医療保険を使った相続対策|評価額ゼロで保障として残すことがポイント

相続対策に生命保険の活用というと、多くの方は死亡保険を思い浮かべると思いますが、実は医療保険も相続対策に活用出来ます。ここでは、あまり知られていない医療保険を相続対策に活用する方法について解説していきます。
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相続対策に生命保険の活用が効果的であることは多くの方に知られていますが、そのほとんどが死亡保険を使ったものです。実はあまり知られていませんが、医療保険も相続対策に活用できることをご存知でしょうか。

この記事では、医療保険を相続対策に活用する方法とポイントについて解説していきます。

1.医療保険

医療保険について説明します。

1-1.医療保険とは

医療保険とは、ケガや病気で入院や手術をした時に、保険会社より保険金が支払われる保険です。

一般的な医療保険のほとんどは掛け捨て型なので、契約返戻金はありません。

1-2.医療保険を活用した効果的な相続対策とは

生命保険を活用した効果的な相続対策は、主に以下の3つが挙げられますが、医療保険を活用する場合は、解約返戻金を利用する方法になります。

  • 解約返戻金を利用して行う方法(相続資産の圧縮)
  • 非課税枠を利用した方法
  • 生前贈与と組み合わせて利用する方法

2.相続対策

相続対策とした医療保険の活用方法について説明します。

2-1.相続対策として活用できる契約パターン

医療保険の活用例をパターン別に紹介します。

2-1-1.終身医療保険の活用

契約者=被相続人(親・祖父母)、被保険者=子供(孫)で終身医療保険に加入します。

この場合、契約者(親・祖父母)が亡くなった時に「保険契約に関する権利」が相続財産として相続されます。

この時の保険契約に関する権利の相続財産としての価値は、解約返戻金の額によって評価されるので、解約返戻金のない医療保険であれば相続財産としての評価額はゼロになります。

被相続人が生前に保険料を全て払い終えておけば、保険料相当分の相続財産を減らすことが出来、かつ被保険者(子供や孫)は保険料を負担することなく一生涯の医療保険が手に入ります。

より多くの相続財産を減らしたい場合は、子供のほかに孫やその配偶者などを被保険者として、複数の医療保険を契約することも出来ます。

2-1-2.解約返戻金のない医療保険の死亡(介護)保障特約の活用

契約者=被相続人(親)、 被保険者=子供で死亡(介護)保障特約のついた終身医療保険に加入します。

この場合、親(契約者)が亡くなった時に、子供(被保険者)は保険契約の権利を解約返戻金相当額(ほぼゼロ)で相続します。

子供が将来要介護状態となった時、被保険者である子供は介護給付金を受け取ることが出来、子供が死亡した場合には、子供の相続人が死亡保険金を受け取れます。

この特約を使う方法では、契約者(被相続人)に相続が発生した時点では、最初の方法と同じく、相続財産評価額ゼロで保険料の負担もなく医療保険の権利を相続しますが、特約の部分の保険金が支払われるのは、被保険者が要介護状態となるか死亡した時です。

また、被保険者が受け取る介護給付金は非課税となり、被保険者の相続人が受け取る死亡保険金は相続税の対象ですが、基礎控除と生命保険金の非課税枠の適用があるため、税負担は少なくなるというメリットがあります。

ただしこのメリットは、最初の相続からかなり時間が経ってから発生するものとなります。

2-1-3.生存還付給付金のついた終身医療保険の活用

終身医療保険の中には、保険料の払込期間終了までに被保険者が生きていた場合、保険料が全額戻ってくる「生存還付給付金」のついたものがあるのですが、この保険を活用する方法です。

契約者=親、被保険者=子供で契約し、契約者に相続が発生したときに、契約者と生存還付給付金の受取人を子供に変更します。

この場合、相続対策として加入しているため、契約者は契約時に全期前納で保険料全額を支払っており、変更時点から保険料払込終了までの保険料(未経過期間保険料)が解約返戻金として加算されることになります。

保険料払込期間が終了すれば、相続人は生存還付給付金を受け取る(相続財産の課税済みのため非課税)ことができ、一生涯の医療保障を手にすることができるというスキームです。

この商品を活用すると、数千万円単位で相続財産を減らす効果が期待できますが、契約から相続発生までの期間が短いと未経過期間保険料が多くなってしまうため、効果は薄くなります。

また、保険料払込期間終了までに相続が発生しなければ、被相続人が生存還付給付金を受け取ることになってしまうため、対策をやり直す必要も出てきてしまうため注意が必要です。

2-2.医療保険の権利を相続する際の注意点

医療保険の契約の権利を相続する際には、以下の注意点があります。

  • 生命保険の非課税枠(500万円)が使えない
  • 遺産分割の対象にならないこともある

2-2-1.生命保険の非課税枠が適用されない

通常、死亡保険金が相続人に支払われた場合は、「500万円×法定相続人の数」まで非課税枠がありますが、生命保険契約の権利に関しては、被相続人が亡くなっても死亡保険金が支払われるわけではないため、非課税枠は適用されません。

2-2-2.遺産分割の対象にならないこともある

生命保険契約の権利は、保険解約の内容によって相続財産になるか、みなし相続財産になるか分かれます。

被相続人=保険料負担者=保険契約者の場合は、遺産分割の対象となりますが、被相続人=保険料負担者≠保険契約者の場合は、みなし相続財産として扱われるため、遺産分割協議の対象にはなりません。

3.まとめ

医療保険を相続対策に活用する方法とポイントについて説明してきました。

相続対策として医療保険に加入することで、相続財産の圧縮や非課税で医療保険を受け取れるといったメリットはありますが、この活用プランの一番のデメリットは、お金として残せない点にあります。

相続税を払った後に残る現金と、保険料を負担することがない一生涯の医療保障のどちらが相続人にとってメリットが大きいのか、よく考えて検討しましょう。

この記事が相続対策を検討する方の参考になりましたら幸いです。

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