個人年金保険料控除とは|確定申告で税金を抑える条件・要件

年末調整や確定申告で個人年金保険料控除の申請手続きをすれば、所得税や住民税を減らすことができます。個人年金保険料控除は申請しなければ、控除を受けることができません。個人年金保険料控除の対象となる契約には条件があります。そこで今回は個人年金保険料控除の基本から旧制度と新制度の違いなどをまとめて紹介します。
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個人年金保険に加入しているなら、必ず確認しておきたいのが個人年金保険料控除です。毎年個人年金保険料控除の申請手続きをすることで、所得税や住民税を減らすことができます。今回は個人年金保険料控除の基礎知識や計算方法についてまとめて紹介します。

1.生命保険に加入しているなら知っておきたい生命保険料控除とは

個人年金保険を含めて生命保険や医療保険に加入しているなら、しっかり確認しておきたいのが生命保険料控除です。会社員の方であれば年末調整、自営業者なら確定申告の時に申告することで所得税や住民税が減額されます。生命保険料控除は申告制のため申告しなければ控除を受けることができません。そこでまずは生命保険料控除の仕組みや区分、旧制度と新制度の違いなど生命保険料控除の基礎知識を紹介します。

1-1.生命保険料控除の仕組み

所得税を計算する場合、年間の収入から所得控除額を引きます。次に所得控除額を引いたもの対して所得税率をかけて計算します。最後に税額控除額があれば、税額控除額を引いたものが所得税の課税額です。生命保険料控除は所得控除の中の1つです。生命保険料控除の控除額は所得税で最大12万円、住民税で最大7万円の控除を受けることができます。所得税や住民税は収入から所得控除を引いたものに対して、一定の税率で課される税金です。つまり収入から引くことができる控除額が増えるほど、税金が減額されます。

契約者が保険料を負担していることが前提のため、契約者ごとに控除を受けることができます。もし両親が幼い時に加入した生命保険や医療保険の保険料を、成人を機にあなたが支払うようになったとしても、契約者が両親の場合は控除を受けるのは両親になってしまうため、あなたが控除を受けることができません。このような場合は契約者の変更手続きを速やかに行いましょう。契約者の変更手続きは契約者からも申し出でなければ受付けてもらえないので注意してください。

1-2.生命保険料控除の区分と上限額

生命保険料控除には3つの区分があります。各区分は下記の通りです。

  • 一般生命保険料控除
  • 介護医療保険料控除
  • 個人年金保険料控除

一般生命保険料控除は、生存と死亡に関して保険金や給付金が支払われる生命保険、養老保険、収入保障保険などが対象です。介護医療保険料控除は、入院や通院した場合に保険金や給付金し支払われる介護保険、医療保険、がん保険などが対象です。個人年金保険料控除は、税制適格特約が付帯された個人年金保険が対象です。そのため税制適格特約が付帯されていない個人年金保険は、一般生命保険料控除の対象になってしまいます。

1-3.旧制度と新制度の違い

平成24年1月1日から新制度は始まったことにより、生命保険料控除には旧制度と新制度の2種類があります。旧制度か新制度を見分ける方法は簡単です。契約日が平成24年1月1日以降なら新制度の対象です。もしくは契約日が平成24年1月1日よりも前であっても、平成24年1月1日以降に契約の更新や転換した場合、特約を付加した場合も新制度の対象です。ただし保険料が無料の特約やケガのみを対象とする特約を付加した場合は旧制度の扱いです。旧制度では一般保険料控除と個人年金保険料の2つの区分のみです。一般生命保険料控除は所得税が5万円、住民税が3.5万円、個人年金保険料控除は所得税が5万円、住民税が3.5万円です。旧制度控除額の上限は、所得税が10万円、住民税が7万円です。

2.個人年金保険料の要件や計算方法

個人年金保険料控除は生命保険料控除の一つです。個人年金保険料控除を利用することで、毎年支払う所得税と住民税を軽減することが可能です。そこで次は個人年金保険料仕組みや、計算方法について紹介します。

2-1.個人年金保険料控除の仕組み

個人年金保険料控除は毎年支払う保険料の全部もしくは一部を所得から引くことによって、所得税や住民税を減らすことができます。個人年金保険料控除を受けるためには申告しなければいけません。会社員の場合は年末調整の時に申告することで、払いすぎた分の所得税と住民税が還付されます。自営業の場合は確定申告の時に申告するようにしましょう。控除は契約者ごとにおこなわれます。そのためご夫婦によっては妻の保険料を夫が負担していたとしても、契約者が妻の場合は妻の方が控除の対象です。ただし妻の年収が103万円以下の場合は、配偶者控除の対象になるため夫の方で控除の対象にすることができます。

2-2.個人年金保険料控除の要件

国内で販売されている全ての個人年金保険が個人年金保険料控除の対象になる訳ではありません。控除の対象になるには4つの要件を満たした上で、個人年金保険料税制適格特約をつけなければいけません。これらの要件を満たしていない場合は個人年金保険料の控除の対象から外れ、一般生命保険料控除の対象になってしまいます。そこで次は個人年金保険料控除の受けるための4つの要件と個人年金保険料税制適格特約について紹介します。

2-2-1.個人年金保険料控除の受けるための4つの要件

個人年金保険に加入して個人年金保険料控除を受ける場合、まずは下記の4つの要件を満たす必要があります。

  • 年金の受取人が契約者もしくはその配偶者
  • 年金受取人と被保険者が同一人物
  • 保険料の払込み期間が10年以上
  • 年金の種類が確定年金か有期年金で、年金の受取り開始が60歳以降でかつ年金の受取り期間が10年以上

個人年金保険料控除を受ける場合は。これらの4つの要件を全て満たす必要があります。そのため保険料を一括で支払ったり、一時払い個人年金保険は保険料の払込み期間が10年以上という要件を満たさないため対象外です。年金の種類も確定年金や有期年金であることが要件に含まれているので、変額個人年金保険の場合は、個人年金保険料控除ではなく、一般生命保険控除の対象になってしまいます。個人年金保険の保険料の払込み期間や年金の受取り期間などは任意で決めることができるので、個人年金保険料控除を受けたいと思う場合は、加入時に要件を満たしているか確認するようにしましょう。

2-2-2.個人年金保険料税制適格特約

個人年金保険料控除は4つの要件を満たし、個人年金保険料税制適格特約を付加することで個人年金保険料控除の対象となるため、個人年金保険料税制適格特約を付加していない契約は一般生命保険料控除の対象です。個人年金保険料税制適格特約は無料の特約のため付加することで保険料は発生しません。契約の途中で付加したり、特約だけを解約することができないため、個人年金保険料控除を受けたい場合は契約時に付加しましょう。個人年金保険料税制適格特約を付加することで個人年金保険料控除の要件を満たさなくなってしまう契約変更や、年金額を減額した場合に返戻金が発生したとしてもすぐに受け取ることができないなど制限を受けます。個人年金保険料税制適格特約付加した契約の場合は、契約の途中で契約変更をする時に制限されてしまいます。すでに加入している個人年金保険で個人年金保険料控除枠を全て使い切っている場合、それ以降に加入する個人年金保険に個人年金保険料税制適格特約を付加する必要がありません。追加で個人年金保険に加入する場合は、加入時の控除枠の確認した上で個人年金保険料税制適格特約付加するかどうか検討するといいでしょう。

2-3.旧制度と新制度の違い

生命保険料控除は平成24年1月1日から新制度が始まりました。旧制度と新制度では個人年金保険料控除額が異なります。そのためまずは加入している契約が新制度の対象の契約のみか、もしくは旧制度の対象の契約のみか確認しましょう。旧制度か新制度対象の契約かどうかは、生命保険会社から送付される生命保険料控除証明書で確認することができます。もし旧制度対象の契約と新制度対象の契約が混在している場合は、控除額が大きくなる方を選ぶといいでしょう。

2-4.個人年金保険料控除の計算方法

個人年金保険料の控除の計算式は年間の払込み保険料の総額によって異なります。また旧制度と新制度によっても計算式が異なるため、控除額を計算する時はまずは、旧制度もしくは新制度のどちらの対象になるかを確認しましょう。

2-4-1.所得税の計算方法

年間の払込み保険料の総額によって個人年金保険料控除額の計算式が異なります。旧制度と新制度での計算式は下記の通りです。

旧制度の場合

  • 年間保険料払込金額が25,000円以下

払込保険料の全額が控除

  • 年間保険料払込金額が25,000円超、50,000円以下

(払込保険料払込保険料×1/2)+12,500円

  • 年間保険料払込金額が50,000円超、100,000円以下

(払込保険料払込保険料×1/4)+25,000円

  • 年間保険料払込金額が100,000円超

一律50,000円

 

新制度の場合

  • 年間保険料払込金額が20,000円以下

払込保険料の全額が控除

  • 年間保険料払込金額が20,000円超、40,000円以下

(払込保険料払込保険料×1/2)+10,000円

  • 年間保険料払込金額が40,000円超、800,000円以下

(払込保険料払込保険料×1/4)+20,000円

  • 年間保険料払込金額が80,000円超

一律40,000円

旧制度と新制度それぞれの計算式はこのようになります。旧制度と新制度では計算式が異なるので、両方に該当する契約がある場合は、旧制度、新制度どちらかの制度で申告するか、もしくは旧制度と新制度の合算して申請してください。ただし合算しても控除の適用限度額は新制度と同じで最大でも40,000円までです。そのため旧制度、新制度の契約が混在している場合は、両方の計算式それぞれ計算した上で控除額が大きい方を選択して申告するといいでしょう。

2-4-2:住民税の計算方法

住民税の場合も年間の保険料の払込金額によって計算式が異なります。旧制度と新制度の控除額の計算式は下記の通りです。

旧制度の場合

  • 年間保険料払込金額が15,000円以下

払込保険料の全額が控除

  • 年間保険料払込金額が15,000円超、40,000円以下

(払込保険料払込保険料×1/2)+7,500円

  • 年間保険料払込金額が40,000円超、70,000円以下

(払込保険料払込保険料×1/4)+17,500円

  • 年間保険料払込金額が100,000円超

一律35,000円

新制度の場合

  • 年間保険料払込金額が12,000円以下

払込保険料の全額が控除

  • 年間保険料払込金額が12,000円超、32,000円以下

(払込保険料払込保険料×1/2)+6,000円

  • 年間保険料払込金額が32,000円超、56,000円以下

(払込保険料払込保険料×1/4)+14,000円

  • 年間保険料払込金額が56,000円超

一律28,000円

住民税の計算式はこのようになります。旧制度と新制度に該当する契約が混在している場合は所得税と同じく両方の制度で計算した上で、控除額が大きい方を選択するといいでしょう。

3.個人年金保険料控除の手続きの方法

個人年金保険料控除は申請手続きを行うことによって、控除受けることでき、所得税と住民税を軽減することできます。そのため毎年必ず申請手続きをしなければ控除を受けることができないので、手続きが漏れてしまうと個人年金保険の節税の恩恵を受けることができません。節税できる額は小さいかもしれませんが、個人年金保険は10年以上の長い期間支払うことになるため、結果的に節税額が大きくなります。そこで次は個人年金保険料控除の手続きの仕方や注意したいことを紹介します。

3-1.会社員なら年末調整で手続き

会社員の場合は10月ごろに生命保険会社から送付される生命保険料控除証明書を年末調整の時に会社に提出します、この時に会社から渡される給与所得者の保険料控除申請書を記入して一緒に提出すれば手続き完了です。万が一提出し忘れてしまった場合は、翌年に確定申告することで払いすぎた所得税が戻ってきます。年末調整で手続きを忘れてしまい還付申告をする場合は、翌年の1月1日から受付てくれるのでなるべく早めに手続きしてしまいましょう。この時に必要な書類は、確定申告書A第一表・第二表、源泉徴収票、生命保険料控除証明書です。確定申告書A第一表・第二表は税務署か、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。必要な書類を準備して税務署へ提出しすれば手続き終了です。還付金は申請書類を提出後おおよそ1ヶ月から2ヶ月程度で指定口座へ振り込まれます。所得税の手続きをすれば別途住民税の手続きは必要ありません。

3-2.自営業者なら確定申告で手続き

自営業者の場合は確定申告の時に生命保険料控除の申請手続きを行います。確定申告は毎年1月1日から12月31日までに得た全ての所得と、所得に対して計算した所得税を計算して申告期限内に税務署へ申告手続きを行うことです。個人年金保険料控除の対象になるものがあれば一緒に申告することで、控除を受けることが可能です。自営業の方は確定申告の時に忘れずに個人年金保険料控除の手続きを行うようにしましょう。会社員の方の中には確定申告は必要ないと思われている方も多いかもしれません。しかし年末調整で生命保険控除の手続きが漏れていた場合は確定申告をすることで、支払いすぎた税金が還付されるので漏れがある場合はこの時に忘れずに手続きするといいでしょう。

3-3.手続き時に注意したいこと

控除の申請を行う時に必ず必要になる書類が、生命保険料控除証明書です。毎年10月から11月くらいに生命保険会社から封書もしくは、ハガキで送付されます。控除の申請をする場合、申請方法にかかわらず生命保険料控除証明書は原本を提出する必要があります。万が一紛失してしまったり、届かないような場合は生命保険会社へ連絡し再送付の手続きをしてください。途中で解約した場合でも支払った分の保険料は対象になるため忘れずに手続きをしましょう。

4.まとめ

毎年支払っている個人年金保険料は、年末調整や確定申告の手続きをすることで所得税や住民税を軽減することができます。個人年金保険料控除は申告しなければ控除を受けることができません。すでに加入している個人年金保険の保険料だけでなく、これから加入する個人年金保険の保険料も個人年金保険料控除の対象です。個人年金保険料控除は毎年必ず申告する必要があるので、忘れずに手続きを行って下さい。

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