逓増定期保険は、法人の役員退職金の積み立て原資や節税目的で使われることが多い保険なのですが、この保険を個人で使うことで相続税の節税ができます。そこで本記事では、逓増定期保険を活用した相続対策について紹介していきます。
1.逓増定期保険
逓増定期保険について説明します。
1-1.逓増定期保険とは
逓増定期保険とは、保障期間の経過に従って保険金が増加していく定期保険のことで、保険金額は契約時から5倍以内の金額まで増加しますが、保険料は契約時から一定で変わりません。
1-2.逓増定期保険の仕組み
逓増定期保険は、保険期間中の保険料の支払額は一定額であるにもかかわらず、保障額は逓増していく仕組みとなっています。
通常、年齢が上がりかつ保障額が毎年上がっていくとなれば、保険料は毎年加速度的に上がっていくはずですが、それを無理やり保険期間中の支払額を一定にしているのが逓増定期保険です。
契約当初は少ない保険料で、後半は多額の保険料が必要になるはずなのに、それを一定額の保険料でよいということは、当初に必要以上の保険料の前払いをしていて、保証が高くなった後半の足りない保険料を前払保険料から取り崩して充当をしているという仕組みです。
その結果、契約当初は前払保険料がドンドン積み上がっていきますが、保険期間後半は足りない保険料に充当されるので逆に前払保険料は減っていくことになります。
この前払保険料が解約時の返戻金となるため、逓増定期保険の解約返戻金は山のようなカーブを描いているわけです。
1-3.低解約返戻型逓増定期保険とは
低解約返戻型逓増定期保険は、契約後4、5年目までの解約返戻率を極端に低く抑えることによって、その翌年度に解約した場合の解約返戻率を100%近くまで高く上がるよう設計された商品です。
2.相続対策に活用するのは低解約返戻型逓増定期保険
低解約返戻型逓増定期保険を相続対策に活用する理由を説明します。
2-1.生命保険の相続税評価額
生命保険契約の相続税評価額は、相続開始時における「解約返戻金」相当額となっています。
したがって、相続時の解約返戻金が低ければ低いほど節税になります。
2-2. 低解約返戻型逓増定期保険を相続税対策として活用する
低解約返戻型逓増定期保険を相続税対策で活用する場合の契約形態は、次のようにします。
- 契約者(保険料負担者)、受取人 = 被相続人
- 被保険者 = 相続人
この場合、被保険者が相続人であるため、被相続人の死亡時には死亡保険金は支払われませんが、相続人がこの生命保険契約を引き継ぐことになり、被相続人から生命保険契約を相続する形になります。
生命保険契約の相続税評価額は、相続開始時における解約返戻金相当額ですので、低解約返戻期間中に相続すれば、相続財産の評価額を下げることが出来、相続税を節税することができます。
また、保険の相続をした後、解約返戻率が最も高くなる時期(ピーク時)に解約すれば、払った保険料のほぼ全額を解約返戻金として受け取ることができます。これは一時所得となるため少ない課税で済みます。
2-3.被相続人の年齢や健康状態に関係なく活用できる
生命保険の被保険者は、加入上限を超えていたり健康状態に問題がある場合には契約できませんが、契約者に関しては制限がありません。
したがって、被相続人が高齢や病気であっても契約者として活用出来るため、相続対策に向いている商品として多く利用されています。
3.低解約返戻型逓増定期保険を相続対策に活用するデメリット
低解約返戻型逓増定期保険を相続対策に活用するデメリットについて説明します。
3-1.相続のタイミングが予測できない
相続が発生するということは、被相続人が死亡する時になるわけですが、その時期を予測することは出来ません。
したがって、契約後5年(低解約返戻期間中)を過ぎても相続が発生しなかった場合は
解約返戻金の効果を得ることが出来ません。
3-2.解約のタイミングを忘れてしまう
低解約返戻金型逓増定期保険は、解約を忘れてしまうと致命的なダメージとなります。
特に低解約返戻金型逓増定期保険は、解約返戻率のピークの期間が短くわずか1年間のみであることが一般的です。
低解約返戻期間中の低い評価額で保険を相続したにもかかわらず、解約返戻率がピークになったタイミングで解約するのを忘れてしまわないようにしましょう。
保険の契約時には解約のタイミングの重要性を相続人としっかり話し合っておくとよいでしょう。
4.まとめ
逓増定期保険を使った相続対策の方法について説明してきました。低解約返戻型の逓増定期保険が相続対策に有効な理由は、相続税を節税しながら払い込んだ保険料もしっかり回収できる点にあります。
仮に低解約返戻期間中に相続が発生しなかった場合でも、ピーク時には払い込んだ保険料のほとんどを解約返戻金として受け取ることができるので、この解約返戻金を原資として、再度同様の保険に入り直すことも可能です。この記事を参考に、ぜひご自身の相続対策にご利用ください。