専業主婦に必要な保険|生命保険・医療保険・がん保険の役割

専業主婦に必要な生命保険の考え方について整理しています。そもそも専業主婦に生命保険は必要なのでしょうか、不要でしょうか。もし専業主婦が生命保険に加入するとしたら、医療保険がいいのでしょうか、それともがん保険でしょうか。保険料の負担も考慮しつつ、専業主婦がどのような生命保険を優先して検討すればよいかを説明していきます。
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専業主婦にはどのような生命保険が必要なのでしょうか。専業主婦が生命保険に加入するとしたら医療保険やがん保険でしょうか。あるいはそれ以外の生命保険でしょうか。保険料負担も考慮しつつ、今回の記事では専業主婦がどのような生命保険を優先して検討すればよいかを説明していきます。

1.専業主婦にとって生命保険の必要性はあるのでしょうか

まず最初に生命保険はどのような人に必要なのかを確認してみましょう。

生命保険は、ある人が死亡や病気・ケガになった場合に、その人本人や家族に経済的な負担がかかるのを防ぐために活用するものです。

簡単にいえば、ある人が亡くなったら遺族が今後の生活に困る、というのであればその人に対して生命保険(死亡保険など)が必要です。あるいは、ある人が病気やケガをしてその治療費を支払うのが困難になるというのであれば、その人自身に対して生命保険(医療保険など)が必要となるのです。

それでは専業主婦には、生命保険が必要なのかどうか。必要だとしたら、どのような場合に生命保険が必要なのかを詳しく確認していきましょう。

1-1.専業主婦の家事に対する経済的価値

専業主婦とは、三省堂大辞林によると「就業せず、家事に専念する女性。」とあります。パートなどで収入を得ている方も専業主婦と呼ばれることがあるとは思いますが、ここでは「就業せず、家事に専念する女性。」という前提でお話をすすめていきましょう。

就業していないということは、収入がない、ということです。このため、専業主婦が亡くなっても元々収入を得ていないのだから、遺族が生活に困ることはなく、したがって専業主婦には生命保険は不要だという考え方がありました。

しかし一方で、収入を得ていないからといって、専業主婦のしている家事には経済的価値はないとはいえない(むしろ経済的価値がある)という意見もあるのです。

1-1-1.専業主婦の家事にはどのような経済的価値があるのか

それでは専業主婦の家事にはどのような経済的価値があるのでしょうか?

・出典:内閣府「家事活動等の評価について」(2013年)

1-1-2.経済的価値がある家事を他人に依頼すれば費用が発生する

なぜ経済的価値を確認してきたかというと、もし仮に専業主婦が家事をできない状態になったとして、それを他人に依頼したとしたら費用が発生することになります。

具体的にいえば家事代行サービスなどを利用した場合の利用料金にあたります。

確かに専業主婦以外の家族の誰かが代わりに家事をすることも可能です。お母さんが風邪をひいたので、家族が代わりに家事をしている、ということは日常茶飯事でしょう。

しかしながらもしこれが一時的ではなく、数か月になったり、ずっと誰かが代わりをしなければならなかったりしたらどうでしょうか。その代わりの人が専業主婦にならざるを得なくなるだけです。

いや代わりになれるのであればよいですが、夫は収入を得るために就業しなければならないでしょうし、お子様も学業があるでしょうから、やはり難しいということになるはずなのです。

このように考えると、もし専業主婦が家事をすることができない状況になったとしたら、他人に代行してもらうということが必要になってきます。

これが主婦が生命保険が必要である理由の一つになるのです。

1-2.専業主婦の生命保険の必要性

専業主婦が担っている家事には経済的価値があり、それを他人に行ってもらうにはお金を払う必要があることがわかりました。

しかし専業主婦が担っているのは家事だけではありません。

お子様がいるご家庭であれば育児の大部分も専業主婦が担っていることが多いでしょう。特に乳幼児であれば母親以外の人が面倒をみるのはとても大変なことであり、保育園に通わせたとしても登園前や登園後の育児を他人に任せるとすればやはり費用が発生することになります。

このように考えてくると、専業主婦が担っている家事や育児には経済的価値があり、もし専業主婦が亡くなったり、病気やケガで不在になれば、それを代わりに受け持ってもらうには費用を払うことになります。

ここまで整理してくると、そうした費用に備えるための手段として、専業主婦にも生命保険が必要であるということをご理解いただけるものと思います。

2.病気・ケガの治療費に備える生命保険は「医療保険」

専業主婦にも生命保険が必要であることがわかりましたが、では具体的にどのような場合にどんな生命保険が必要なのでしょうか。

生命保険にはいくつかの種類があることをご存知の方も多いと思いますが、どんな場合にどのような生命保険が必要なのかを説明していきます。

ここでは病気やケガをした場合の生命保険の必要性と、それに備える生命保険である「医療保険」について説明していきます。

2-1.病気・ケガの場合の治療費やその他費用

まず専業主婦が病気やケガをされた時の場合を考えていきたいと思います。当然病気やケガを治すために入院や手術、通院などをして治療を行います。

この時に治療費は当然のことながら、その他の諸費用(外食費やタクシー代金、身の回り品など)が急に必要となることがあるのです。

また先ほど確認した通り、治療のために専業主婦がご家庭から不在になった場合には、家事代行サービスや託児サービスを利用することもあり得るため、こちらも費用が発生することがあるのです。

2-1-1.突然の治療費の自己負担は

病気やケガになった場合の治療費総額の自己負担について確認しておきましょう。

公的な医療制度により、治療費総額の自己負担割合は原則3割となっています。

風邪などでお医者さんに診察・処方箋をいただいたとしても数百円から2千円程度の支払いで済んでいるのはこの自己負担が3割になっているからです。

では、実際に病気やケガで平均どれぐらいの治療費総額の自己負担となっているのでしょうか。

公益財団法人生命保険文化センターが「直近の入院時の自己負担費用」について調査したところ、1日あたりの自己負担費用の平均は19,835円となっています。

2-1-2.高額療養制度で一か月の治療費には限度がある

公的医療制度のなかには、高額療養制度というものがあります。

この高額療養制度とは、治療費総額の自己負担が重くならないよう、支払った治療費が1か月で上限額を超えた場合、その超えた額が支給されるという制度です。

具体的な計算ですが、1ヶ月の自己負担額は、80,100円+(267,000円を超えた額)×1%が限度となります。

したがって治療費総額の自己負担額が1か月約8万円を超えることは原則としてほとんど発生しません。

2-1-3.公的保険が適用されない先進医療などの治療は全額自己負担

公的医療制度であれば医療費総額の3割が原則自己負担となります。また、高額療養制度があることで、治療費の自己負担額は1か月約8万円限度になります。

しかしながら、こうした公的医療制度の対象外になる治療もあります。その代表例が先進医療といわれる治療です。

先進医療による療養を受けた場合、先進医療以外の治療については自己負担3割となりますが、先進医療の技術料については全額自己負担となります。

またこの先進医療は高額になる治療もあるため、こうした高額の先進医療を受けた場合には、治療費は相当高額になることがあるのです。

例えば先進医療技術のひとつである量子線治療の技術料は約276万円となっています。(公益財団法人生命保険文化センター調べ)

2-2.突然の治療費への備えは「医療保険」

こうした病気・ケガに関わる費用に備える方法としては貯蓄をしておくというやり方がありますが、先進医療の技術料などの場合を想定すると、十分な貯蓄がその時にない可能性もあります。

そこで、こうした費用に対する備えとしての生命保険の必要性があるのですが、病気やケガをした場合の備えとして適しているのが「医療保険」です。

「医療保険」の基本的な保障は以下の通りです。

  • 病気・ケガで入院した場合の保障(1日につき1万円など)
  • 病気・ケガで手術した場合の保障(1回につき15万円など)
  • 病気・ケガで通院した場合の保障(1日につき5千円など)
  • 特定の病気・ケガで治療した場合の保障(1回につき20万円など)

2-2-1.女性向けの「医療保険」もある

「医療保険」の中には、女性特有の病気の場合に手厚い保障を手当てすることができる商品もあります。

例えば、子宮や卵巣などの部位で病気で入院した場合には、通常1日につき5千円のところ倍額の1万円になる、というような保障があるということです。

あるいは、乳房再建手術を受けた場合にのみ20万円が受け取れるというような保障がある、ということです。

専業主婦の方が「医療保険」を検討される際にはこうした女性向けに手厚い保障のある商品を検討されることもよいと思いますが、その分毎月支払うことになる保険料も割高になります。保障の必要性と保険料の負担を考慮して加入を検討されることをお勧めします。

2-2-2.貯蓄性のある「医療保険」はどうか

病気やケガによる治療費に備えるのが「医療保険」の本来の目的ですが、「医療保険」の中に貯蓄性を兼ね備えさせた商品もあります。

ここで貯蓄性というのは以下のような商品内容です。

  • 加入5年ごとに10万円が支払われるというもの
  • 70歳まで継続した時にこれまで支払った保険料総額が戻ってくるというもの
  • 保険をやめた時に支払った保険料の4割から6割程度戻ってくるというもの

掛け捨てではないということに安心感がある方は、貯蓄性の「医療保険」を選ばれることもあるようです。

しかしながらこうした貯蓄性の「医療保険」は、そうではない「医療保険」と比べて保険料が割高になるので、継続することができるかどうかを慎重に見極めることが重要です。

2-3.がん(特有の病気)の治療費への備えは「がん保険」

病気やケガでの急な出費に備えた生命保険としてはまず最初に「医療保険」を検討されることが多いと思いますが、がんになった場合に備えたいという生命保険であれば「がん保険」を検討されるのがよいでしょう。

病気やケガを幅広く保障する「医療保険」とは異なり、「がん保険」はがんになった場合にのみ保障される生命保険です。

「がん保険」の一般的な保障は以下の通りです。

  • がんと診断された場合の保障(1回のみ100万円など)
  • がんで入院した場合の保障(1日につき1万円など)
  • がんで手術した場合の保障(1回につき10万円)
  • がんで通院した場合の保障(1日につき1万円など)
  • がんで特定の治療をした場合の保障(先進医療の技術料相当額など)

2-3-1.がん保険の様々なタイプと注意点

「がん保険」にも「医療保険」と同じように女性向けに手厚い保障となっている「がん保険」もありますが、同様に保険料負担も割高になります。保障と保険料とのバランスを考慮して検討されることをお勧めします。

また「医療保険」にはなくて「がん保険」に特徴的な保障が、がんの診断給付金といわれる保障です。

診断給付金というのは、がんと診断された時に受け取れる一時金で、通常100万円単位となります。「医療保険」でそれだけまとまった支払いとなる保障は殆どありませんので、この診断給付金というのは「がん保険」ならではの保障といえるでしょう。

逆に「がん保険」に加入されるときに注意いただきたい点として、免責期間というものがあります。免責期間とはがんの保障が始まらない期間で、がん保険に加入してから90日間は、がんの保障は開始されません。

2-3-2.その他の疾病(三大疾病)に備える生命保険

「がん保険」はがんのみを保障する保険ですが、がんに心筋梗塞と脳卒中を加えた三大疾病を保障する保険もあります。これが三大疾病保険といわれるものです。

また、三大疾病に糖尿病と精神疾患を加えて五大疾病といわれますが、この五大疾病を保障するのが五大疾病保険です。

三大疾病保険・五大疾病保険の保障内容は以下の通りシンプルなものとなっています。

  • 三大疾病(五大疾病)と診断された場合の保障(1回のみ200万円など)

こうした疾病になった時にまとまった金額を受け取ることができれば、治療費や家事・育児に関する代行費用も手当てすることが可能となります。

しかしながらこれらの保険は「がん保険」と比べて保険料が割高になることが多いため、保険料負担には十分留意してください。

3.専業主婦が亡くなった場合に備える生命保険

専業主婦が不幸にも亡くなられた場合に備える生命保険としては「死亡保険」があります。

「死亡保険」とはその名の通り、亡くなられた場合に一時金が受け取れる生命保険です。

「死亡保険」は一時金の金額によって保険料負担も異なってきますので、専業主婦には、どのぐらいの一時金が「死亡保険」として必要なのかを考えることが重要です。

3-1.専業主婦が亡くなった場合の家事・育児の費用の備えは「死亡保険」

専業主婦が亡くなった場合にどのような費用を備えておく必要があるのでしょうか。

専業主婦が不在になった場合に必要な家事や育児を代行してもらうための費用が毎月発生します。その毎月の費用が何年間必要かを検討したうえで、その合計金額相当額を「死亡保険」の一時金として加入を検討されるのがよいでしょう。

3-2.専業主婦の「死亡保険」の前に働き手のご主人の保険をチェック

専業主婦の「死亡保険」について検討することも重要なのですが、それと同時に重要なのが、働き手の夫である方の保障は備えてあるかどうかです。

専業主婦が不在になった場合の家事や育児の費用について備えておくことも重要ですが、収入を得ている唯一の働き手である夫が亡くなった場合こそ、遺族の毎月の生活やお子様の教育費などの備えとして「死亡保険」の一時金が必要となるのです。

まとめ

専業主婦が病気やケガになった場合の急な治療費等の備えとしては「医療保険」を検討されるとよいでしょう。特にがんに特化して備えたいということであれば「がん保険」をお勧めます。

「医療保険」と「がん保険」には女性向けに手厚い保障のある商品もありますが、保険料負担も割高になりますのでバランスを考慮して検討しましょう。

専業主婦が亡くなった場合の家事や育児のための経済的備えとしては「死亡保険」で準備するのがよいでしょう。ただし、収入の唯一の働き手である夫に万が一のことがあった場合のほうがより多くの経済的備えが必要となります。専業主婦と同時に、夫の「死亡保険」の一時金が充分に手当されているかを確認することが重要です。

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