医療保険と生命保険の違い|保険選びや見直しのための基礎知識

多くの人が加入している医療保険と生命保険。それぞれの概要や違いから自分に合った保険の選び方、気になる生命保険料控除や支払われないケースについて解説していきます。
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医療保険や生命保険。日本では多くの人が何らかの保険商品に加入しています。生命保険文化センターによる調査では、医療保険の加入率は88.5%※、生命保険の世帯加入率(生命保険に加入している人がいる世帯の割合)は88.7%※と高く、約9割の世帯が医療保険や生命保険に入っていることになります。数字で見るととても身近な保険ですが、実のところ保険とはどういうものかわからないといった方も多いのではないでしょうか。

そこで今回、自分に合った保険を選ぶための知識として、医療保険と生命保険の概要や違い、選び方のポイントや注意点等について解説します。是非参考にしてください。

※出典 (公財)生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)」より

医療保険と生命保険の概要を知る

医療保険と生命保険はそもそもどんな保険なのでしょうか。そして、どんな違いがあるのでしょうか。

医療保険とはどんな保険か

医療保険はその名の通り医療費を保障する保険です。例えば、病気や怪我による入院、治療、手術をしたときに加入者本人が給付金を受け取ることができます。また、基本的に給付の対象となる治療は公的医療のみで、民間療法をはじめとした保険対象外の治療は一般的に給付対象外です。

つまり、生きているうちの医療費に備える保険が医療保険です。

生命保険とはどんな保険か

医療保険は本人が生きているうちの保険であるのに対して、生命保険は保険に加入した本人が死亡したときに家族が保険金を受け取ることができる保険です。まとまった大きなお金を受け取ることができると、一家の大黒柱に万一のことがあってもしばらくの間家族が生活していけます。

つまり、保険加入者が死亡したときに残された家族を支える保険が生命保険です。

医療保険と生命保険の違いは

医療保険と生命保険の違いの中で、特にチェックしておきたいお金の支給タイミングと受取人の違いについて説明します。

給付金の支給タイミングが異なる

医療保険と生命保険の大きな違いは、お金が発生するタイミングです。医療保険と生命保険で給付金や保険金が支給されるタイミングの違いをまとめてみました。

【お金の支給タイミング】

医療保険…病気や怪我により病院に入院するとき/通院するとき/手術を受けるとき

生命保険…死亡および就労が困難なとき

このように、医療保険は保険加入者が生きているタイミングで支給されます。一方で生命保険の場合は保険加入者が死亡または死亡に準ずる状態になったときに支給されます。

受取人は本人か家族か

支給タイミングの違いと同様に医療保険と生命保険の違いにおいて注目すべきは受取人の違いです。医療保険と生命保険において給付金や保険金を受け取る対象者についてまとめてみました。

【主な受取人】

医療保険…保険加入者

生命保険…家族、親族

医療保険は受取人が自分自身ですが、生命保険の場合は保険加入者の家族や親族等の身近な人になります。

医療保険と生命保険について更に知る

医療保険と生命保険について基本的なことを説明しました。更に詳しく知りたい方向けに、保険の特性として特徴的な保険期間や保険料の掛け方、主な医療保険の保障の種類等について解説します。

保険期間

医療保険には期間を定めて保障をつける定期保険タイプと、期間を定めず生涯に渡って保障をつける終身保険タイプがあります。生命保険はそれらに加え、養老保険を加えた3つの保険タイプから選ぶことが可能です。それぞれが持つ特徴を確認していきましょう。

定期保険タイプ

保障の必要性が高くなる子どもが誕生してから成人するまでの間だけといったように、期間を定めて保障をつけられるのが定期保険タイプです。保障期間を希望に合わせて決められるメリットがありますが、更新ごとに保険料が高くなるデメリットがあります。

終身保険タイプ

生涯に渡り保険料の支払いが必要となりますが、期間を定めず一生涯の保障がもてるのが終身保険タイプです。

生涯保障となるため、定期保険タイプよりも月に支払う保険料が高いことが特徴として挙げられますが、一般的に保険料は上がることなく一定というメリットがあります。

養老保険タイプ

養老保険タイプは定期保険タイプと同様に、一定期間だけ死亡時の保障をしてくれます。定期保険タイプとの大きな違いは、期間満了時に契約者が生存していた場合、満期保険金が受け取れるところです。

保険料の掛け方

医療保険や生命保険には保険料の掛け方にも種類があります。大きく分けて掛け捨てタイプと貯蓄タイプの2つと言えるでしょう。

掛け捨てタイプは医療保険、生命保険ともに定期保険タイプが該当し、貯蓄タイプには医療保険では終身保険タイプ、生命保険では終身保険タイプ、養老保険タイプが該当します。

掛け捨てタイプ

掛け捨てタイプは、契約を解除しても支払った保険料が(ほとんど)戻ってこない代わりに毎月の保険料が安いというメリットがあります。

【掛け捨てタイプ:定期保険タイプ】

メリット…期間を定めて契約できる/保険料が安い

デメリット…解約返戻金や満期保険金がない/生涯保障ではない

貯蓄タイプ

それに対して貯蓄タイプは、契約を解除した際に返戻金がある代わりに毎月の保険料が掛け捨てタイプよりも高いというデメリットがあります。ただし、加入する保険の返戻金額によっては、貯蓄タイプの方が実質的な負担額が安くなるかもしれません。

【貯蓄タイプ:終身保険タイプ、養老保険タイプ】

メリット…資産を残せる/解約返戻金や満期保険金がある

デメリット…保険料が高い/インフレリスクがある

持病があっても入れる引受基準緩和型プラン

医療保険や生命保険は、申込時に持病があると契約自体できない場合があります。しかし、引受基準緩和型プランを選択すれば持病があっても加入できます。一般的に毎月の保険料は普通の保険よりも高くなっています。

契約時には、保障の範囲や給付金の支払い条件に制限がかかることに特に注意しましょう。

医療保険の具体的な保障について

医療保険の保障は種類が多く様々です。ここでは基本的な保障を挙げます。

入院

一番基本的な保障です。入院した日数に応じて給付金が支払われるものが一般的です。

例えば入院保障が日額5,000円で10日入院したとします。この場合、5,000円×10日で50,000円の給付を受けることができます。

最近では入院した日数に応じた保障ではなく、実際に窓口で負担した金額相当の給付を受けられる保険も出てきています。

通院

入院給付金の対象となる入院をした後、退院してからその入院の直接の原因となった病気や怪我の治療を目的として通院した場合に給付金が受け取れる保障が一般的です。

医療保険の通院給付金は入院が前提条件となっている場合がほとんどなので注意が必要です。

三大疾病

がん・心筋梗塞・脳卒中で所定の状態になった場合に給付金が受け取れる保障です。

ひと昔前は三大疾病の保障が一般的でしたが、現在では六大疾病、七大疾病保障等、保険会社によって対象となる疾病の範囲が広がっている商品が増えています。

また、“所定の状態”という文言がついている場合があり、ただ診断されただけでは給付金が支払われない場合があるので給付条件には注意しましょう。

がん入院

がんで入院をしたときに給付金が受け取れる保障です。

所定の手術をしたときの手術給付金や、がんと診断されたときの診断給付金が受け取れるものもあります。

がんの種類によっては対象とならないものもありますので、給付条件をよく確認しましょう。

先進医療

厚生労働大臣が定める先進医療に該当する治療を受けたとき、治療の内容に応じた給付金が受け取れる保障です。

厚生労働省の先進医療認定だけではなく、治療を受ける病院に指定がある場合もあります。

女性疾病入院

女性特有の病気(子宮、乳房の病気等)で入院したときに、入院給付金が受け取れる保障です。

これらの病気で所定の手術をしたときに、手術給付金が受け取れるものもあります。

健康祝金

医療保険加入後、一定の入院がなく一定期間経過した場合に、お祝金が支払われるものです。

保険会社によって名称や給付金の対象が違う場合があるので、加入する際にはよく確認しましょう。

医療保険と生命保険の選び方

医療保険と生命保険の違いをふまえて、どちらの保険が自分に合うのかを考えていきましょう。医療保険と生命保険を選ぶのに、押さえておくポイントは主に以下の3点です。

  • 家族の有無
  • 家族の中での自分の役割
  • 自身と家族の年齢

家族の有無

医療保険か生命保険かを選ぶ際の最大のポイントは、家族がいるかどうかです。もし家族を養っている立場であれば、家族の生活を守るためには生命保険が必要です。

生命保険は保険加入者が万一死亡したときの葬式費用や家族に資金を残すための保険です。保険加入者よりも保険加入者の家族のための保険といえるでしょう。

逆に言えば、特に資金を残す必要がある家族がいないのであれば、自身を保障する医療保険を選ぶと良いでしょう。

家族の中での自分の役割

一家の家計を支えている「大黒柱」であれば、万一のことがあれば家族が生活していけなくなります。

この場合、自身のための医療保険も大切ですが、家族の生活を支えることに繋がる生命保険の方がより一層重要度は高いでしょう。

また、配偶者が家計を支えている場合は、死亡時に資金を残す生命保険よりも医療費に備える医療保険の方が優先度は高いでしょう。

自身と家族の年齢を考える

それでは家計を担っている一家の大黒柱なら生命保険が良いかと言うと、必ずしもそうではありません。

仮に大黒柱であっても、子どもが成人していれば話は別です。その場合、万一大黒柱が死亡したとしても、家族が生活していけなくなることはないはずです。

子どもが経済的に独立している場合は生命保険の重要度はかなり下がります。一般に年齢を重ねれば健康リスクが高まるので、子どもの独立により家族に資金を残す必要性が減れば、医療保険を手厚くした方が良いでしょう。

医療保険と生命保険に加入する際の注意点

医療保険や生命保険に加入する際に注意すべきことがあります。それは、持病や病歴の有無によって契約できない場合があることです。

保険加入時には、健康状態や過去の病歴、持病の有無について告知する義務があります。保険会社から求められている告知事項に該当する持病や病歴があればもれなく告知しなければなりません。

その際、告知内容によっては契約できない場合もあります。だからといって虚偽の回答をしてはいけません。

仮に虚偽の回答により契約できたとしても、給付金・保険金支払い時の調査で虚偽を指摘された場合、お金は支払われません。

医療保険と生命保険の加入後の見直しについて

医療保険と生命保険の一番の違いは、自身のための保険なのか家族の生活を守るための保険なのかということです。

そのため、初めて保険に加入したときから自身を取り巻く様々な状況が変わったとき、必要な保険も変わっていきます。

例えば、結婚や子どもの誕生、独立等といった自身のライフステージの変化に合わせて適切な保険に見直していきましょう。保険の見直しをする際、特に注意が必要な点について解説します。

見直しには告知が必要な場合がある

主に保障額の増額や保障を追加する場合に、保険加入時に行った健康状態の告知を再度する必要があります。保障を減らす場合には告知は必要ありません。

注意が必要なのは保障を減らすときです。減らしてしまった保障を再度復活させるには告知が必要な場合が多いです。そのためそのときの健康状態によっては、保障をつけられなかったり、保険料が高くなったり、保障内容に制限がかかる場合があります。

保障を減らすときは、将来必要になる可能性を考えて、じっくり検討した方が良いでしょう。

見直し時の無保険状態に注意

保険の見直し時には無保険状態にならないように注意が必要です。新しい保険を契約して責任開始(保障の開始)する前に古い保険を解約してしまうと、何も保障がない無保険状態になってしまいます。

当然ですが、その無保険状態の間に万一のことがあっても、給付金や保険金は支払われません。

そのような不幸が起きないように、保険の見直しをする際には、慌てて保険を解約せずに、新しい保険の責任開始が始まってから解約しましょう。

医療保険や生命保険に入ると受けられる生命保険料控除

医療保険や生命保険に入ると保障が受けられるだけでなく、税金の優遇措置である生命保険料控除を受けられることがあります。

誰もが一度は耳にしたことのある生命保険料控除、実際にはどういうものなのか解説していきます。

なお、ここでは生命保険料控除の一般的な概要について説明しているため、更に詳細を知りたい場合は国税庁のホームページをご確認ください。

生命保険料控除とは

生命保険料控除は、所得控除の1つです。払い込んだ保険料に応じて、一定の金額が保険加入者(保険料を支払っている人)のその年の所得から差し引かれる制度です。

税金を算出する際の税率を掛ける前の所得が低くなることにより、所得税・住民税の負担が軽減されます。

生命保険料控除の種類

平成24年1月1日以後の契約(新制度)は以下の3つの区分があります。

  • 一般生命保険料控除
  • 介護医療保険料控除
  • 個人年金保険料控除

なお、平成23年12月31日以前の契約(旧制度)の場合は以下の2つの区分です。

  • 一般生命保険料控除
  • 個人年金保険料控除

対象となる保険と保険料

医療保険や生命保険が該当する場合のある一般生命保険料控除と介護医療保険料控除についてまとめました。

【対象となる保険】

保険金受取人が、契約者あるいは配偶者、その他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)である保険

【対象となる保険料】

その年の1月1日から12月31日までの払込保険料

加入を検討する保険や既に加入している保険についてどの生命保険料控除が該当するかは、保険会社に確認しましょう。

保険料控除を受けるには

生命保険料控除の所得税の手続きは以下のとおりです。所得税で手続きをしていれば、住民税の手続きを行う必要はありません。

会社に勤めている場合

生命保険会社の発行する「生命保険料控除証明書」を「給与所得者の保険料控除等申告書」に添付し、勤務先に提出することで年末調整にて控除を受けることができます。

自営業者の場合

所得税の確定申告において、「生命保険料控除証明書」を確定申告に添付して控除を受けることができます。

医療保険や生命保険の給付金・保険金が出ない場合

医療保険や生命保険に折角入っていても給付金や保険金が出ない場合があります。どんな場合があるのか主なケースについて確認しましょう。

既に保険に入っている方は、ご自分の保険の給付金や保険金の支払い対象について、是非今一度約款もしくは担当者に確認してみる機会としてください。

医療保険

検査入院では出ない

一般的に検査入院では入院給付金は支払われません。病気や怪我の治療を目的とした入院でなければ給付金は支払われないことを覚えておきましょう。

持病の悪化では出ない

保険に加入する前から患っていた病気に対して給付金は支払われません。例えば、契約後に契約前から患っていた持病が悪化して入院したというような場合には支払われないので注意が必要です。

先ほど持病があっても入れる引受基準緩和型プランを紹介しましたが、こちらも多くの場合その持病を原因とした入院や手術に対しては給付金が支払われないため、加入前によく確認しましょう。

生命保険

自殺では出ない

基本的に保険契約者本人の意思で命を絶った場合、保険金は支払われません。ただし、状況によっては保険金が支払われる場合もあります。詳細は約款で確認すると良いでしょう。

泥酔していた場合の死亡は出ない

泥酔が原因の死亡の場合も出ないことが多いでしょう。例えば、泥酔していたために車にひかれた、電車の線路内に落下して死亡したというような場合が該当します。

加入時に持病や病歴を偽ると出ない

医療保険や生命保険の加入時には告知義務があることは加入時の注意点の項目で述べました。

基本的に給付金や保険金の支払い申請をすると、支払いすべきかどうか保険会社によって調査が行われます。

もし虚偽の告知が判明した場合は、契約自体が無効となり給付金や保険金は支払われません。

まとめ

医療保険と生命保険について様々な視点から解説しました。勧められた保険や巷で人気の保険に漫然と加入するのではなく、自分には一体どういった保険が合っているのか考えて、いざというときに困ることのないように自分にとって最適な保険を選びましょう。

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