終身医療保険とは|選ぶときの注意点やその特徴

終身保障タイプの医療保険の特徴や役割について保障金額・保障期間・払込期間という3つの視点から解説しています。その上で終身医療保険の必要性についても触れています。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

今年、厚労省が発表した日本人の平均寿命は、83.98歳と過去最高を更新しました。天井知らずな長寿大国日本。人生100年が当たり前の時代の到来に、医療保険も「一生涯保障」をうたう「終身医療保険」が人気を集めています。

しかし、傷病への一生涯の不安を解消する「終身医療保険」、各保険会社でも多様な商品が販売されていますが、そもそも一生涯の保障が本当に必要なのでしょうか。ここでは医療保険に関する様々な観点から、終身保障の必要性について考えていきます。

そもそも「医療保険」とは

「周りの人も加入しているから、なんとなく加入している」という人も多い医療保険。どのようなケースに備える保険か、ご存知でしょうか。

各社の保険商品は本当にさまざま

「医療保険」とは、病気やケガで入院・手術が必要になった際、保険金が受け取れる保険です。多くは1日の入院に対し保障金額が定められており、入院日数を乗じて支払われます。

また、この基本の形をベースに、所定の手術を受けたり、公的医療保険適用外の手術、いわゆる「先進医療」を受けたり、がん・心筋梗塞・脳卒中の三大疾病を患ったりした場合、保障が手厚くなるなどの商品も販売されています。

保険会社によってその保障内容は実に多様で、思わず目移りしてしまいますね。実際にパンフレットを取り寄せたり、インターネットで調べたりすると、「案外どの保険を選んでもそれなりに保障してくれそうだ」と思われるかもしれません。

医療保険を考える上での3つのポイント

本当に目移りするほど多種多様な商品が発売されている保険商品。判断の決め手はどこになるかと言えば、保障内容もさることながら、「保障金額」「保障期間」「払込期間」の3点に注目すべきでしょう。以下にその理由を説明していきます。

医療保険を考える上でのポイント①「保障金額」

保障金額とは、入院1日に対して支払われる金額のことです。保障金額を決める目安として、1日入院した場合の自己負担額と、実際に医療保険に加入されている方の平均保障金額を比べるとわかりやすいのではないでしょうか。

入院の際の自己負担額と平均保障金額とは

公益財団法人生命保険文化センターの公表している情報によると、1日入院した場合の自己負担額は平均で19,835円とされています。また平均保障日額においては、男性が10,800円、女性が9,200円とされています。自己負担額の平均がおおよそ2万円だったことに対し、実際に医療保険で備えている部分はその半分です。

因みに、公的医療保険が適用される費用においては「高額療養費制度」という公的保障があり、年齢や所得で限度額こそ異なるものの、一か月の自己負担額に上限が設けられます。

「上限が決められているなら、貯金だけでもなんとかなるのでは?」

と思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかしながら驚くことに、前述した平均額は、この高額療養費制度を適用した後の自己負担額なのです。これには、公的医療保険の落とし穴でもある、適用外の費用が大きく影響していると考えられます。

公的医療保険が対象外の費用①「差額ベッド代」

公的医療保険適用外の入院費用と言えば、代表的なものは「差額ベッド代」ではないでしょうか。

差額ベッド代とは、基本的な入院患者用の病室を0円とし、その病室よりも定員の少ない病室や個室、窓際のベッドなどを選んだ際に発生する代金です。本来は患者個人の意思によりますので、6人部屋だろうが自分は構わないという方であれば発生しない費用になります。

ところが、いくら本人が良かろうと、そういった病室を選ばざるを得ない状況に置かれることもあるのです。

  • 例えば病室に空きがなかった場合、「個室ならば空いています」と言われたら。
  • 例えば食事制限が必要な疾病で、隣の患者の食事音が気になったら。
  • 例えば隣の人のいびきや歯ぎしりでよく眠れなかったら。

そんな状況に直面した場合、差額ベッド代のことなど考えていられるでしょうか。

公的医療保険が対象外の費用②「休業時の給与など」

またこの平均額には現れませんが、入院した際の給与はどうなるでしょう。長期的な入院だった場合、勤め先の病気休暇・有給休暇だけでカバーできるでしょうか。

医療保険の保障金額は、給与保障という面も考えて設定するのが望ましいと言えます。

医療保険を考える上でのポイント②:「保障期間」

続いて「保障期間」を考えます。最近の保険会社の主力商品は「終身医療保険」であり、保険期間は文字通り、一生涯の保障となっています。今、医療保険を検討している方の中には「保険期間の選択肢は終身しかないのだろうか」「終身で本当にいいのだろうか」とお考えになる方もあることでしょう。

リスクが高い年齢になるほど医療保険は入りづらい

保険期間は終身がいいのか、定期がいいのか。これはあくまでも個人の考え方によるところが大きいので、どちらが得か損かという話はとても難しいものです。ただし、材料が何もないのも考えづらいでしょうし、参考までに厚生労働省の患者調査を見てみます。この調査では、年齢別の入院受療率を人口10万人として表しているのですが、注目すべきは75歳以降の急激な患者数の増加です。

例えば50歳から54歳の方の入院患者数は591人で、次の世代である55歳から59歳では772人となり、181人増えています。その次の世代の60歳から64歳になりますと1,064人となり、292人増えました。これに対し70歳から74歳の入院患者数は1,820人で、75歳から79歳までで2,635人、また80歳から84歳は3,879人、85歳から89歳だと5,578人に膨れ上がります。

この調査結果により、75歳以降入院するリスクが急激に高まるとも読み取れ、医療保険自体も75歳以降最も需要があると言えます。定期保障の医療保険の多くは、75歳以降の保障がありません。自分がいつ入院するのかというのは誰にもわかりませんが、長期的な安心を廉価で求めるのであれば、終身医療保険が望ましいのではないでしょうか。

医療保険は陳腐化するもの

ところが、保険と言うのは長期的なものであればあるほど、時代のニーズから離れてしまいます。これを「陳腐化」といいますが、医学の進歩や国の医療政策の変更によるところが大きく、ある意味必然であって、特に「医療保険」では避けられないものです。

保障される疾病にも限りがある

冒頭で、医療保険は入院した際に保険金を受け取れるとお話しましたが、必ずしも全ての入院を保障するわけではありません。それぞれの保険の約款(保険契約のしおり)で定められている疾病のみ、対象となります。例えば、1日入院しての人間ドック、いわゆる「検査入院」では、この入院を支払対象外とする保険会社が殆どです。

特に、手術に対して保険金が支払われる保険の場合、その対象の多くは保険会社が指定している88種類か、公的医療保険に連動している約1,000種類の二つに分けられます。88種類と1,000種類では、かなり大きな違いではないでしょうか。

前者は、加入してから年数が経っている医療保険に多いです。後者が登場したのは、医療技術の目覚ましい発展と、新しい疾病の発見によって、求められる保障内容が変化していったためです。

免責日数にも限りがある

もう一つ、時代の変化とともに変わっていった保障があります。それは、「入院○日目から対象」という免責日数です。

例えば、「入院5日目から支給」という医療保険の場合、入院日数が4日以下であれば保険金は支払われません。似たような保障で「5日以上の継続入院で1日目から支給」というタイプもあります。こちらは継続入院さえクリアできれば、入院日数分保険金を受け取ることができますが、どちらにせよ5日以上の入院が必要です。

近年、入院日数は減少傾向にあると言われています。加入した当時は5日以上の入院が必要だった疾病でも、現在では日帰りや通院で治療できるものも多くなり、そのため、各保険会社は「入院1日目から支給」「日帰り入院から支給」という保障へシフトしていったのです。

この保障内容の変化は、過去だけではなく未来にも言えます。今後時代が移り変わっていく中で、現在のニーズに合わせた保険が、どれほど未来のニーズに対応できるかは計り知れません。

医療保険を考える上でのポイント③:「払込期間」

医療保険を選ぶ上でポイントとなる考え方の3つ目は「払込期間」です。医療保険の保険料は、いつまで支払えばよいのでしょうか。

保険料の支払い期間は様々ですが、その中でも最近特に関心が高いのは、保障期間より払込期間を短くする「有期払い」と、保障期間と払込期間が同じ「終身払い」どちらがよりお得なのかという点に他なりません。

平均寿命が延びている現代では「有期払い」に大きなメリットが

医療保険についてよく調べられている方だと、

「保障期間は終身保障の方が良いけれど、定年の60歳までに保険料の支払いを終えた方が安心だ」

とおっしゃる方がいます。

確かに、定年後というのは収入減が否めないでしょうし、近年は年金自体も受給年齢が上がり、定年から年金受給まで無収入の時期が生じることもあります。そういった不安定な生活の中で、保険料のような継続的な出費に対する精神的な負担と言うのは、決して軽いものではないでしょう。

また、保険料というお金そのものからも考えてみます。

例えば、保障期間は同じ終身保障ですが保険料は60歳までの有期払いの医療保険と、終身払いの医療保険があるとします。毎回の保険料は払込期間の短い有期払いの方が高額になり、一方の医療保険の払込終了である60歳になったときも「有期払い」の保険の方が保険料を多く払い込んでいることは、どの商品も違いありません。

しかし、その後一方は保険料の支払いが終わっているのに関わらず、「終身払い」の保険は、70歳になっても80歳になっても、まだまだ支払いが続いていきます。どの時点で逆転するのかと言うのは商品ごとに異なりますので一概には言えませんが、最終的に終身払いの方が高額になる可能性も多いです。

有期払いで気を付けたい注意点

もちろん、有期払いの方が高額になる可能性もあります。それは、医療保険が解約、もしくは消滅した場合、つまり保障の切り替えと死亡があった場合です。

先に保障期間のお話でも述べたとおり、医療保険は今後ニーズが変わることが予想されます。もし将来加入している医療保険だけでは心許なくなってしまったとき、有期払いの医療保険だと、終身払いの医療保険よりも多く保険料を払い込んでいるため、解約するのが惜しくなったりもするものです。

また、保障期間中に死亡した場合、それがいつなのかというのはもちろん不確定ですが、単純に保険料の総額だけを見て「有期払いの方がお得だ」とは断定できません。払込期間を考える際は、精神的な負担の面や、途中で解約する可能性を念頭に置いて、どちらが自分に合っているのかで選ぶのが無難なのかもしれません。

医療保険の「終身保障」が必要な理由とは

医療保険を選ぶ上でのポイントを3つに絞りここまで話をしてきましたが、終身保障と定期保障、結局どちらを選ぶのが良いのでしょうか。結論から申し上げると、終身保障こそが現代の私たちが生きる上で、必要な保障であるということが出来ます。

「一生涯保障」こそが終身保障のメリット

保険というのは加入する際、健康状態の確認が行われ、その時点、もしくはそれよりも過去の時点で、健康に問題があると加入自体が見送られてしまいます。

終身医療保険は、加入後重篤な疾病に見舞われ新しい保険に加入できなくなったとしても、保障が一生涯続いていますので安心です。つまり、「一旦加入してしまえばあとは何があっても安心」なのが終身保障の最大のメリットですね。

それでは、将来医療保険へのニーズが変わったときにはどうすれば良いのか。答えはとてもシンプルです。その時の健康状態に問題がなければ、新しい保険へ切り替えれば良いのです。

新しい保険を検討する際は「貯蓄型」と「掛け捨て型」をもう一度再考しよう

新しい保険へ切り替えるというのは、つまり現在の保険を解約し、また新しく加入するということです。

もしかしたら、皆さんの中には

「以前の保険に支払ってきた保険料はどうなるのだろう」

と、不安に思われる方がいらっしゃるかもしれません。

現在販売されている医療保険には、解約した際や満期を迎えた際に返戻金が支払われる「貯蓄型」と、ほとんど返戻金が支払われない「掛け捨て型」があります。中途解約した場合、「貯蓄型」であればそれまで支払った保険料の一部が戻ってくる可能性がありますが、商品数自体は少なく、また保険料も掛け捨て型と比べ割高です。

「掛け捨て型」はと言うと、掛け金が安く保障内容の充実しているものが多い上に、人気があるため貯蓄型と比べて商品数も多いです。ただし、解約した場合はそれまでの保険料は戻ってきません。

医療保険というのは、あくまでもしもの時の備えです。もし医療保険を利用しなかったとき、保険料が無駄になることが気になるのであれば「貯蓄型」も一つの手ではありますが、万が一のためのお守り、或いは「生きていくためのコスト」という割り切った考えが、医療保険の加入には必要なのかもしれません。

医療の進歩と言う意味からも医療保険の「終身保障」は必要

医療の進歩には、目を見張るものがあります。先ほど、入院日数の減少について触れました。確かに平均的な入院日数は減少傾向にありますが、実はこれはある意味間違いで、正しくは長期的な入院と短期的な入院の差が大きくなっているのです。

ガンは「入院ではなく通院で」治すもの

良く耳にする三大疾病の中でも、その兆候は窺えます。厚生労働省の患者調査によると、長期的な入院が必要な疾病の一つでもある脳卒中の平均入院日数は89.5日とされ、この日数はここ数年ではそれほど大きな増減がありません。

対して、入院日数の減少が目覚ましい疾病の代表である悪性新生物(がん)はどうでしょう。

同じ調査を見ても、こちらの平均入院日数は19.9日とされ、年々減少しています。今や悪性新生物は入院での治療ではなく、通院で治療することが可能となっているからです。

医療保険は、基本的に入院日数に比例して保険金が支払われる保険です。悪性新生物のように入院日数が少ない疾病の場合、必要な医療費が受け取れない可能性もあります。がん保険は、そんな状況に対応するために作られました。

医療保険との大きな違いは、通院保障・がんと診断されたときの一時金保障がある部分です。入院時の自己負担に焦点を当てるのではなく、敢えて通院での治療時に発生する自己負担に特化した保険と言えます。

現在、悪性新生物は二人に一人が罹患する疾病であり、その入院日数は今後も減少していくと予想されます。今後、医療保険では完全に対応しきれない日が来ても、おかしくありません。

安心した生活を送るための「保険会社の信用」

需要の高い医療保険は、各保険会社で様々な商品が用意されていますから、あとは細かな保障を見比べていくのみです。さらに強いて挙げるならば、これから長い期間付き合っていく保険ですので、「保険会社の信用」に関しても少しだけ目を向けてみてはいかがでしょうか。

少しオーバーな話ではありますが、保険会社の信用に関してはとても重要な視点です。「終身医療保険」に加入した場合、例えば加入当時30歳だとしても、そこからおおよそ平均寿命まで50年間あるわけですから、それまで保険会社が存続していなければいけないわけです。

そういう意味では、医療保険の商品を選ぶと同時に、息の長い保険会社を選択することも大事なことに違いありませんよね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket