保険への加入を検討する際に、掛け捨て型がいいのか、積み立て型がいいのか、迷う人も多いのではないでしょうか。今回はその中でも医療保険の掛け捨て型の仕組みと特徴を積立型のものと比較し、自分に合った医療保険を選ぶポイントを解説します。
掛け捨て型の保険とはどういったものなのでしょうか。掛け捨て型の保険は、満期を迎えた時や解約した時にお金が戻ってこない保険です。支払った保険料が戻らないことから、「掛け捨て」と名前が付いています。
掛け捨て型の保険と積み立て型の保険の違い
掛け捨て型の医療保険も積み立て型のものも、保障内容にはほとんど違いがないことが多いです。どちらも入院した時や手術した時などに、入院給付金や手術給付金が受け取れるものが保障内容の主として挙げられます。
その他にも商品によって、通院した時の通院給付金や先進医療を受けた時のための先進医療給付金、また女性の病気に特化した女性疾病給付金などを受けられるものがあります。このような保障内容は、掛け捨て型にも積み立て型にも見ることができます。
給付金が受け取れる条件が異なる
保障内容には大きな違いはないものの、保障以外で給付金が受け取れる条件が大きく異なります。掛け捨て型の医療保険では、入院や手術など給付金を受け取ることがなく、保険期間が終了すれば、掛けた保険料が戻ってくることはありません。これに対して、積み立て型は満期や更新、解約時にお金が一部戻ってくることがあります。
どちらも、病気やケガによる入院や手術などの時に、支払った保険料と引き換えに、お金を受け取れるという意味では同じです。ただ、保険期間の終了時にお金が受け取れるかどうかという条件が異なっているのです。
積み立て型の医療保険はいつお金が戻ってくる?
積み立て型は、入院や手術などの給付事由に該当しない場合でも、掛けた保険料が戻ってくることがあります。そのお金の名称は「解約返戻金」、「満期保険金」や「健康祝金」などと医療保険の種類によって様々です。では、どのような時にお金が戻ってくるのでしょうか。
途中解約したとき
保険を途中で解約した場合に受け取れるお金を解約返戻金と言います。積み立て型の医療保険では途中解約した際に、解約返戻金が受け取れるものがあります。
解約返戻金の返戻率は、保険加入期間の長さに比例して高くなるのが一般的です。解約した場合には、その時点での返戻率に基づいて解約返戻金が算出されます。
一定期間給付金を受け取らなかった、生存しているとき
近年では一定期間、入院や手術などの給付金を受け取る事態に至らなかった場合に、健康祝金として、お金を受け取れる保険もあります。中には、途中で給付金を受け取ったとしても、一定期間ごとに生存している限りお金を受け取れる、生存給付金付きの医療保険も出てきています。
一定年齢まで継続して加入したとき
一定の年齢まで継続して加入した場合に、それまでに支払った保険料の総額が戻ってくるという医療保険もあります。加入期間中に給付金を受け取った場合は、保険料の総額から差し引かれた額を受け取ることも可能です。
積み立て型と言っても大きな利益が出るものではない
積み立て型と言っても、支払った保険料を上回る金額が戻ってくるという商品は、変額保険や外貨建ての保険などを除けばほとんどありません。あくまで保険料の一部もしくはすべてが戻ってくる可能性があるというものです。お金を増やすために加入するような商品ではないため、注意が必要でしょう。
掛け捨て型よりも積み立て型が人気
生命保険文化センターの平成28年に実施された調査によると、貯蓄型の商品への人気が高いことが分かっています。生命保険の掛け捨て型と貯蓄型のどちらを好むかといった質問に対して、「貯蓄型商品志向」と回答したのは65.2%、「掛け捨て型商品志向」と回答したのは27.5%でした。
これは生命保険に関する調査であるものの、掛け捨てはもったいないという意識が働いているのは医療保険についても同様と考えられるでしょう。保険期間中に給付金を受け取ることがなくても、掛けた保険料のすべてが払い損になることがないという点を魅力に感じる人も多いのかもしれません。
掛け捨て型のメリット・デメリット
しかし、本当に積み立て型の医療保険に加入する方が、メリットは大きいのでしょうか。掛け捨て型と積み立て型それぞれのメリットとデメリットを比較して考えていきます。
掛け捨て型のメリット
まず、掛け捨て型の医療保険に加入することのメリットは以下の通りです。
保険料が安い
積み立て型に比べると、掛け捨て型の医療保険の保険料は安くなることが多いです。積み立て型の保険は、満期金や健康祝金などといった将来的に受け取れるお金があらかじめ保険料に上乗せされているため、その分保険料が高く設定されています。これに対して掛け捨て型は、そのような上乗せがないため、保険料を安く抑えることが可能となっています。
加入途中で見直しやすい
掛け捨て型の医療保険は満期金や解約返戻金などがないため、途中で解約しても、継続していれば受け取れるはずだったお金がなくなるといったことはありません。そのため、途中で解約しても損になるということがないと言えます。自分に合った医療保険が他に出てきたら、途中で解約し、他に乗り換えるということがしやすい点は、掛け捨て型の医療保険のメリットの1つとなるでしょう。
現在加入している保険が、今は十分な保障だとしても、将来的に医療や公的制度が変化することで、実情に合わず、いざというときに使えないものになる可能性もあります。掛け捨て型の医療保険であれば、将来的にもより良い保険への見直しもしやすいと言えます。
多数の商品から選べる
掛け捨て型の医療保険は、積み立て型のものに比べて商品数が多いのも特徴です。積み立て型の医療保険は比較的新しい保険のタイプのため、まだ商品数が少ないのが現状です。
それに対して掛け捨ての医療保険は、ほとんどの生命保険会社で取り扱われている、オーソドックスなものです。各社から様々な特色のある保障内容の医療保険が販売されているため、自分の希望や条件に合った医療保険が見つかりやすいとも言えるでしょう。
保障内容が比較的シンプル
積み立て型の医療保険は、保障機能だけでなく、満期金や健康祝金などの給付金もあるため、人によっては保険の中身が分かりづらいと感じるかもしれません。掛け捨て型の医療保険ならば、入院や手術などの支払事由に該当した場合に給付金が受け取れるというシンプルなもののため、比較すると分かりやすいという点もメリットの1つとして挙げられます。
掛け捨て型のデメリット
掛け捨て型の医療保険への加入のメリットがある一方で、デメリットも存在します。
保険料が戻ってこない
掛け捨て型の保険である以上、入院や手術といった支払事由に該当しなければ、保険料は一切戻ってきません。満期や更新を迎えた時、または解約したときにもお金を受け取ることはないため、保険料が無駄になると考える人にとっては、掛け捨てであることがデメリットになるでしょう。
積み立て型のメリット・デメリット
掛け捨て型の医療保険と同様に、積み立て型にもメリットとデメリットがあります。
積み立て型のメリット
まずは積み立て型の医療保険のメリットです。
入院や手術をしなくても保険料がすべて無駄にはならない
積み立て型の医療保険は、入院や手術のような支払事由が発生しなくても、満期金や健康祝金などの給付金といった、何らかの形でお金を受け取ることができます。健康で保険を使うことがなければお金が戻らない掛け捨て型に不満を感じる人にとっては、これは大きなメリットとなるでしょう。
貯蓄として考えることもできる
積み立て型の医療保険は、所定の期間加入を継続していたり、所定の年齢まで契約していたりすれば、健康であっても給付金を受け取ることができるものも多くあります。そのため契約時にいつ、どのくらいの給付金を受け取れるかといった目安を把握することも可能なため、給付金を一種の貯蓄として考えることもできるでしょう。医療保険を掛けながらも貯金ができるのは、積み立て型ならではと言えます。
積み立て型のデメリット
逆に積み立て型の医療保険のデメリットは以下の通りです。
掛け捨て型に比べて保険料が高い
積み立て型の医療保険は、健康で保険を使う機会がなくても給付金を受け取れるというメリットがあるものの、その分保険料は一般的に掛け捨て型よりも高くなります。これは入院や手術などを保障する保険料に、満期金や健康祝金などの給付金といった将来受け取れるお金が、保険料に上乗せされているからです。
積み立て型の医療保険は、健康で入院や手術をしなくてもお金を受け取れるため、得をした気分になるかもしれません。しかし、結局は掛け捨て型よりも多めに支払った保険料が戻ってきただけということにもなり得るため、加入の際は注意が必要でしょう。
中途解約がしづらい
健康祝金や生存給付金などを受け取るためには、所定の期間加入を継続する、または所定の年齢まで健康を維持するといった条件があります。もしもこれらを受け取る前に解約してしまえば、せっかく掛け捨て型よりも高い保険料を払っていたのに、少ない解約返戻金しか受け取れないということも起こり得ます。
また新たに自分の希望に合った医療保険に乗り換えたいという場合も、このような条件があるために、二の足を踏むといったことも考えられるでしょう。積み立て型の医療保険を検討する際は、中長期的な視点で加入を継続できるかどうかも考える必要があると言えます。
入院や手術給付金を受け取ることで損をすることも
所定の年齢まで加入を継続した場合に、それまでに支払った保険料の総額が戻ってくるという医療保険もあるものの、これにも注意が必要です。これは入院給付金や手術給付金などを受け取った額が払い込んだ保険料の総額を越えなかった場合に、払込保険料の全額または差額が戻ってくるものです。つまり、入院給付金などを受け取った額が払い込んだ保険料の総額を越えた場合は、保険料は戻って来ないということになります。
保険料が戻って来ないという点では、掛け捨て型の医療保険と同じです。しかし、積み立て型の医療保険の場合は、もともと保険料が掛け捨て型よりも高めに設定されています。これを考えると、積み立て型の医療保険に加入しているのに保険料の返戻がなかった場合は、その分だけ損をする可能性も考えられます。
商品数が少ない
現在販売されている医療保険の大多数を占めているのは、掛け捨て型のものと言えます。積み立て型の医療保険はまだまだ数が少なく、保障内容のバリエーションは掛け捨て型に比べると乏しくなります。そのため、様々な種類の保障内容から比較検討したいという人には、商品数の少なさがデメリットとなり得るでしょう。
医療保険は掛け捨て型と積み立て型どちらが良い?
掛け捨て型の保険も積み立て型のものもメリットとデメリットがあり、一概にどちらが良いと言うことはできません。実際に選ぶ際には、自分の年齢や家族構成、ライフプランなどに沿って選んでいくと良いでしょう。どんな場合にどちらの保険の方が適しているのか簡単に解説します。
掛け捨て型の医療保険に加入した方がいい場合
積み立て型よりも掛け捨て型の医療保険に加入した方が、メリットが大きくなる場合は以下の通りです。
毎月の保険料の負担を軽くしたい
保険に加入すると、継続的に保険料を払わなければいけません。医療保険は入りたいけど保険料の負担はなるべく抑えたいという場合は、積み立て型よりも比較的保険料が安い掛け捨て型で準備する方が良いでしょう。
医療の実情に合わせて将来的に保険を見直したい
掛け捨て型の医療保険は、満期金などがないため、途中で解約しやすいという特徴があります。もしも医療保険をずっと続けていくものでなく、将来的に見直していきたいと考えている場合は、掛け捨て型の医療保険が合っているでしょう。
保障機能を重視している
積み立て型の医療保険は保障と貯蓄の2つの機能を併せ持つ保険です。一方で掛け捨て型は保障機能に特化した保険と言えるでしょう。もしも保険は保障機能を重視して保険料を安く抑えたい、また貯蓄は保険でなく別の方法で行いたいと考えるのであれば、掛け捨て型の方が適していると言えます。
多数の商品から比較して選びたい
掛け捨て型の医療保険の方が積み立て型よりも各社から様々な特色ある商品が販売されています。多数の商品から比較検討して、じっくりと自分に合う保障内容を選びたいという場合は掛け捨て型の方が良いかもしれません。
終身医療保険の加入を検討している
入院や手術のリスクは一生涯続くものです。若いうちに加入すれば、一生涯の保障を比較的安い保険料で持つことができます。
終身医療保険は生涯にわたって契約を継続するもののため、加入する際は解約しないことを前提としていると言えます。この場合は解約返戻金の有無を気にしなくても良いため、月々の保険料を安くできる掛け捨て型の方が向いているでしょう。
積み立て型の医療保険に加入した方が良い場合
反対に積み立て型の医療保険への加入の方が、メリットが大きい場合は以下が挙げられるでしょう。
保険料がすべて掛け捨てになるのがいや
入院や手術時の給付金以外に健康であってもお金を受け取れることが、積み立て型の大きなメリットです。医療保険に加入していても、入院や手術をせずに無事に過ごすことも考えられます。そのような場合に何も給付金を受け取れなければ、損をした、保険料を無駄にしたと考える人は、積み立て型の医療保険を選んだ方が良いでしょう。
健康状態に自信がある
積み立て型の医療保険は、一定の期間まで健康に過ごすことができた時に初めて、健康祝金という形で、保険料の一部が返ってくるものもあります。しかしその条件をクリアできなければ、せっかく掛け捨て型よりも割高の保険料を払っていても、結局給付金を受け取れないという可能性もあるかもしれません。健康祝金のような給付金を目当てに積み立て型の医療保険を検討する場合は、自身の健康状態と相談しながら選ぶようにしましょう。
保険を掛けながら貯金もしたい
積み立て型の医療保険は、入院や手術などの保障に加えて、条件をクリアすれば所定の時期にお金を受け取ることができます。そのため、保障を持ちながら貯金をしているとも言えます。保険に保障の機能だけでなく、貯蓄の機能も持たせたいという場合は、積み立て型の医療保険の方が有効と言えます。
まとめ
掛け捨て型の医療保険も積み立て型の医療保険も、どちらそれぞれ特徴があり、どちらに加入した方が良いのか分からないという人も多いかもしれません。そんな時はまず、自身が医療保険に何を求めるのかを整理してみましょう。そうすれば自ずと、どちらを選んだ方が自分にとってメリットが大きいのか見えてくるはずです。