医療保険の種類|保険選びや見直しのための基礎知識

医療保険は大きく公的な医療保険と民間の医療保険があり、それぞれの中でも多くの種類があります。ここではそれらの仕組みや特徴について、できる限り分かりやすく解説します。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

医療保険には様々な種類があってよくわからないという人も多いのではないでしょうか。今回は公的医療保険と民間の医療保険に分けて、それぞれどんな種類があって、どんな保障内容なのかを詳しく解説していきます。

医療保険には公的医療保険制度と民間の医療保険があります。公的医療保険制度ではカバーしきれない保障を民間の医療保険で準備することが一般的でしょう。それぞれの特徴や、保障内容はどのように違うのでしょうか。

公的医療保険制度とは

医療保険制度とは、病気やケガなどで医療機関を受診した際に、医療費の一部を国や市町村などの保険者が給付する保険のことです。この制度は医療費が高額になった場合に、個人の経済的な負担が大きくなることを回避するために設けられています。

公的医療保険の特徴

日本の医療保険制度には下記のような特徴あります。

国民は誰でも必ず医療保険に加入

日本に住む人であれば、必ずいずれかの公的医療保険に加入する権利と義務があります。これを国民皆保険と言い、日本に住んでいれば外国人にも適用されます。個人が加入しないという選択肢を持たない、強制加入という点は、日本の医療保険制度の大きな特徴と言えるでしょう。

全国どこの医療機関でも受診可能

公的医療保険に加入していれば、健康保険証を受け取ることができます。健康保険証があれば、どの医療機関でも診療を受けられるということも医療保険制度の特徴の1つです。このため、病気やケガの際は誰でも簡単に医療サービスを受けることができます。

医療給付と現金給付がある

医療給付とは、療養に必要とされる現物そのものを給付することを指し、現物給付とも言われます。これに対して、現金で支給されることを現金給付と言います。

日本の医療保険制度では、現物給付は、診察や薬剤などの支給、処置や手術、入院、看護などが該当します。現金給付は出産手当金や傷病手当金が例として挙げられるでしょう。

医療費の負担額は年齢や所得によって異なる

健康保険証を医療機関の窓口で提示すれば、医療費の自己負担は1割~3割に軽減されます。負担の割合は年齢によって異なり、6歳以上70歳以下の人は3割負担となります。6歳以下もしくは70歳以上75歳以下の人は2割負担、75歳以上であれば1割負担で診療を受けることが可能です。ただし、70歳以上でも現役並みの所得がある場合は、現役世代と同様に3割負担となります。

月の医療費が高額になった場合は払い戻しがある

医療保険制度では、月にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合に、限度額を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。高額療養費制度の限度額は所得により異なります。

年収が約370万円~約770万円の世帯であれば、医療費が100万円ほどの高額になったとしても、高額療養費制度を使うと、実質負担額は最大でも9万円ほどに抑えることが可能です。

公的医療保険の種類

公的医療保険には年齢や職業などによって様々な種類があり、運営する主体も種類によって異なるものの、国民であれば必ずどれかの保険に加入します。

健康保険

被用者である、企業や個人事業主などに雇われた会社員などが対象となる保険です。被用者保険とも言われます。健康保険の中にも、従業員規模などによって全国健康保険協会や組合管掌健康保険健康保険などがあります。

健康保険に加入していると、雇用主からの拠出が得やすく、所得に応じて高い給付を受けられるといったメリットが挙げられます。また自身でも所得が把握しやすくなることもメリットの1つと考えられるでしょう。

共済組合・船員保険

共済組合は公務員や教職員が対象となる医療保険、船員保険はその名の通り、船員が対象となる医療保険です。共済組合は国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済に分類できます。

国民健康保険

自営業者や専業主婦など、他の医療保険に該当しない人が加入する保険です。地域保険という呼び方もします。

後期高齢者医療

75歳以上の後期高齢者が対象の医療保険です。ただし、65歳~74歳の人でも一定の障害の状態にある人は対象となります。

その他の医療保険

上記の他にも、大手企業などが加入する健康保険組合、中小企業が加入する協会けんぽ、退職者医療制度などいくつかの種類があります。

健康保険組合は、企業の会社員が加入する保険で、健保組合とも呼ばれています。社員数が700名以上の企業規模であれば、国の認可を得て単独で設立することができます。また3,000名以上の規模になれば、複数の同業種の企業が共同で設立することも可能です。

健康保険と国民健康保険では給付内容に違いが

主に会社員が加入する健康保険と、自営業者など企業に所属しない人などが対象となる国民健康保険では、給付内容に違いがあります。大きな違いは、健康保険には病気やケガ、出産などで働けない期間の保障があるという点でしょう。

健康保険に加入していれば、病気やケガで働けず、給与がもらえない場合に、給与の約3分の2相当が支給される傷病手当金が受け取れます。また出産のために仕事を休む場合には、産前産後の休業手当として出産手当金を受け取ることも可能です。

このような違いはあるものの、高額療養費や出産一時金は、健康保険も国民健康保険も同額が受け取れます。また移送費用や訪問看護療養費、高額介護合算療養費なども、どちらの医療保険にも付帯されている保障です。

民間の医療保険制度とは

医療保険は公的なものだけでなく、民間の保険会社からも多数販売されています。一般的には、公的医療保険では費用が保障されなかったり、不十分だったりする部分をカバーする目的として備える人が多いでしょう。

民間医療保険の公的医療保険との違い

公的医療保険は、日本国民であれば加入しなければいけないという義務があります。加入のための審査は不要で、健康保険証を出せば、窓口でそのまま医療費を軽減してもらえます。また納めるべき保険料は、上記で見たように所得によって変動があるという特徴もあります。

一方で民間の医療保険は、まず加入するかどうかは、本人の自由です。加入の必要性を感じれば、自身で多数の医療保険から選び、手続きをする必要があります。手続きの際には健康状態の確認などといった、加入のための審査があるという点も違いとなります。

また保険料は年齢や付帯する保障内容によって決まります。公的医療保険では特別な申請なしでサービスが受けられるのに対して、民間の医療保険は給付金を受け取る際には、自ら申請しなければいけないといったことも違いの1つです。

基本的な保障内容

民間の医療保険の保障内容は、入院給付金と手術給付金が主な保障となるでしょう。

入院給付金

病気やケガなどで入院をしたときに受け取れる給付金です。1日当たりの入院につき5,000円や1万円といったような形で給付を受けられる場合が多くなっています。

手術給付金

病気やケガなどで手術を受けた場合に受け取れる給付金のことです。どの手術が対象になるかは保険会社や保険商品によって異なります。手術1回につき数万円といった形で給付を受けられるものが一般的です。

民間医療保険の種類

民間の医療保険には様々な種類があります。今回は6つに分けて解説します。

終身型の医療保険

終身保険は、加入時の保険料のまま保障が一生涯続く保険のことです。保険料が変わらないため、安心して続けていくことができるでしょう。

ただし、保障が一生涯続くと言っても、医療事情は変化していくものです。ずっと同じ保障内容のままにしておくと、保障内容と医療の実情が合わず、使い物にならないものになっていく可能性もあります。終身保険に加入したとしても、加入後に適宜保障内容を見直したり、必要に応じて追加したりという検討も忘れないようにしましょう。

また一生涯の保障を買うことから、定期型のものよりも保険料が割高になる場合が多いです。保険料は継続して支払っていくもののため、保険料の負担も加入の検討の際には注意が必要です。

定期型の医療保険

一生涯保障が続く終身型とは異なり、定期型は保障期間が決まっている保険です。保障期間が短いため、保険料は割安となります。ただし、満期を迎え、更新するときには再度手続きが必要で、さらに加入時よりも保険料が上がる場合が多いです。

保障期間が短期間での契約のため、将来的に見直しを考えている場合には適していると言えます。しかし、満期が来るたびにそのまま更新すると、保険料の負担がどんどん大きくなり、結局は当初から終身型の保険に加入していた方が、支払総額が安く済むという可能性もあります。将来的な保険の持ち方も視野に入れたうえで、加入を検討するようにしましょう。

女性向けの医療保険

終身型でも定期型でも、女性特有の病気になった場合に手厚く備える保障を付帯することができる医療保険も数多く販売されています。乳がんや子宮頸がんといった女性特有の病気などが対象となり、これらの病気で入院した場合には、入院給付金も上乗せして支給されるといった保障が多く見られます。さらに女性向けの医療保険は、一般的に帝王切開などの妊娠時の合併症も対象となります。

貯蓄型の医療保険

貯蓄型の医療保険は、保障機能だけでなく、貯蓄機能も併せ持った医療保険です。解約時にこれまで支払った保険料の一部またはすべてが戻ってくるものや、保険期間中に入院や手術をしなくても、健康祝金や生存給付金として給付金を受け取れるものなどがあります。

将来的に払戻金や給付金が受け取れるため、いわゆる掛け捨てのものに比べると、保険料は割高となります。しかし、払戻金や給付金を受け取れれば、トータルのコストが少なく済む可能性もあるため、掛け捨ての保険に抵抗がある人には好まれるかもしれません。

引受緩和型の医療保険

引き受け緩和型の医療保険とは、加入時の審査の基準が一般的なものよりも緩く設定されている医療保険です。健康状態の告知項目は2~4個程度で申し込みができるようになっています。

そのため、持病がある人や過去に大きな病気をした人でも、加入しやすい保険です。一方で、一般の医療保険よりも毎月の保険料は1.5倍~2倍近くかかるという特徴もあるため、加入の検討の際には注意が必要でしょう。

無選択型の医療保険

無選択型の医療保険は、引き受け緩和型の医療保険よりも、さらに加入時の審査が緩く、告知をせずに加入ができる医療保険です。一般的には、引き受け緩和型の医療保険にも加入ができなかった際に検討されることが多いでしょう。

引き受け緩和型の医療保険と同様に、保険料が高く設定されており、一般のものの数倍かかるものもあります。また無選択型の医療保険を取り扱う保険会社も少なく、商品数も少ないため、選択肢が少ないという欠点もあると言えるでしょう。

特約を付加して自分に合う形にカスタマイズ

医療保険は、上記のような特定の形に、様々な特約を付加して、自分の希望に合ったようにカスタマイズすることも可能です。多くの保険には以下のような特約を自身で選んで付加することができます。

通院特約

通院1回につき、給付金を受け取ることができます。現代の医療では、入院ではなく通院しながら治療することも増えてきているため、この特約を付加することで、より現代に合った使いやすい保険になるでしょう。

女性疾病特約

女性特有の病気で入院や手術をした場合の保障を手厚くすることができます。乳がんや子宮頸がんといった女性特有の病気に加え、帝王切開など妊娠合併症も保障の範囲となるものがほとんどです。

先進医療特約

先進医療を受けた際に給付を受け取ることができます。先進医療の費用は健康保険の適用外となるため、全額自己負担となります。万一の際に治療の選択肢を広げたいという場合には付加しておくと安心かもしれません。

退院後療養特約

退院後に給付が受け取れるものです。退院時のお見舞い返しや、退院後の通院といった費用に充てることができるでしょう。

三大疾病特約

がん、脳卒中、心筋梗塞の三大疾病になった場合に給付金が受け取れます。ただし、三大疾病になったらではなく、三大疾病で所定の状態になった場合に給付金を受け取れるという内容のものがほとんどのため、注意が必要です。加入の検討の際は支払条件を確認しておくと、安心でしょう。

民間の医療保険は必要か

公的医療保険に加えて民間の医療保険に加入する必要があるのか悩む人も多いかもしれません。下記は民間の医療保険への加入の検討の可否を判断する目安として考えられます。

民間の医療保険の検討すべき場合

まず、民間の医療保険への加入の検討が必要な場合です。

公的医療保険制度だけでは心配な場合

公的医療保険制度は助け合いの制度として成り立っていますが、少子高齢化が進む日本では問題点も指摘されています。

まず高齢化が進み、高齢者が増えると、医療費の増大が懸念されます。さらに少子化による労働人口の減少も問題です。労働人口が減れば、医療保険制度を支える保険料を支払う人数も少なくなります。医療費の増大と保険料収入の減少は医療保険制度自体を不安定なものにするとも言えるでしょう。

実際に平成27年の医療保険制度の改正では、入院時の食事代が一般所得者では1食100円の値上がりがされたり、各都道府県の保険料率が上がったりと、保険料の負担が大きくなっています。このような問題を抱える公的医療保険制度だけでは心配という人は、自身で民間の保険に加入した方が良いかもしれません。

国民健康保険に加入している場合

国民健康保険の加入者は、会社員が加入する健康保険に比べると、保障は手薄となります。国民健康保険でカバーしきれない部分を、民間の医療保険で補てんすることが検討できるでしょう。

自分で貯金することが苦手な場合

重度の病気や長期入院が必要になった場合などは、健康保険でカバーされる保障だけでまかなうことが難しい可能性もあります。病気によっては先進医療を受けたいと考える場合もあるでしょう。このような大きなお金が急遽必要となった場合に、貯蓄では賄えない、自分で貯蓄することが苦手、という人はあらかじめ民間の医療保険を準備しておいた方が安心と言えます。

民間の医療保険の検討の必要性が低い場合

民間の医療保険への加入の検討の必要性が低い場合は、以下のケースが考えられます。

会社で加入している医療保険の保障内容が充実している場合

平成27年の医療保険制度の改正では、高額療養費制度を利用した場合の高所得者の自己負担額が大きくなるように変更されています。そのため一見すると、高所得者も民間の医療保険に加入した方が良いように考えられます。

しかし、所得が高くなるであろう大企業や公務員は、別途健保組合や共済組合に加入していることも多いです。これらに加入していれば、高額療養費制度とは別に、福利厚生の一環として、医療費が高額になった場合も給付金を受け取ることができるものもあります。このように、会社で加入する医療保険の保障内容が充実している場合は、民間の医療保険への加入の必要性も低くなるでしょう。

十分な貯蓄がある場合

公的医療保険制度ではまかなえない時に、医療費の負担を補うだけのお金が十分にある場合も、民間の医療保険の加入の必要性は低いかもしれません。ただし、お金があっても、何か別の目的を持って貯めていたお金を、医療費に使ってしまうことに抵抗がある人は、貯金とは別に、万一のためには保険で準備することを考えても良いでしょう。

まとめ

民間の医療保険は多くの保険会社から様々な商品が販売されています。加入を検討する際は、安易に保険料だけで比較して決めてしまわず、現代の医療に合った保障内容でかつ、自身の状況や希望に合ったものをきちんと比較して加入するようにしましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket