個人年金保険と個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)

個人型確定拠出年金iDeCoは老後資金を準備する方法の一つです。老後資金の準備と言えば多くの人が個人年金保険を思い浮かべるかもしれません。個人年金保険でも老後の資金を準備できます。しかしiDeCoも活用することで、よりしっかりと老後資金を準備できます。そこで今回はiDeCoについて紹介します。
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個人年金保険以外にも老後資金を準備する方法には、個人型確定拠出年金iDeCoやNISAがあります。目的は同じですが、それぞれ仕組みや特徴が異なります。今回は個人年金保険とiDeCoの違いや、iDeCoに加入する時に注意したいことを紹介します。

1.老後の資金を準備する個人年金保険とiDeCo(イデコ)の違い

老後の資金を準備する方法には個人年金保険以外にも、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)やNISAなどを使った方法があります。老後の資金は長い期間を使って準備するものです。そのため無理のない範囲で長く続けられる方法を選ぶことが大切です。そこで今回は個人年金と個人型確定拠出型年金iDeCo(イデコ)との違いを紹介します。

1-1.加入資格や加入する方法

個人年金保険が生命保険会社を通じて誰でも加入することができます。一方で個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)には、加入資格が定めらていて限られた人しか利用できませんでした。しかし2017年1月法改正により20歳から60歳までの成人であれば、任意で加入することができるようになり、加入対象者の範囲が広がりました。ただし国民年金保険料の免除を受けている人や農業者年金に加入している人は加入資格がありません。また加入資格によって掛け金の上限が決まっています。そのため加入を検討する場合は、まず加入資格を確認する必要があります。

1-2.掛け金の上限や掛け金の支払い方法

1-2-1.掛け金の上限や平均金額

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は加入資格によって掛け金の上限が決まっています。加入資格ごとの掛け金の上限は下記の通りです。

自営業者

月額: 6万8000円 年額:81万6000円

専業主婦

月額: 2万3000円 年額: 27万6000円

公務員

月額: 1万2000円 年額:14万4000円

会社員(企業年金がない場合)

月額: 2万3000円 年額: 27万6000円

会社員(企業型確定拠出年金のみに加入している場合)

月額: 2万円 年額:24万円

会社員(確定給付企業年金のみに加入している場合または、定給付企業年金と企業型確定拠出年金の両方に加入している場合)

月額:1万2000円 年額:14万4000円

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)では、公的年金が国民年金しかない自営業者の掛け金の上限を高く設定しています。それによりiDeCo(イデコ)を利用することで、自営業者が老後資金が多めに準備できるような仕組みになっています。会社員の場合は企業年金などの加入状況によって掛け金の上限金額が異なります。もしiDeCo(イデコ)の加入を検討する場合は、事前に勤務先(総務部や人事部)へ確認するようにしましょう。掛け金の上限は加入資格によって決まっていますが、毎月の掛け金は5000円から1000円刻みで設定することが可能です。

ちなみに野村総合研究所の「iDeCoに関するアンケート調査結果」によると、掛け金の平均金額は公務員・会社員が平均して月額1万円、自営業者は月額1.5万円でした。このアンケート調査からもわかるように、初めてiDeCoを利用する場合は1万円前後からスタートして、余裕があれば徐々に掛け金を増やしていくといいでしょう。

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は加入資格ごとに掛け金の上限が設けられていますが、個人年金保険には保険料の上限は特に設定されていません。個人で加入できる個人年金保険の数も決まっていません。

1-2-1.掛け金の支払い方法

会社員の場合は勤務先の人事部などの担当部署に申し出することで、掛け金を給料天引き支払うことができます。自営業者や給料から天引きをしない場合は、個人口座から自動引き落としによって掛け金を支払います。給料天引きの場合は会社が年末調整をしますが、個人口座からの引き落としをする場合は、年末に送付される小規模共済等掛金払込証明書を年末調整の時に他の書類と一緒に会社へ提出しなければいけません。

個人年金の場合は個人と生命保険会社が契約するため、保険料を給料天引きにして支払うことができません。また控除を受ける場合は必要書類を準備して年末調整の時に手続きする必要があります。

自営業者の場合はiDeCo(イデコ)も個人年金の場合も、確定申告の時に控除の申請が必要です。

1-3.税制上の違い

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)の掛け金は全額所得税控除の対象です。会社員の場合は年末調整で、自営業の場合は確定申告で控除の申告手続きをすることで、控除を受けることができます。一方個人年金保険料も同じく個人年金保険料控除によって控除を受けることができます。個人年金保険料控除の上限は所得税40,000円で、住民税で28,000円です。

通常金融商品の場合、積立金の運用益に対して20.315%の税金がかかりますが、個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)の積立金の運用益は非課税です。

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)の給付金を受け取る場合、年金として受取る場合は公的年金等控除の対象になり、一時金として受け取る場合は退職所得控除の対象です。一方個人年金保険の場合は保険料の支払いをした人と受取人が同じ場合は所得税、異なる場合は贈与税と所得税の対象になってしまいます。

1-4.年金の受け取り方法

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)も個人年金保険も年金の受け取り方を一括で受け取る一時金か、分割で受け取る年金として受け取るか、もしくは一部を一時金として受け取り残りを年金として受け取ることが可能です。iiDeCo(イデコ)の場合は年金として受け取っても、一時金として受け取っても所得控除の対象です。ただし年金として受け取る場合は、公的年金等控除の対象となります。公的年金等控除の控除枠は、65歳未満場合公的年金などを含めた年金収入が年間70万円以下であれば全額非課税。65歳以上の場合は年間120万円以下であれば全額非課税です。また一時金の場合は退職所得控除制度の対象で控除額は勤続年数20年以下なら40万円×勤続年数、20年超なら800万円+70万円×(勤続年数-20年)で控除額を計算します。このように控除の上限が決まっているため、受け取り時に注意が必要です。

個人年金保険の場合も同じように受け取り方によって税金に大きく差が出てしまいます。iDeCo(イデコ)も個人年金保険も、できるだけお得に受け取りたいと考えるなら専門家に相談するといいでしょう。

2.iDeCo(イデコ)の仕組みや手続きの流れ

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は老後資金を準備するために制度です。そのため一般的な投資商品や個人年金保険とは違う仕組みや特徴があります。そこで次はiDeCo(イデコ)の仕組みや手続きの流れを中心に詳しく解説します。

2-1.iDeCo(イデコ)の仕組み

長期化してしまう老後に備えて資金を準備することができるのが、もう一つの年金と言われている個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)です。そのためiDeCo(イデコ)は老後資金の準備しやすい仕組みになっています。iDeCo(イデコ)は自分で育てる年金と言われ、毎月の掛け金や運用先を自分で決めることができます。また運用の途中で資産の運用方法を変更すること(スイッチング)も可能です。原則60歳まで運用し、積立金と運用益は給付金として受け取ります。給付金は受け取り方法や、60歳以降なら年金の受け取り開始の時期を自分で決めることができます。このような理由から国民年金などの公的年金と違い、iDeCo(イデコ)は自分で育てる年金だと言われています。

2-2.iDeCo(イデコ)の手続きの流れ

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)に加入する場合、iDeCo(イデコ)の加入資格があるか確認しましょう。ご自分の加入資格を確認し、掛け金を決めます。加入資格によって掛け金の上限が決まっているのでその範囲内で設定します。掛け金は年に1度だけ変更することができるので、経済状況に合わせて毎年見直すようにするといいでしょう。掛け金が決まれば、約160社の金融機関(運営管理機関)の中から加入したい金融機関を1社選びます。金融機関によって運用商品やサービスが異なるため、何社か比較検討するといいでしょう。金融機関が決まれば、取り扱い商品の中から運用商品を選びます。運用商品は大きく分けると定期預金や保険商品などの元本確保型商品と、価格変動型の投資信託の2種類があります。運用商品の仕組みや特徴は金融機関の担当者から説明を受けるといいでしょう。運用商品を決めたら、金融機関(運営管理機関)に必要な書類を提出して手続き完了です。ただし掛け金を給与天引きにする場合は別途会社に必要な書類を提出する必要があります。

2-3.iDeCo(イデコ)の運用商品の選び方

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は自分で運用商品を選ぶ、自分で育てる年金です。運用商品は大きく分けると元本確保型商品と、価格変動型の投資信託の2種類があります。運用商品にはそれぞれメリットとデメリットがあります。そこで次は運用商品ごとの特徴やメリット、デメリットについて紹介します。

2-3-1.手堅く運用したいなら元本確定型商品

元本割れせずに手堅く運用したい場合は元本確定型商品を選びといいでしょう。元本確定型商品には定期預金や、保険商品があります。これらの商品は、価格変動型商品と違い、元本割れしてしまうリスクがない反面、インフレリスクに備えることができません。

2-3-2.少ない資金で大きなリターンを得たいなら価格変動型商品

価格変動型商品の代表的な商品が投資信託です。投資信託は投資家から集めた資金を運用会社の専門家が株式や債券等に分散して投資します。そのため運用次第では元本割れしてしまうリスクがあります。投資信託では自分で投資先を選びます。投資信託の投資先には、国内の債券を中心に投資する「国内債券型」、国内の株式を中心に投資する「国内株式型」、海外の債券を中心に投資する「海外債券型」、海外の株式を中心に投資する「海外株式型」があります。これらの投資先の組み合わせによってリスクとリターンが変わります。もし手堅く運用したいなら「国内債券型」や「海外債券型」を中心に選択するといいでしょう。一方リスクをとってでもリターンを増やしたいと考えるなら「海外株式型」や「国内株式型」を中心に選択するといいでしょう。

2-4.iDeCo(イデコ)の運用先金融機関の選び方

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)では運用先金融機関を1社しか選ぶことができません。金融機関によって取り扱い商品やサービスが異なります。そのためよく比較検討した上で金融機関を選ぶ必要があります。次は金融機関の選び方のポイントを紹介します。

2-4-1.できるだけ手数料が少ない金融期機関を選ぶ

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)に加入する場合手数料が発生します。まず加入時や移換時に国民年金基金連合会に対して2,777円の手数料の支払いが必要です。また毎月、国民年金基金連合会に103円、事務委託先金融機関64円が最低でも必要です。それ以外にも金融機関によっては口座管理手数料がかかります。手数料は毎月発生するものなので、できるだけ手数料の少ない金融機関を選ぶといいでしょう。また運用商品として投資信託を選ぶなら、信託報酬も大きなコストになってしまうため、なるべく信託報酬が少ない商品があるか事前に確認するようにしましょう。

2-4-2.サポートが充実している金融機関を選ぶ

投資の初心者が運用商品を自分で選ぶのは難しいです。そのため投資初心者の方はできるだけサポートが充実している金融機関を選ぶといいでしょう。コールセンターの営業時間や、店頭での説明に対応しているかどうかなどを事前にチェックしておくといいでしょう。長く付き合うことになるため、サービスやサポートが充実しているかも金融機関を選び時に重要なポイントの一つです。

2-4-3.運用商品が充実している金融機関を選ぶ

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)では、金融機関は1社しか選べません。もちろん途中で金融機関を変更することは可能ですが、手続きの時には費用が発生してしまいます。長期間の運用になるため、その時々の経済状況に合わせて商品を変更することができるように、なるべく取扱い商品の多い金融機関を選ぶといいでしょう。

3.iDeCo(イデコ)のメリットとデメリット

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は、老後の資金を準備するのに向いています。しかしメリットがある反面、デメリットもあります。そこで次は:iDeCo(イデコ)のメリットとデメリットについて一緒に見ていきましょう。

3-1:iDeCo(イデコ)のメリット

3-1-1.節税効果が高い

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)の一番のメリットは節税効果が高いことです。iDeCo(イデコ)は掛け金の支払い時、積立金の運用時、給付金の受取時の3つの段階で、税制面での優遇措置があります。そのため同じように老後資金を準備する個人年金保険やNISAなど比較しても、節税効果が高いと言えます。

3-1-2.少ない掛け金からスタートできる

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は月々の掛け金を5000円から1000円刻みで設定することができます。また掛け金の金額も一年に1回変更することができるので、その時々のライフスタイルや経済状況に合わせて見直すことで、無理なく続けることが可能です。

3-1-3.受取り方を自分で選択できる

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は老後の経済状況によって受取方法や、受取開始期間を選ぶことができます。例えば退職金が少ない場合は給付金の一部を一時金として受け取り、残りを年金として毎月受け取るようにしてもいいでしょう。また60歳から給付金を受け取ることができますが、65歳まで働くなら受取開始期間を65歳に繰り上げするなど、ライフスタイルに合わせて受け取りからを選択できます。

3-2.iDeCo(イデコ)のデメリット

3-2-1.掛け金の上限が決まっている

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は個人年金やNISAに比べて、税制面で優遇のあるため中には、たくさんお金を預けたいと思う方もいるでしょう。しかしiDeCo(イデコ)では加入資格ごとに掛け金の上限が決まっているため、加入資格によっては思っている以上に、掛け金を増やすことができない場合があります。

3-2-2.60歳まで解約できない

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は老後資金を準備することが目的で生まれたため、原則60歳まで解約することができません。ただし加入者が死亡したり、障害を状態になった場合は例外的に解約が可能です。またやむを得ない事由があれば脱退することもできますが、要件が厳しいため基本的にはできないと考えた方がいいでしょう。脱退をした場合、iDeCo(イデコ)には解約返戻金の制度が設けられていないため、脱退時に一定の要件を満たしていない場合は脱退一時金を受け取ることもできません。もし毎月の支払いが厳しくなってしまった場合は、掛け金を減額するか、積立を停止することで対応しましょう。

3-3-3.手数料がかかる

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は加入時に支払う手数料と、毎月支払う口座管理手数料が必要です。金融機関によって手数料の額が違いますが、毎月長期間支払うことになるため、合計すると思っている以上に手数料がかかってしまいます。また毎月の掛け金が支払えずに積立を停止した場合でも、これらの手数料は必要です。ただし2018年の法改正によって2019年の1月から年払いや半年払いすることが可能になりました。それにより年払いや半年払いにすることで支払い回数を減らして、毎月の事務手数料分を節約することが可能です。

4.まとめ

個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は老後の資金を準備するのに最適な制度です。そのため老後資金の準備手段としてiDeCo(イデコ)に加入したいと思った方もいるのではないでしょうか。iDeCo(イデコ)は自分で運用先を選び、自分で育てる年金です。自分にあった運用先が見つけるのが難しいと感じるなら、まずは専門家に相談することから、始めてみましょう。

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