|その手法やメリット・デメリット

現金を生命保険という形に換えることは、無駄遣いさせることなく将来にお金を残すことができるため、生命保険を使って生前贈与することは相続対策の効果的な手段といえます。こここでは、生命保険を活用した生前贈与について説明します。
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生前贈与で、子供や孫に現金や預金を渡してしまうと、無駄遣いをしてしまいそうだから心配だとお考えの方も多いらっしゃると思います。

こうした心配をすることなく、子供や孫に財産を残す方法として生前贈与に生命保険を活用するという有効な手段があります。

そこで本記事では、生命保険を活用した生前贈与について詳しくご紹介していきます。生前贈与を検討中の方はぜひご覧になってみてください。

1.生前贈与

生前贈与について解説します。

1-1.生前贈与による財産移転

相続財産が多ければ多いほど、相続税の負担率は大きくなります。そのため、基礎控除額を引いても相続財産がある世帯では、相続税対策について真剣に検討する必要があります。

そこで有効なのが、「暦年贈与」です。通常、個人から財産をもらった場合には贈与税を納めなければなりませんが、1年間にもらった金額が110万円以下(基礎控除額)ならば、贈与税がかからないという特例を利用します。

例えば、親から子供2人へ毎年110万円ずつ10年間にわたり贈与すると仮定します。上述のように贈与税には110万円の基礎控除額があるため、贈与税を納めることなく親から子供へ財産2200万円(1100万円×2人)を移転できることになります。

1-2.生前贈与の懸念事項

相続対策において大変有効な生前贈与ですが、懸念事項もあります。例えば、受贈者が浪費家であった時、贈与された財産を浪費してしまうかもしれません。また贈与したが孫が若い場合など、贈与された財産をきちんと管理できるか不安に思う人もいると思います。

暦年贈与には、相続税の納税資金や遺族の生活資金として使用して欲しいと思って贈与しているにもかかわらず、贈与した財産を浪費されてしまうのは贈与者の意図するところではないはずです。

2.生命保険で生前贈与をする

生命保険を使った生前贈与について説明します。

2-1.生命保険で生前贈与するメリット

生命保険で生前贈与するメリットについて説明します。

2-1-1.受取金額が増える

生命保険の保険料は保険会社が運用しますが、通常、死亡保険金は支払った保険料の総額よりも高額になることが一般的です。

普通預金や定期預金などの預貯金より生命保険のほうが利率が高いのため、使用用途のないお金がある場合は保険料として払い込んだ方が得になります。

2-1-2.税金が安くなる

相続人の名義で生命保険に加入し、被相続人が保険料を支払っていたケース(保険料を生前贈与)では、受取った保険金に課税される税金は所得税になります。

これに対し、現金や預貯金のまま置いていた場合は相続税が課税されます。

相続税より所得税の税率は低いので、2つのパターンを比べるてみると分かりますが、生前贈与をしておいた方が支払う税金の額を減らすことができます。

2-1-3.受け取るタイミングを指定できる

生命保険の場合、受取時期を指定できる商品がありますのでそれらを活用することが出来ます。

例えば、子供や孫が小さいときに生命保険に加入しておき、それらの相続人が成長したときに保険金を受けとらせることもできます。

また、年金保険などでは保険金の分割受けとりを指定することもできるので、一定期間子供や孫に定額のお金を受けとらせ、生活や学業などに役立てることも可能です。

2-1-4.納税資金の準備ができる

相続が発生した場合、相続税は現金で一括払いしなければならないのが原則です。

現金がなかったら不動産を売却するなどして相続税の資金を準備しなければなりませんが、死亡保険金があればそれを納税資金に充てることができるので、資産を手放さずに済みます。

2-1-5.無駄使いされない

現金を生命保険という形に換えることは、現金が手許にないため無駄遣い出来ない状態となり、将来にお金を残すことができるので相続対策に有効な手段であるといえます。

2-1-6.相続放棄しても受け取れる

生命保険は遺産として扱われないため、相続人が相続放棄をしても保険金を受けとることができます。

例えば、遺産に借金がある場合や特定の相続人に遺産を集中させて残したい場合、相続人が相続放棄をするとプラスの財産まで受け取れなくなってしまいますが、生命保険を利用すると、相続放棄をしても保険金という形で一定の資産を受け継ぐことが可能です。

2-2.生命保険で生前贈与するデメリット

次に、生命保険で生前贈与するデメリットについて説明します。

2-2-1.契約途中に変更があった場合

例えば、被相続人が継続的に保険料を生前贈与して払い込んでいたが、事情が変わってその後の保険料の払い込みが困難となってしまったというケースです。そうなった場合、以後は相続人本人が保険料を払わなければならなくなってしまいます。

また、被相続人と相続人がもめてしまい、被相続人の考えが変わってしまうケースもありえます。

このように、事情が変わってしまうリスクには注意が必要です。

2-2-2.早期解約する場合

また、上記のようなケースで被相続人が保険料を支払わなくなってしまったら、相続人としては生命保険を解約せざるを得なくなるかも知れません。

生命保険は、早期解約すると元本割れすることが多いので、せっかく相続対策のために保険に加入したのにかえって損をしてしまうことになります。

したがって、保険商品を選ぶときにはなるべく元本割れしにくいもの、また月々の保険料も万が一の時に相続人自身が支払いを続けられる範囲に設定することが重要となってきます。

3.生前贈与に適した保険の種類

生前贈与に適した保険の種類について説明します。

3-1.契約者を相続人、被保険者を被相続人、受取人を相続人とする場合

この契約形態は、もっともオーソドックスな生前贈与の保険契約の形です。

被相続人が毎月の保険料を生前贈与で支払うことにより、相続人が受けとることのできる保険金を積み立てていきます。

この方法を利用するときに向いている商品は、終身保険や長期定期保険など、長期にわたって保険料の支払いを続けることができるものになります。

3-2.被保険者が病気などの理由で被保険者になれない場合

被保険者に病気などの既往症があると、被保険者になることができません。

その場合は、相続人を被保険者とした個人年金に加入するという方法があります。

死亡保険金は受け取れませんが、被相続人が毎年生前贈与として保険料を払い込むことで、相続財産を減らすことができます。

4.生命保険の生前贈与を成功させるための注意点

制目保険の生前贈与を成功させるための注意点を説明します。

4-1.贈与契約書を作成する

相続人名義で生命保険に加入し、被相続人が毎年保険料を支払っていても、それが贈与とみなしてもらえなければ意味がありません。

贈与契約書を作成しておかないと、被相続人が勝手に保険料を払い込んだだけだとみなされ、贈与だと認定してもらえない可能性もあります。

したがって、生前贈与を確実なものにするために、毎年贈与契約書を作成しておくようにしましょう。

5.まとめ

生命保険を活用した生前贈与の相続対策について説明してきました。

生前贈与による相続対策は、できるだけ受贈者を多くし、そして贈与期間を長くすることが基本です。また、相続予定財産の額によっては、贈与税の基礎控除額(110万円)を超えて暦年贈与を行ったほうが、税金を少なくできるケースもあります。

相続対策のために生前贈与を検討している人は、相続税率と贈与税率を見比べたうえでその額を決めるとよいでしょう。

現在ある程度の財産を保有している人は、この記事を参考に相続対策について真剣に考えてみてください。

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