個人年金保険のメリット・デメリット|老後資金を準備する

老後の資金を準備をどうしたらいいかわからない人も多いのではないでしょうか。そこで今回は個人年金保険を中心に老後の資金準備の方法について紹介します。
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老後の資金準備の方法としてまず思い浮かぶのが個人年金保険ではないでしょうか。しかし最近は個人年金保険だけでなく個人型確定拠出年金(iDeCo)や、少額投資非課税制度(NISA)などの方法があります。そこで今回はそれぞれの方法の特徴やメリット、デメリットなどについて詳しく紹介します。

1:個人年金保険とは

個人年金保険とは老後の経済的リスクに備えて、個人が加入する生命保険の一種です。老後の生活資金には国民年金や厚生年金などの公的年金が存在します。しかし「平成30年度 生命保険に関する 全国実態調査 〈速報版〉」によると老後の夫婦の生活費として公的年金(国民年金、厚生年金)以外で必要な資金額は、60歳〜64歳で月額20.6万円(前年度は20.1万円)、65歳以降では月額15.9万円(前回16.0 万円)と公的年金だけでは不足してしまい経済的リスクが存在すること予測できます。そのリスクに対して事前に備えるための手段の一つが個人年金保険です。

1-1:個人年金保険と他の保険との違い

個人年金保険は生命保険と混同されてしまいがちですが、実は違いあります。そこで次は年金保険と他の保険との違いについて紹介します。

1-1-1:生命保険との違い

保険は人生における万が一の時の経済的リスクに備えるための手段です。生命保険は被保険者が死亡してしまった時の経済的リスクに備えることができる保険です。被保険者が世帯主の場合被保険者が死亡してしまうと、残された家族が経済的に今まで通りの生活が送れなくなってしまう可能性があります。このように生命保険には残された遺族の経済的リスクに備える役割があります。それ以外にも独身者の場合生命保険を使うことで、自分が亡くなった時にかかるお葬式代などの費用を準備することが可能です。このように生命保険と年金保険では備えるべき経済的リスクが異なります。

1-1-2:医療保険やがん保険との違い

医療保険やがん保険は、被保険者が病気やガンになってしまった時の治療費や入院費などを準備することが可能です。病気で入院してしまった場合、治療費や入院費だけでなく、入院中の生活費などを準備する必要があります。ガンの場合は退院後も抗がん剤治療のため通院が必要になり、ガンになる前と同じように仕事ができなくなってしまうことで、収入が減少してしまう経済的リスクも存在します。入院期間や治療期間が長引くば長引くほど、預貯金では足りなくなってしまう恐れがあります。このように医療保険やがん保険は病気やガンになった場合の経済的リスクに備えることが可能です。年齢を重ねるほど病気やガンのリスクが高くなるため、個人年金保険と合わせて老後の生活を守るために必要な保険だと言えます。

1-1-3:介護保険との違い

介護保険が被保険者が介護に必要になってしまった時の経済的リスクに備える保険です。介護保険は一時金を受け取るタイプと月々決まった金額を受け取るタイプがあります。商品によっては一時金を受け取った後は、月々決まった金額を受け取ることができるものもあります。介護が必要になった場合、自宅をバリアフリーにしたり、介護用にベッドを購入したいりとまとまったお金が必要になるケースが多く、年金だけで生活している場合、数十万から数百万単位のまとまった支出は生活に大きな負担を与えてします恐れがあります。このような理由から介護保険では一時金としてまとまったお金を受け取ることができるようになっています。介護が始まると、介護サービスを受けるために毎月の介護費用が必要です。公的介護保険制度によって支払う金額は所得に応じて1割から3割と費用負担が軽減されています。しかし老後年金だけで生活している場合は、毎月の介護費用が生活を圧迫してしまう恐れがあります。これらの介護による経済的リスクに備えることができるのが介護保険で、個人年金保険と合わせて老後の生活を守るための保険だと言えます。

1-2:個人年金保険の種類別メリットとデメリット

個人年金保険には受け取り期間や払込みした保険料の運用方法によって5つの種類があります。次はそれぞれの種類の特徴やメリット、デメリットについて紹介します。

1-2-1:契約時に年金額が確定している確定年金

確定年金は契約時に受け取ることでできる年金額や年金の受け取り方が決定します。確定年金の場合は、契約時に年金の受け取り期間を決まっているので、受け取り期間が過ぎてしまうと年金を受け取ることができません。そのため一生涯年金を受け取ることができる終身年金に比べると保険料を安く抑えることが可能です。もし受け取り期間内に被保険者が死亡してしまった場合は、遺族が残りの年金やもしくは一時金を受け取ることができます。そのため被保険者し受け取り期間内であっても死亡すると、年金を受け取ることができない有期年金に比べると保険料が高くなります。

保険会社は契約者から預かった保険料を運用して、年金を支払います。確定年金の場合は契約時に年金額が決まっているため、運用が上手くいって利益が出ても、反対に失敗して損失が出たとしても年金額が変動することがありません。運用実績によって年金額が変動する変額個人年金に比べると元本割れのリスクがないローリスク、ローリターンな保険です。その一方で受け取る年金額が決まっているためインフレリスクに対応できないデメリットがあります。預貯金の場合は銀行にお金を預けますが、確定年金は銀行ではなく保険会社にお金を預けるとイメージするとわかりやすいでしょう。

1-2-2:一生涯年金を受け取ることができる終身年金

終身年金は生きている間一生涯年金を受け取ることができます。被保険者が何歳まで生きるかは誰にもわかりません。保険会社からすると確定年金や有期年金は年金の支払い期間が決まっていますが、終身保険は年金の受け取り支払い期間が決まってないため、確定年金や有期年金に比べると終身年金は保険料がかなり割高に設定されています。終身保険の場合、長生きすればするほどコストパフォーマンスがよくなりますが、早く亡くなってしまうと年金の支払いが終わってしまうため元本割れのリスクがあります。そのため終身保険の中には一定の保証期間内に被保険者が亡くなった場合、残された遺族が一時金や年金を受け取ることができる保証期間付きの終身年金があります。

1-2-3:保険料を安く抑えることができる有期年金

有期年金は確定年金と同じく、契約時点で受け取り年金額と受け取り期間が決まっています。だだし有期年金は受け取り期間内に被保険者が死亡した時点で年金の支払いが終わり、遺族に対して残りの年金やもしくは一時金の支払いがありません。そのため確定年金に比べると同じ年金を受け取ろうと思った場合、保険料を安く抑えることが可能です。

1-2-4:投資的要素が高い変額個人年金

変額個人年金は投資信託に似ています。確定年金の場合保険料の運用先は保険会社が決めますが、変額個人年金の場合は契約者が運用先を自分で決めます。複数の運用先から選ぶことができるためリスクとリターンのバランスを考えながら選ぶことが可能です。変額個人年金は自分で保険料の運用先を決めるため運用実績によっては年金額が増えることもあれば、減ってしまうことがあります。このような理由から受け取ることができる年金額が決まっていません。場合によっては元本割れをしてしまうデメリットがあると同時に、支払った保険料に対して高い利率で年金を受け取ることができるメリットがあります。変額年金保険は投資信託に似ているため、リスクを取ってでも年金額を増やしたいと思う人向けです。

1-2-5:為替相場の影響を受ける外貨建て個人年金

保険料の支払いや年金の受け取りが日本円以外の行うのが外貨建て個人年金です。現在保険が会社で販売されている外貨建て年金保険は米ドルやユーロ、豪ドルが中心です。為替相場によっては保険料を安く抑えることができる反面、元本割れしてしまう恐れがあります。円建ての年金保険に比べると予定利率が高いものが多いため、同じ年金額を円建て個人年金保険で準備するよりも保険料を安く抑えることができます。保険料を支払うタイミングや年金の受け取り期間のタイミングを見計らうことで、元本割れのリスクを抑えることが可能なため、為替相場に対する一定の知識が必要です。全く為替相場や金融知識がない方の場合、自分がいくら年金を受け取ることができるなどわかりづらいでしょう。

2:老後の生活費を個人年金保険で準備するメリット

老後の生活費を準備する方法は個人年金保険以外にも預貯金や、個人型確定拠出年金(iDeCo)などいくつか存在します。そこで次は個人年金保険で老後資金を準備するメリットを紹介します。

2-1:節税できる

個人年金保険料の保険料は生命保険料控除の対象になるため、個人年金保険で老後の資金を準備する場合、所得税や住民税を減額することが可能です。会社員の場合は勤務先で年末調整をすることで税金が戻っていきます。自営業者の場合は確定申告の時に申請手続きを行いましょう。ただし個人年金保険料控除を受ける要件があるため加入時に、事前に確認するようにしましょう。個人年金保険料控除の要件は下記の通りです。

  • 年金の受取人が契約者本人かその配偶者であること
  • 年金受取人が被保険者であること
  • 振込期間が10年以上あること
  • 年金の支払い開始が60歳以降で、かつ支払い期間が10年以上あること

また個人型確定拠出年金(iDeCo)も掛け金は非課税の扱いになるため、節税目的なら両方を活用するのもいいでしょう。

2-2:銀行に預けるより金利が高い

年金保険の予定利率は銀行の金利よりも高い傾向があるため、長期間使う予定のないお金の場合は銀行で預金するよりも、個人年金保険に加入する方が将来的にお金を増やしていくことが可能です。

2-3:老後の資金を準備しやすい

個人年金保険料は毎月に保険料を自動引き落としにして支払うため、貯金が苦手に人にとっては強制的に貯蓄をすることができます。また定額型の個人年金保険を利用すれば、受け取る年金額が確定しているので老後資金準備がしやすいです。必ず必要な資金は公的年金や定額型の個人年金で準備し、資金に余裕があれば投資信託などを利用して老後の資金を準備するといいでしょう。

2-4:持病があっても加入できる商品が多い

生命保険や医療保険の契約時に持病が原因で加入できなかった経験がある人も多いのではないでしょうか。個人年金保険の場合他の保険に比べると持病があっても加入できる保険が多く揃っていため、もし持病が理由で保険加入を諦めている方は一度専門家に相談してみるといいでしょう。

3:老後の生活費を個人年金保険で準備するデメリット

個人年金保険で老後資金を準備する場合のデメリットについて紹介します。

3-1:途中解約すると元本割れしてしまう

個人年金保険の場合途中で解約してしまうと、解約返戻金が払い込んだ保険料よりも少ないいケースが多いです。保険料を高めに設定してしまうと、途中で払込みができなくなってしまい途中で解約しなければならなくなります。このような事態にならないためにも、ライフプランを見据えた上で無理のない範囲で保険料を決めることが大切です。

3-2:インフレに弱い

定額型の個人年金保険の場合、契約時点で受け取ることができる年金額が決まっています。そのため年金の受け取り開始時期に物価の上昇でインフレが起こった場合、実質的に受け取る金額が目減りしてしまうことになります。このような事態に備えるためにも定額型の個人年金保険だけでなく、変額型の個人年金保険や、投資信託などと組み合わせるといいでしょう。

3-3:固定金利の場合不利に働くことがある

定額型の個人年金保険の場合は契約時に受け取る金額が決まっているため、将来的に金利が上がったとしてもその恩恵を受けることができません。

3-4:生命保険会社が破綻してしまうと年金額が減額する可能性がある

生命保険会社が破綻してしまった場合、生命保険契約者保護機構によって一定の範囲までは保護されますが、契約条件が変更することによって年金額が減額してしまう恐れがあります。

3-5:早く死んでしまうと受け取る保険金額が少なくなる

終身年金など保証期間がない個人年金保険の場合は、早く亡くなってしまうと受け取る年金額は少なくなってしまうため元本割れしてしまうデメリットがあります。

4:個人保険以外の老後資金の準備方法

個人年金保険以外の方法でも定期預金をはじめとして色々な方法があります。そこで次は老後資金を準備する方法や特徴について一緒に見ていきましょう。

4-1:インフレリスクに弱い定期預金

お金を貯める方法としてまず思い浮かぶのが定期預金です。貯金するのが苦手な人なら、給与口座から毎月自動的に定期預金口座へ積み立てていくようにすれば、無理なく貯金することができます。定期預金であれば元本割れのリスクもなく、万が一銀行が倒産してしまっても一定金額まで保護されるため安心です。しかしながら低金利が続いているため銀行に長期間預けてもほとんど増えることがありません。定期預金の場合は元本割れのリスクはほとんどありません。しかし物価が上昇しインフレによって実質的に目減りしてしまう恐れあるため、インフレリスクに対応することができません。まとまったお金が必要にな時にすぐに引き出すことができる定期預金は必要ですが、老後資金を全て定期預金で準備してしまうのはリスクが高いです。そのため個人年金保険や、次に紹介する個人型確定拠出年金(iDeCo)や投資信託(NISA)など活用するといいでしょう。

4-2:個人で公的年金以外に年金を準備できる個人型確定拠出年金(iDeCo)

個人型確定拠出年金(iDeCo)は公的年金に加えて、自分で毎月年金を積み立てて運用できる制度です。運用先や毎月の掛け金を自分で選ぶことができます。運用先は運用管理機関である証券会社や銀行、保険会社などから運用する商品を選ぶことが可能です。運用先として証券会社などを選択することになりますが、確定拠出用の商品の場合は投資信託を購入する場合に必要な購入費用がなく、毎月に管理費用も安く抑えられています。毎月の掛け金は5,000円から1,000円単位で決めることできます。毎月の掛け金の上限は自営業の場合は毎月68,000円。企業型確定拠出年金がない企業に勤務している会社員や専業主婦の場合は、毎月23,000円が掛け金の上限です。ただし確定拠出年金は老後の資金を準備することが目的のため、原則60歳まではお金を受け取ることができません。また運用結果によって年金額が変動するため、場合によっては予想よりも受け取る金額が少なくなってしまうデメリットがあります。

一方で個人型確定拠出年金(iDeCo)の一番のメリットは、毎月の掛け金が所得税控除の対象になることです。また個人で投資信託などの金融商品を使って得た利益には税金がかかりますが、個人型確定拠出年金(iDeCo)の運用で得た利益は非課税の扱いです。また受け取り方法は一時金として受け取るか、年金として受け取るかどちらか選ぶことができますが、どちらの方法を選んだとしても控除の対象になります。このようには個人型確定拠出年金(iDeCo)には税金面での手厚い優遇措置があります。

4-3:少額投資非課税制度(NISA)

投資信託や株で得た利益に対して20%の税金がかかります。しかし少額投資非課税制度(NISA)を利用することで、株や投資信託で得た利益に対して非課税扱いになるため税金がかかりません。ただし少額投資非課税制度(NISA)を利用して投資をするには条件があります。少額投資非課税制度(NISA)を利用できる条件は下記の通りです。

  • 日本国内に在住する20歳以上の成人
    ただしジュニアNISA制度を利用すれば20歳以下でもNISAを利用した投資が可能
  • 金融機関で少額投資非課税制度(NISA)専用口座を開設する
    原則1人つき1金融機関1口までに限定されます
  • 1年間に投資できる金額が年間140万円まで
  • 投資信託、株、ETF、REITなどの取引に限る

少額投資非課税制度(NISA)を利用して投資する場合は、税金面で優遇措置があるため、利用できる商品が限られています。また元本割れしてしまう恐れや、どのくらい老後お金を準備できるかはわからないといるデメリットがあります。一方で運用が上手くいけば少額でもしっかり老後資金を準備することが可能です。

5:まとめ

老後の資金準備の方法は個人年金保険以外にの色々な方法があります。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあります。ぜひそれぞれに特徴やメリット、デメリットを踏まえた上で自分にとって最適な方法を組み合わせて老後の経済的リスクに備えるといいでしょう。

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