医療保険の選び方|自分に合った補償を選ぶための基礎知識

数ある医療保険の中から、自分に合った保険を選ぶために、商品性の違いが出やすいポイントを5つに分けて紹介し、それぞれの特徴を詳しく解説していきます。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

医療保険への加入を検討していても、たくさんの種類からどのように選べば良いかわからないという人は多いのではないでしょうか。今回は、さまざまな医療保険の種類の特徴と選ぶ際のポイントを解説します。それぞれの特徴を理解したうえで、ポイントに沿って自身に合った医療保険を選択していきましょう。

医療保険は多くの保険会社から販売されており、その種類も様々です。今回は、医療保険の主契約の保障内容、貯蓄性、保険料の支払い方法、保険期間、特約の5つのポイントに分けて解説していきます。

医療保険の主契約を選ぶポイント

医療保険は主契約に様々な特約を付加して、自分の希望に合ったものにしていくことができるものが一般的です。主契約となる保障としては、入院給付金や手術給付金が挙げられます。

入院給付金は給付金の日額や支払限度日数を確認

主契約の保障を選ぶ際は、入院給付金の保障内容である入院給付金日額と1入院あたりの支払限度日数を考える必要があります。

入院給付金日額の選ぶポイント

入院給付金日額とは、入院した場合に1日につき受け取れる給付金額のことです。現在の医療保険では、1日につき5,000円もしくは10,000円が一般的となっています。仮に入院給付金日額10,000円のタイプに加入して、5日間入院したとしたら、5万円の給付金を受け取れる計算となります。では、どちらのタイプを選べば良いのでしょうか。

高額療養費制度を使えば日額5,000円でも十分?

入院給付金日額について考える場合は、公的医療保険の高額療養費制度を知っておく必要があるでしょう。高額療養費制度とは、1ヶ月あたりの医療費が高額になった場合に、一定の限度額を上回った部分が国から払い戻されるというものです。

限度額は所得によって決められています。年収が約370万~770万円の世帯であれば、1ヶ月の治療費の自己負担額は最大でも約9万円に抑えることができます。1日当たりに換算すると、約3,000円となるため、入院給付金日額は5,000円でも十分にまかなうことができると考えられます。

公的医療保険の適用外は全額自己負担

高額療養費制度は、公的医療保険の適用外のものは対象とならないため、注意が必要です。例えば、病院で個室などを選んだ場合の差額ベッド代や食事代は、公的医療保険の適用外となり、全額自己負担となります。

その他にも、お見舞いに来た家族への交通費や、健康保険が適用されない治療を選んだ場合の治療費も全額自己負担です。このような部分まで医療保険まかなうことを想定して加入したいという場合は、日額10,000円のものを準備しておく方が安心でしょう。

1入院あたりの支払限度日数を選ぶポイント

入院給付金は入院している期間中、無限に給付を受けられるわけではなく、1入院あたりの支払限度日数が決められています。現在では、60日、120日、180日、360日といったタイプが販売されています。例えば、支払限度日数が180日までのタイプに加入しておけば、1度の入院で最大180日間までは入院給付金を受け取れるということになります。

入院日数は短期化の傾向

以前は、現在と比べると入院日数が長かったため、180日や360日のタイプが多く販売されていたものの、今は短期入院が一般的になっています。平成26年に行われた厚生労働省の調査によれば、病気やケガによる平均入院日数は31.9日と発表されています。この点から考えると、1入院あたりの支払限度日数は60日のタイプでもカバーできると言えるでしょう。

病気によっては入院が長期化する場合も

しかし、脳卒中や急性心筋梗塞、うつ病などは、現在でも入院が長期化しやすいとされています。このような病気での入院が心配で医療保険を検討する場合は、支払限度日数が長いものを準備しておく方が安心でしょう。商品によっては特定の病気に対して、支払限度日数を延長できる特約を付加できるものもあるため、これを選択肢に入れても良いかもしれません。

給付金は何日目から受け取れるのかも確認

古いタイプの医療保険では、入院の5日目から給付金を受け取れるといった条件のものもまだあります。これであれば、5日以上の入院でないと入院給付金を受け取ることができないため、入院が4日間だった場合は給付金の支払い対象とはなりません。

入院の短期化の傾向を考えると、古いタイプのものに加入していても、いざというときに使えない可能性もあります。現在は入院初日から給付金を受け取れる条件の医療保険が大多数となっているものの、念加入を検討する際は、念のため確認するようにしましょう。

手術給付金は給付金額の計算方法を確認

手術給付金とは、病気やケガによる手術を受けた際に受け取れる給付金のことです。手術給付金の額は、入院給付金日額に連動しているものが一般的となっています。連動の仕方は、倍率一律タイプと倍率変動タイプに分けられるでしょう。

割安な倍率一律タイプ

倍率一律タイプは、手術の種類に関わらず一律の金額が給付金として受け取れるものです。例えば、入院給付金日額が10,000円、手術給付金は入院給付金日額の20倍の医療保険に加入していた場合、どんな手術であっても1回につき20万円を受け取ることができます。

一般的に、倍率一律タイプは倍率変動タイプよりも保険料が割安となるため、保険料の負担を抑えることが可能でしょう。

理にかなった倍率変動タイプ

対して、倍率変動タイプは、手術の種類によって給付金の金額が変動します。一般的には、重い病気ほど給付金は大きく、軽いものほど給付金が小さくなります。手術給付金の金額は、入院給付金日額の10倍、20倍、40倍といったように、手術の種類によって区分されています。

保険料は倍率一律タイプよりも割高となります。しかし、重い手術により手厚く、軽い手術には手薄にするという方法が理にかなっていると考える人は、こちらのタイプの方が適しているかもしれません。

掛け捨て型と積み立て型のどちらを選ぶ?

医療保険を選ぶ際に、保障を重視して掛け捨て型にするか、貯蓄性を持たせて積み立て型のものにするかという点もポイントの1つです。

掛け捨て型のメリットとデメリット

満期や更新時、解約の際にお金が戻って来ないタイプの保険を掛け捨て型と呼びます。

掛け捨て型のメリット

掛け捨て型は貯蓄機能を持たない分、積み立て型に比べると保険料は割安です。さらに、途中で戻ってくるお金がないため、好きなタイミングで解約しやすいという特徴もあります。保険料負担をなるべく減らしたい場合や、将来的に保険を見直す可能性があるもののつなぎとして加入したいといった場合には、掛け捨ての医療保険の方が、メリットが大きいと言えるでしょう。

また積み立て型の医療保険に比べると、掛け捨て型のものは商品数も多く、保障のバリエーションも豊富です。商品の選択肢が多いため、自身の条件や希望に合うものが見つかりやすいという点もメリットと考えられます。

掛け捨て型のデメリット

掛け捨て型のデメリットは、病気やケガをせずに健康で過ごせた場合に、お金が全く戻って来ないという点でしょう。貯蓄性を持たせず保障を重視した保険である以上、仕方がないものの、掛け捨て型であることをお金の無駄と考える人には、向かない形と言えます。

積み立て型のメリットとデメリット

積み立て型の医療保険は、満期保険金や健康還付金、解約返戻金といった形で、病気やケガをしなくても何かしらの形でお金を受け取ることができるタイプです。

どのタイミングでどんなお金を受け取れるかは商品によって異なります。健康であっても、一定期間ごとに健康祝金などとして給付金を受け取れたり、所定の年齢に達したときに、支払った保険料と同額程度のお金を受け取れたりするタイプなどがあります。さらに、一定の年齢まで加入した場合に、それまでに支払った保険料の総額が戻ってくるというタイプも登場しています。

積み立て型のメリット

病気やケガをしなくても、支払う保険料のすべてが無駄にならないという点は、積み立て型のメリットと言えます。商品によっては、どのタイミングでどれくらいのお金が受け取れるかの目安が分かるため、一種の貯金として活用できる点も、掛け捨て型にはないメリットでしょう。

積み立て型のデメリット

一般的に、積み立て型の医療保険の保険料は、掛け捨て型よりも割高になります。これは還付金や解約返戻金などの将来受け取れるお金が、保険料に上乗せされているためです。

また、年数や年齢に応じて還付金が準備されているため、途中で解約しづらいこともデメリットになり得るでしょう。積み立て型の医療保険は、長期的な保険の継続を考えている場合には適しているタイプと言えます

さらに、掛け捨て型の医療保険と比べて、積み立て型の医療保険は商品数が少ないのが現状です。保障内容のバリエーションも減ってしまうため、保障内容を重視したい場合には向かないかもしれません。

保険期間は定期タイプと終身タイプから選択

医療保険の保険期間は、定期タイプと終身タイプに分けられます。

ライフステージに合わせて選ぶなら定期タイプ

定期タイプは10年や20年など、保険期間が決まっているものです。保険期間が終われば、保障は消滅し、その後も継続する場合は更新の手続きをする必要があります。保険料は終身タイプに比べると割安で加入ができるものの、更新のタイミングで保険料が上がっていくのが特徴です。

そのため、一定期間だけしっかりとした備えが欲しいという場合には、定期タイプが適していると言えます。貯金が貯まるまでの期間や、子供の教育費の負担が大きい期間、住宅ローンを返済するまでの期間などは、治療費の負担がかかってくると困る期間と考えられます。この期間だけ、定期タイプの医療保険に加入し、治療費の負担に備えるという方法が取れるでしょう。

長期的に加入するなら終身タイプの方がお得

終身タイプは一生涯保障が続くタイプのものです。定期タイプと比べると、保険料は割高となるものの、更新などがないため、保険料が変わらず一生涯の保障を準備できるものです。

そのため、長期的な加入を考えている場合には、終身タイプの方が合っているでしょう。定期タイプであれば、更新時に保険料が上がってしまいます。長期に掛けて加入することを考えるならば、加入時の保険料が割高でも、終身タイプの方がトータルのコストを抑えることが可能となります。

保険料の支払いは終身払いか短期払いから選択

終身タイプの医療保険に加入する場合には、保険料の支払い方法を終身払いと短期払いから選択することもあります。

終身払いは将来的な見直しにも対応

終身払いは保障が続く限り、亡くなるまで保険料の支払いを継続する方法です。短期払いに比べて支払期間が長くなる分、毎月の保険料負担は軽くなります。

ただし、長生きすればするほど、保険料の総額が大きくなります。また、老後も保険料を負担しなければいけないといった特徴もあるため、注意が必要です。一方で、将来的に保険を見直すことを前提としている場合は、毎月の保険料負担を抑えながら、保障を準備することができます。

一生涯続けるなら短期払い

短期払いは、一定期間で保険料の支払いを済ます方法です。10年や15年といった期間や、60歳や65歳までといった年齢で指定することが多いでしょう。保険料の支払いを終えた後も、保障は一生涯続きます。

終身払いとは反対に長生きすれば、終身払いよりも保険料の総額が少なくなる可能性があります。平均寿命を基準に計算すれば、短期払いの方が保険料の支払総額は安いケースが多いことも分かっています。

早めに保険料の支払いを終えておくことで、老後に安心して保障を残しておくことも可能です。将来的に保険を見直すことを考えていないのであれば、終身払いの方が、メリットが大きいと言えるでしょう。

しかし、短期で払い込むため、毎月の保険料は終身払いに比べると割高となります。短期払いにする場合は、払込終了まで無理なく継続できるかを考えたうえで設定することが必要でしょう。

医療保険のさまざまな特約を選ぶポイント

医療保険は、主契約に様々な特約を付加することで、より自分の希望に合ったものにカスタマイズすることができます。

先進医療特約で高額な治療費をカバー

先進医療特約は、先進医療を受けた際の実費を1,000万円や2,000万円などといった一定の範囲まで保障されるというものです。

先進医療とは、厚生労働大臣によって定められた高度な技術を用いた治療のことです。先進医療の技術料は公的医療保険の対象外のため、全額自己負担となります。先進医療の技術料は種類によって様々です。50万円以下のものも多くあるものの、がん治療に使われる陽子線治療や重粒子線治療は約300万円かかるとも報告されており、高額な治療費が必要となることもあります。

このような場合に、先進医療特約を付加しておけば、治療費の心配をせずに安心して先進医療を受けることができるでしょう。保険料は100円程度で付加することが可能です。大きな病気になった場合に、経済的な理由で治療を諦めたくない、治療の選択肢を増やしたいという場合は、付加しておくと安心でしょう。

女性特有の病気に手厚く備える女性疾病特約

女性疾病特約は、乳がんや子宮がんなどの女性特有の病気での保障を手厚くするものです。特約を付加することで、他の病気やケガの保障に上乗せして給付金を受け取ることができます。

女性特有の病気だからといって、すべてが他の病気よりも治療費が大きくなるというわけではないため、女性が必ずしも付加しなければいけない特約とは言えないでしょう。しかし、乳がんで乳房を摘出し、乳房再建の手術を受ける場合など、公的医療保険の適用外となる女性特有の治療法もあります。また女性疾病特約は、帝王切開などの出産の合併症なども対象となる商品も多く存在します。

女性疾病特約は上記のような可能性を考えたうえで、自分にとっての必要性を考えると良いでしょう。ただし、女性特有の病気の範囲も、保険会社や商品によって異なることがあるため、比較する際にも保障内容の確認は必要と言えます。

リスクの大きい病気に備える三大疾病特約

がん、心筋梗塞、脳卒中の三大疾病のリスクに備えられる特約が、三大疾病特約です。三大疾病は日本人の死因の上位3つに入っている病気です。三大疾病特約はこれらのリスクに手厚く備えることができる分、付加した場合に保険料の負担が大きくなる傾向があります。

三大疾病特約のさまざまな種類

三大疾病特約と一言でいっても、商品によってその保障内容が異なることもあります。三大疾病によって保険会社が定める所定の状態になった場合に、一時金として受け取れる三大疾病一時金特約や、以降の保険料の払い込みが免除される保険料払込免除特則といった種類があります。また三大疾病入院日数無制限特約という、三大疾病での入院について、入院給付金の支払い限度日数が無制限となるものもあります。

特約の支払い条件や保障内容の重複に注意

三大疾病特約の付加を検討する場合は、支払条件をきちんと確認するようにしましょう。比較的新しい特約では、脳卒中や急性心筋梗塞になった場合の支払条件として、治療目的の入院を開始したときというものが一般的になっています。

しかし、少し古いタイプであれば、60日以上社会復帰できない状態になって初めて支払条件を満たすものもあります。せっかく特約を付加しても支払い条件が厳しければ、いざというときに保障の対象外となることも考えられるため、注意が必要です。

また、医療保険の他にがん保険に加入している場合は、保障が重複する可能性もあります。保険料の負担が大きくなりがちな特約であるため、保険料の支払いの負担と保障内容をきちんと見比べて、加入の検討をするようにしましょう。

がんに手厚く備えるがん特約

がん特約は、比較的大きな費用が必要となりがちな病気である、がんに対して手厚く備えられる特約です。

がん特約のさまざまな種類

がん特約にも商品によってさまざまな種類があります。がん入院特約は、がんでの入院の場合、入院給付金日額の上乗せや、支払限度日数の延長といった保障を受けられます。他にも、がん治療のための通院に対して給付金が支給されるがん通院特約や、がんと診断されたときに給付金を受け取れるがん診断特約といったものがあります。

がん診断特約は、50万円や100万円など比較的まとまったお金を受け取れるものが多く販売されています。用途を問わず受け取れるため、使い勝手が良いとも言えるでしょう。

将来的な見直しの可能性がある場合に注意

がんに対する保険の備え方は、医療保険ん保険を付加する方法の他にも、がん保険に加入することもできます。がん保険単体に加入せずに、医療保険にがん特約を付加することのメリットは、保障内容を重複させずに無駄なく準備できることでしょう。

しかし、セットにしておくと、将来的な見直しをしにくいという点がデメリットとして考えられます。医療保険とがん保険を別々に備えておけば、どちらかの保障内容を見直したい場合や条件の良い新しい保険に乗り換えたい場合などは、セットにしているよりも検討しやすいと言えます。

まとめ

医療保険を選ぶための様々なポイントを紹介しました。医療保険は特約等を付加することで保障を充実させることも可能です。しかし、保障をたくさん付加すれば保険料の負担は大きくなります。

保障内容や保険料、貯蓄性や将来の見直しやすさなど、選ぶポイントはたくさんあるため、まずは自身が医療保険に求めるものを明確にすることが大切でしょう。そのうえで自身の希望に合うものを選択していきましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket