個人年金保険とは|老後資金を上手に準備しよう

個人年金保険は老後の経済的リスクに備える保険です。名前は知ってても意外と知らないことが多い個人年金保険の種類や特徴、選び方についてわかりやすく紹介します。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

個人年金保険という言葉を一度は聞いたことがある人も多いと思いますが、どんな保険なのかご存知でない人も多いのではないでしょうか。個人年金保険は老後の生活費が不足してしまう経済的リスクに備えることができる保険です。そこで今回は個人年金保険の役割や特徴、どのようにして選べばいいかなど詳しく紹介します。

1:個人年金保険とは

公的年金以外の方法で、老後の資金を準備する方法としてすぐに思い浮かぶのが、個人年金保険ではないでしょうか。個人年金保険は老後の資金を準備する方法として有効な方法の一つです。そこでまずは個人年金保険の役割や加入状況などについて一緒にみていきましょう。

1-1:個人年金保険の役割

保険には人生のまさかの時の経済的リスクに備えるという役割があります。個人年金保険は人生のどのような万が一のリスクに備えるものかを一緒に考えていきましょう。

1-1-2:保険は人生のまさかの時に備えるもの

世の中に出回っている保険に加入することで人生のまさかの時の経済的リスクに備えることができます。たとえば生命保険なら世帯主が死亡してしまった時の残された家族が生活できなくなってしまう経済的リスク。医療保険は病気や怪我で入院した時の治療費や生活費などの経済的リスク。このように保険を使うことで人生の万が一の経済的リスクに備えることできます。

1-1-2:個人年金保険で老後の生活を守る

個人年金保険に加入することで、会社を退職した後の老後の生活費を準備することができます。老後の主な収入源は国民年金などの公的年金です。しかし公的年金だけでは老後の生活費を全て準備することができません。「平成30年度 生命保険に関する 全国実態調査 〈速報版〉」によると老後の夫婦の生活費として公的年金(国民年金、厚生年金)以外で必要な資金額は、60歳〜64歳で月額20.6万円(前年度は20.1万円)、65歳以降では月額15.9万円(前回16.0 万円)でした。この調査からも公的年金以外の方法で、老後の生活費を事前に準備する必要があることがわかります。このように老後には収入が減少してしまう経済的リスクが存在します。この経済的リスクに備えることができる保険が、個人年金保険です。

1-2:個人年金保険の加入状況

個人年金保険は老後の経済的リスクに備えることができる保険です。公的年金では老後の生活費を準備することができないという不安から、老後の生活費を準備する手段として個人年金保険が注目されています。

1-2-1:50代が一番多く個人年金に加入している理由

「平成30年度 生命保険に関する 全国実態調査 〈速報版〉」によると、個人年金保険の世帯加入率は21.9%で前年度の21.4%から微増し、世帯主の年代別の見ると50代31.9%と一番高くなっています。20代、30代の加入率は低くなっている理由は、子供の教育費や家のローンなどの老後の資金を準備する経済的余力がないことが考えられます。老後の資金の準備ができる余裕が生まれてくる40代後半から50代にかけて、個人年金保険の加入を検討する人が増えているようです。

1-2-2:世代問わず老後の生活に備えたいニーズが高まっている

20代や30代でも公的年金では老後の生活費を準備することができないと不安を抱えていることから、世代を問わず老後の生活費を備えてたいというニーズが高まっています。「平成30年度 生命保険に関する 全国実態調査 〈速報版〉」によると、今後増やしたていきたい保障として、「世帯主の老後の生活資金の準備」が27.1%(前回28.0%) と最も多く、次は「配偶者の老後の生活資金の準備」25.1%(前回25.3%)という結果でした。調査結果から世代を問わず老後の生活のために経済的準備をしておきたいというニーズが、高まっていることがわかります。

2:個人年金保険の5つの種類とは

個人年金保険と一口に言っても色々な種類があります。それぞれの種類のメリットとデメリットを紹介します。

2-1:生死に関わらず受け取る金額が決まっている確定年金

確定年金は被保険者の生死に関わらず決まった金額を受け取ることが可能です。確定年金は加入する時に受け取り期間が決まります。受け取り期間は5年、10年、15年のものが多く受け取り期間を確定することから確定年金と呼ばれています。確定年金の場合、被保険者が受け取り期間内に死亡しても、残された遺族は残り期間に対応する年金もしくは一時金を受け取ることが可能です。確定年金は年金の受け取り期間が決まっているため、終身年金に比べると保険料を安く抑えられます。変額年金や外貨建て個人年金と比べると、年金額が確定しているので、老後の資金計画が立てやすいでしょう。一方で被保険者の生死に関わらず年金を受け取ることができるため、有期年金に比べると保険料が割高になってしまいます。

2-2:死ぬまで年金を受け取ることができる終身年金

被保険者が死ぬまで年金を受け取れるのが終身保険です。もし受け取り期間開始後すぐに死亡すると年金を受け取ることできないため、元本割れしてしまう可能性が高いです。終身年金の中には掛け損になってしまわないように保証期間が付いているものも多く、それらは保証期間付き終身年金と言われています。保証期間付き終身年金なら保証期間中に被保険者が亡くなったとしても、遺族が年金もしくは一時金を受け取ることが可能です。終身年金は一生涯年金を受け取ることができるので、長生きすればするほどコストパフォーマンスがよくなります。一方で確定年金や有期年金に比べると保険料がかなり高額になってしまいます。

2-3:生きている間一定の期間年金を受け取ることができる有期年金

有期年金は確定年金と同じく一定期間年金を受け取ることができます。確定年金とは異なり有期年金の場合被保険者が死亡すると年金を受け取ることができません。また保証期間内だとしても被保険者の遺族に対して年金や一時金の支払いもありません。有期年金の場合、保証期間の途中で死亡してしまうと元本割れしてしまう恐れがあります。その一方で終身年金や確定年金に比べると保険料を安く抑えることが可能です。

2-4:運用によって受け取る年金額が変わる変額個人年金

変額個人年金は保険料の運用実績によって受け取る年金額が上下します。運用実績によっては元本割れしてしまうリスクがあります。元本割れのリスクを避けたい場合は、元本保証型の変額個人年金を選ぶといいでしょう。変額個人年金は確定年金や有期年金に比べると、運用実績によって年金金額が変動します。運用実績によっては元本割れしてしまうデメリットがあると同時に、運用実績がいい場合は年金額が増えるメリットがあります。年金額があらかじめ決まっている確定年金に比べると、変額年金は投資的要素が高い商品です。

2-5:為替相場の影響を受ける外貨建て個人年金

保険料の支払いや年金の受け取りを米ドルやユーロ、豪ドルなどで行うのが外貨建て個人年金です。年金受け取り時期の為替相場の影響を受けてしまうため、為替相場の状況によっては元本割れしてしまう恐れがあります。決まった年金額を確実に受け取りたいと考える人には、確定年金や有期年金の方が向いています。一方で円建ての保険に比べると利回りが高いものが多いので、支払った保険料の総額に対して年金額が増えるメリットがあります。

3:個人年金保険の選ぶための3つのステップ

実際に個人年金保険を選ぼうと思った時に、どの商品を選べばいいか迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。そこで自分に合った年金保険を選ぶために事前に決めておくべき項目と、選ぶ時の判断基準について解説します。

3-1:受け取り期間を決める

自分に合った個人年金保険を決める場合、まずは年金の受け取り期間を決めましょう。個人年金保険には、事前に決めた受け取り期間の間だけ年金を受け取ることができる有期型と一生涯年金を受け取ることができる終身型の2種類があります。有期型には確定年金と有期年金、終身型には終身年金があります。今後日本人の寿命は長くなる傾向が高いので一生涯年金を受け取ることができる終身型が安心です。しかしその分終身年金は他の年金保険に比べると、月々の保険料が高額なため日々の生活を圧迫してしまう恐れがあります。個人年金保険を途中で解約してしまった場合、解約返戻金が支払った保険料より少なくなってしまう場合があります。毎月の保険料の支払いが厳しく途中で解約してしまったら意味がありません。だからこそ保険料は毎月、無理なく支払える金額を合わせて考えた上で受け取り期間を決めるといいでしょう。

3-2:保険料の支払い方法を決める

年金の受け取り期間が決まったら保険料の支払い方法を決めましょう。保険料の支払い方法には月払いと年払い、一時払いなどのいくつか方法があります。年代別に支払い方法について解説します。

3-2-1:20代や30代の場合

月払いは毎月決まった金額を保険料として支払う方法です。20代や30代は子供の教育費や住宅購入の費用などまとまったお金が必要になってしまうので、月払いの方が家計に負担がなく老後の資金を準備できます。ただし途中で解約してしまった場合、支払った保険料よりも解約返戻金が少なくなってしまうケースが多いので、支払いに無理のない金額にしましょう。ボーナスを年金保険の保険料として支払う場合は、年払いもいいでしょう。年払いであれば、月払いより保険料を安く抑えることができます。

3-2-2:40代の場合

40代の場合20代や30代から加入する場合と比べて保険料の支払い期間が短くなってしまうため、同じ年金額を受け取りたい考えた場合、月々の負担が高くなってしまいます。そのため40代の場合は貯蓄など経済的に余裕があれば、保険料をまとめて支払うことも検討するといいでしょう。保険料の支払い回数が少なくなるほど、全体の保険料を安く抑えることが可能です。まとめて支払う方法には一時払いと全期前納払いの2つの方法があります。一時払いも全期前納も保険会社にまとめて保険料を支払います。全期前納は保険会社に保険金を全額預けて、そこから毎月の保険料を支払う方法です。そのため一時払いの方が全期前納より保険料の割引率が高いです。ただし生命保険料控除を受ける場合、一時払いの場合は控除が1年しか受けることができませんが、全期前納の場合は保険料の支払い期間中、毎年生命保険料控除を受けることができます。月払いか、まとめて支払うかは貯蓄の状況などによって決めるといいでしょう。

3-2-3:50代や60代の場合

50代や60代の場合は年金の受け取り期間まで、期間が短いため一時払いがいいでしょう。50代や60代であれば退職金も受け取っている方も多いので、退職金の運用先として年金保険を選ぶ場合は、据置期間を長く設けることで年金額を増やすことが可能です。

3-3:運用方法を決める

個人年金保険の運用方法には、ローリスク、ローリターンの定額型とハイリスク、ハイリターンの変額型の2種類があります。それぞれメリットとデメリットがあるためその部分を踏まえた上で決めましょう。

3-3-1:決まった年金額を確実に受け取りたいなら定額型

リスクを取りたくないと考える方なら定額型の個人年金保険を選択するといいでしょう。保険会社が契約者から預かった保険料を運用して得た利益を年金ん支払い原資に充てます。もし運用が上手くいって多くの利益を得たとしても、契約時に決まった年金額から増えることはありません。また運用が失敗して損失が出たとしても年金額が減ることがないので、元本割れのリスクもありません。将来の年金額が確定しているため老後の資金計画が立てやすいメリットがあります。一方で定額型はインフレリスクの備えることができないというデメリットがあります。年金の受け取り時期にインフレが起こってしまっても、年金額が変わらないのでインフレに対応することができません。このように決まった年金額を受け取ることができる定額型は、よりお金を安全に運用したい方向けだと言えます。

3-3-2:リスクが高くても年金額を増やしたいなら変額型

リスクをとってでも、受け取り年金額を増やしたいと考える方なら変額型の個人年金保険を選択するといいでしょう。変額型は払い込んだ保険料の運用先を自分で選択し、運用結果によって受け取る年金額が変わります。運用先は保険会社によって異なりますが、国内株式、海外株式、国内債券、海外債券などの運用先からリスクを考えて自分で選択します。運用結果によっては、少ない保険料で年金額を増やすことが可能です。その一方で運用が失敗し損失が出てしまった場合は元本割れの恐れがあります。

定額型は定期貯金に近く、変額型は投資信託に近い商品です。日本人は海外の方に比べると投資よりも貯蓄を好む傾向があるため、定額型の年金保険の方が種類を豊富に揃っています。

4:お得に個人年金保険に加入するために抑えておきたいこと

老後の資金準備のために個人年金保険に加入する時に、保険料を少しでも安く抑えるポイントを紹介します。

4-1:個人年金保険料控除を受けることで税金が戻ってくる

個人年金の保険料は所得控除の対象です。個人年金保険料控除とは、払込みした保険料の金額に応じて、決まった金額が控除されることで所得税や住民税が軽減されます。個人年金保険料控除は生命保険料控除の中の1つです。ただし個人年金保険料の全てが控除の対象にはなりません。個人年金保険料控除の対象のになる要件は下記の通りです。

  • 年金の受取人が契約者本人かその配偶者であること
  • 年金受取人が被保険者であること
  • 振込期間が10年以上あること
  • 年金の支払い開始が60歳以降で、かつ支払い期間が10年以上あること

これらの要件を満たしていない場合、個人年金保険料控除の対象外になるため注意して下さい。

4-2:保険料をまとめて支払うことで保険料を抑える

保険料を支払い回数が少なくなるほど、払込保険料の総額が少なくなります。そのため月払いよりも年払い、年払いよりも前期前納、そして一時払いの方が全体の保険料を安く抑えることが可能です。

4-3:据置期間を長めに設定することで年金額を増やす

据置期間とは保険料を払い込んだ後、年金の受け取り期間までの期間のことです。据置期間は延長することができます。据置期間中も保険料は保険会社によって運用されるため、保険料払込後すぐに年金を受け取るよりも据置期間を設けた方が受け取る年金額は増えます。据置期間は保険会社によっても異なりますが、5年、10年、15年と5年刻みで設定されているケースが多いです。年金受け取り開始時点で生活資金に余裕があるなら、据置期間を再設定するのもいいでしょう。

4-4:クレジットカード払いでポイントを貯める

今は保険料をクレジットカードで支払うことができます。ポイント還元率1%の場合、保険料を月々1万円なら1200円分、月々2万円なら2400円分のポイントを貯めることができます。保険料は何年も支払い続けるものだからこそ、クレジットカードを使って保険料を支払うといいでしょう。

5:まとめ

個人年金保険は老後の資金を準備する手段の一つです。個人年金保険を活用することで、老後の経済的リスクから自分自身や家族を守ることができます。個人年金の一言でいっても、色々なタイプが揃っているため、今の経済状況やライフスタイルに合わせて自分に最適な商品を選ぶといいでしょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket