医療保険の通院保障(通院特約)|その仕組みや必要性

医療保険における「通院保障」についてどんなイメージを持っているでしょうか?現在は入院が短くなり、通院で治療する傾向に変化しています。その為、通院に対する保障を考える必要があります。医療保険における通院保障の必要性と保障内容、請求方法から、実際に保障が適用される範囲までお伝えします。
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みなさんは医療保険の「通院保障」についてどこまでご存知でしょうか。通院保障の存在は知っていながらも、具体的にどんな保障なのかを知らない人も多いのではないでしょうか。近年は、入院日数が短くなり、通院で病気を治すスタイルが定着しつつあるからこそ、通院について知っておく必要があります。今回は、通院保障の内容から、保障範囲、そして請求方法などについて細かく紹介していきます。

そもそも医療保険は必要?

「医療保険がなくても問題ない」実はそう思える程、日本の公的医療制度は整備されています。そんな中でも、民間の医療保険の必要性について見ていきます。

保険がなくても公的保障は充実

多くの人がご存知の「高額医療制度」という国の制度があります。

これは毎月の決められた額以上の医療費が掛かった場合、超過分は国から返金されるという仕組みです。その上、日本の国民保険加入の場合であれば医療負担金は3割です。

そのような点を踏まえると日本の公的医療制度は諸外国と比較しても圧倒的に手厚いと感じますよね。

「医療保険がなくても問題ない」

この言葉は決して間違いではない程、日本の公的医療制度は素晴らしいです。しかし、そこには落とし穴も存在します。

高額医療制度の落とし穴

高額医療制度は給付金請求を行ってから、実際にお金が振り込まれるまでに3ヶ月〜4ヶ月を要します。

つまり、最初の支払いについては自身の貯金から賄う必要があります。

手術代や入院費用含めで、30万円掛かった場合は、その30万円は一旦建て替える必要があるのです。

医療保険の魅力は請求から振込までのスピード

医療保険を持つ魅力として、保障内容も去ることながら、実際に保険金請求を行ってから口座にお金が振り込まれるまでの時間が圧倒的に早いことです。

これは保険会社によって様々ですが、早くて書類到着から起算して翌々日の営業日には振り込まれることもあります。

遅くても5営業日などで振り込まれる為に、高額医療制度に比べても圧倒的に早いです。また医療保険の給付金を貰ったとしても高額医療制度も併用することが可能です。

突然の大きな出費に対応する貯蓄がない場合は、医療保険を持っておくことで対応が可能になるのです。

医療保険の保険料負担は年々減少

医療保険の話をすると、このような言葉を投げかける人がいます。

「病気をしているから保険は高いでしょ?」

果たして実際はそうなのでしょうか。

近年は持病を持っていても引受が出来る可能性がある、緩和型保険も手軽に持てる時代になってきました。そして、健康型保険についても1日入院しただけで5日分の入院日額が給付されたりと、保障内容は年々進化を遂げ、使いやすさも向上しています。

「若い時に入った保険だから今更変えても高いでしょ?」

そう思いがちですが、実際は新しい保険に切り替えることで保障内容も料金も良くなることもあるのです。

医療保険の見直しをする意味

「保険の見直し」とは、現在加入している保険を解約し、新しい保険に切り替えることです。この見直しには、一体どんなメリットがあるのでしょうか?

保障対象範囲は年々広くなる

過去を振り返ってみると、医療保険に加入していたのに保障が出なかったというトラブルがとても多い時代がありました。

その理由として、過去に発売された保険の保障範囲が狭かったことが挙げられます。

まず手術にフォーカスを当てると、2010年頃までは各保険会社が保障範囲としていた手術は「約款に記載されている88項目(600種類)」というのがスタンダードでした。

つまり実際に国民健康保険が適用される手術でも、医療保険は保障範囲外という問題があったのです。

しかし、現在の医療保険については「公的な健康保険の対象になる手術(約1,000種類)」が給付対象のスタンダードになっています。

このようなことを踏まえると、「保障内容が良いから昔から加入している」という人も、いざとなったら保障が降りない可能性が大いにあります。

ただ単純に「料金が安くなるから」という理由だけでなく、医療保険を「使える状態にアップデート」することが保険を見直す意味です。

医療保険の保障も常に進化

医療保険は形がない商品である為、多くの人は持っていることに安心して、実際の内容までは見ない傾向にあります。しかし、近年は「掛け捨て」タイプの「解約返戻金がない」ものが主流になり、その分、保障内容も手厚くなっている傾向にあります。

最新のトレンドに手厚く保障

保障内容についても見てみると、例えば「がん、脳卒中、心筋梗塞」の三大疾病になった場合は、入院日数無制限で入院給付金が受け取れたり、入院が短くなっている現在のトレンドから「1日の入院だけでも5日分の入院給付金を保障」など、時代の変化と共に医療保険は変化し続けています。

常に変化するトレンドに合わせて医療保険も新しく

医療技術は年々着実に進歩をしています。私たちが携帯電話のアプリケーションをアップデートするように、医療保険にもアップデートは必要なのです。「保険は持っているから要らない」のではなく、「今ある保険が新しい医療制度に適応しているか」がとても大切だと感じる機会が多くなっているのではないでしょうか。

通院で掛かる費用って何があるの?

ここまでは医療保険について解説しましたが、次からは、入院治療から通院治療がスタンダートになっている近年の医療事情を加味した上で、通院全般に焦点を当てて解説します。

通院保障を考える以前に、どれ位の費用が通院で掛かるのかを知らないといけません。

実際に通院では、どんな費用が掛かるのかを見て行きましょう。

がんはほとんどが通院治療

通院治療が特に顕著に現れる病気は「がん」です。

現在は手術前の入院と手術を行ったら、すぐに通院治療に切り替わります。ここでは、通院しながら行う「がん」の治療法について学びましょう。

放射線療法

ガンに対して放射線を当てて、ガンそのものを小さくする治療方法です。ガンの治療の中でもスタンダードになっています。

手術などで体を傷付けることなく、治療が出来ることと、副作用が他の治療法に比べて少ないことががメリットです。

抗がん剤治療

がんの影響を小さくするためには、がん細胞の成長を少しでも緩める必要があります。抗がん剤を使うことで、そのがん細胞を攻撃して、成長を緩める働きがあります。

しかし、副作用としてがん細胞以外も攻撃してしまうことで吐き気、脱毛などの副作用が発生します。

ホルモン治療

乳がんや前立腺がんなどは、男性ホルモンや女性ホルモンの影響を受けてがん細胞が増殖します。そのため、ホルモン剤を使用することで、ホルモンの働きを抑えて、がんの活性化を防ぎます。

上記のがん治療は、ほとんどが通院治療となっています。その為、通院保障とがん診断一時金を使いながら直していくのが一般的になっています。

その他病気の通院で掛かるもの

通院に掛かるのは、がん治療におけるものばかりではありません。それ以外の病気でも掛かる主な通院費用についてまとめます。

病院までの交通費

家の近所に大きな病院がある場合は、大きな問題にはなりません。

しかし、住む場所や現在の体の状態によってはバスやタクシーなどの交通機関を利用することになります。

定期的な通院になると、その分交通費も掛かりますよね。

1回の金額が小さいとしても、長期の通院になるほど負担は大きなものとなります。

定期検査代

現在の病気の経過を見るために、通院時に定期検査を行うことがあります。

病気の進行度合いなどを調べるために継続的に行わないといけない為、金銭的な負担も大きくなります。

このように、通院にはとても多くのお金が掛かる場面が多いのです。

医療保険における通院の定義は?

医療保険加入時に知っておきたいこととして、「保障される範囲」を押さえておくことが大切です。

例えば、がん保険において「上皮内新生物(初期のがん)は保障しない」など、「がん」でも過去には保障されない場合が存在したのです。

医療保険における「通院保障」の保障範囲について見ていきましょう。

通院保障は入院前後の通院に限られる

医療保険における保障対象になるものとならないものの線引きは「入院をしているか」が、大きなポイントになります。

多くの保険会社の通院保障の約款を確認すると、「通院保障は入院前後の通院に限られる」との記載があります。つまり入院を伴わない通院は保障の対象にはなりません。

しかし、がん保険や傷害保険については、入院をしなくても保障対象になる場合があります。

保険を持っている多くの人は、この保障範囲というものを意識していません。自分の加入している保険の保障内容を確認し、どんな場面で保障が使えるのかを、しっかりと勉強しておくことが大切です。

通院保障ってそもそも必要?

「がん」であれば診断一時金を多く貰うことで、その一時金で治療費を賄うことが出来るかもしれません。

しかし、長期の通院を要する場合については通院保障が重要になってきます。

どんな病気かによって大きく変わる

通院保障は「どんな病気で、どれだけの通院日数を要するか」によって享受出来るメリットが大きく変わります。

がんの場合

間違いなく、病気の中でも一番お金が掛かるのが「がん」です。実際に手術をしてからも、通院でガン治療を受けたり、定期検診を受けたりなど、定期的に通院という形で病院に行くことが多いです。

治療の長期化によって一時金では賄えないことも

「がん」治療には多額の治療費が掛かります。抗がん剤治療や、放射線療法なども定期的に行うと、月で5万円〜10万円は簡単に掛かってしまいます。がん一時金の保障の給付金を給付されたとしても、通院の長期化すれば、その分負担は増えてしまいます。

通院保障はあると良い

がんの場合は、通院時に抗がん剤治療、放射線治療などを行う為、通院保障でその日の治療費を賄うことが出来れば、金銭的負担はとても楽になります。

特にがん保険の通院保障は、会社によっては通院日数無制限で支給されたりすることもあります。

長期の通院に備えて、実際の保障内容などを調べておく必要があります。

その他病気の場合

それでは、長期の通院になりづらい「がん」以外の病気では通院は必要なのでしょうか?

通院保障はがんがメイン

がんは通院の期間が3年〜5年は掛かるのに対して、他の病気は通院が長期化しづらい傾向にあります。その為、通院保障に加入していたとしても支払っている保険料に見合った保障を受け取れる可能性は多くありません。

通院保障は、がんなどの長期通院に備えて持っておくと、大きな恩恵を受けられると感じます。

ケガに対しても通院保障は効果あるの?

医療保険は一見すると「病気のみの保障」というイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?

医療保険に対する怪我の位置付けについても、学んでいきましょう。

保障対象だが、入院前後のものに限られる

「医療保険は病気の保障」と思われがちですが、実は「ケガ」も保障対象になります。

しかし、医療保険の通院は保障範囲に病気、ケガに共通して「入院前後のもの」と記載があります。

入院を伴う怪我というのを考えてみると、重大事故でないと起きづらく、通院保障は使いづらい傾向にあります。

保障としては怪我も対象ですが、「入院している」という条件が、大きなネックになっています。

傷害保険であれば、入院がなくても保障対象になる

しかし、傷害保険の通院保障に関しては、「入院前後のものに限る」という医療保険にある保障範囲がありません。その為、入院をする、しないに関わらず通院することで保障の対象となります。

医療保険は「広範囲を手広く保障する」のに対して、傷害保険やがん保険は「狭い範囲を強力に保障する」というイメージを持って頂ければ間違いありません。

通院保障の請求方法は?

実際に、給付金請求は言葉を聞くと「面倒」と感じてしまう人は多いですよね。

しかし、何となく「面倒」と思っていたことも、実はちゃんと勉強してみると「意外と簡単」と感じることは良くあります。

そして私たちは、必ずと言っていい程、病気になります。

未来への備えとして、保険請求方法についても勉強していきましょう。

給付金申請には病院からの診断書が必要

給付金申請には、掛かりつけの病院の診断者が必要です。

入院した場合は入院証明書、病気の診断確定の場合は診断証明書などを発行してもらいます。

この病院側が作成した診断書を保険会社に提出することで、保険金が支払われます。

半年分、1年分をまとめて請求が基本

しかし、通院が長期に渡る場合は、請求の度に診断書が必要になってしまいます。

診断書発行には約3000円ほどの出費になってしまう為、まとめて診断書を発行して貰うことが基本です。

通院保障の比較ポイント

通院保障は「がん」治療において効果を発揮します。しかし、より多くの病気に備えるために、医療保険の通院保障を持っておいて、更にがん保険の通院保障もあると万全だと感じます。

広く浅い医療保険と、狭く深いがん保険を上手に組み合わせて持つことも、デメリットを和らげる上で大切です。

まとめ

最後になりますが、「通院での治療」は決して悪いことばかりではありません。通院での治療は日常生活への復帰を易しくする効果もあります。今回は通院をメインにお話ししましたが、通院の長期化に伴う負担などを踏まえて、医療保険の持ち方を検討されることが望ましいです。今回の記事をきっかけに、確かな「通院」の知識の足がかりとなれば幸いです。

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