老後の資金の準備のために個人年金保険に加入した方がいいか迷っている人も多いのではないでしょうか。個人年金保険が必要かどうか判断するためには、まず老後に向けてどのくらい資金を準備すべきが知る必要があります。そこで今回は老後に向けてどのくらい資金が必要か確認する方法や、個人年金保険を始めとして資金の準備方法について詳しく紹介します。
1:老後の生活に必要なお金の内訳
老後の資金を何かしらの方法で、準備しなければいけないと思っている人も多いのではないでしょうか。実際に準備しようと考えた時に一体、いつまでにどのくらい準備したらいいかわからない人も多いのではないでしょうか。そこでまずは老後どのくらいのお金が必要になるか一緒にみていきましょう。
1-1:老後の生活を支えるお金
老後の生活を支えるお金には、生活費を始めとして、医療費や介護費用、それ以外にも子供への援助やリフォーム費用などが必要になっていきます。そこで次は老後の生活に必要になってくるお金の内訳や相場について紹介していきます。
1-1-1:老後に必要な生活費の相場は
老後の生活費の相場は平成28年度生命保険文化センター「生活保障に関する調査」によると、夫婦2人で最低限必要な生活費の相場が月額で平均22.0万円。ゆとりのある生活に必要な生活費の平均が34.9万円でした。ゆとりのある生活に必要な費用の内訳は旅行やレジャー、身内との付き合いなどがあげられます。
厚生労働省の「平成29年簡易生命表の概況」よると、65歳時点での男性の余命は「19.57歳」、女性の余命は「24.43歳」でした。この結果から男性は20年分、女性は25年分の生活費が必要になることが推測できます。
1-1-2:意外とかかる医療費や介護費用の相場
年齢を重ねることに病気や介護のリスクが高くなっていきます。そのため老後の生活には生活費以外にも医療費や介護費が必要になってきます。事実厚生労働省の統計「患者調査」によれば、60〜64歳で人口の10万人に対して7000人以上の人が何らかの病気や怪我で外来治療を受けていという結果が出ました。このような結果からも健康な人でも、老後は病気や怪我で医療費が必要になってしまう可能性が高いことがわかります。
現役世代の場合会社員は健康保険に加入し、自営業者の場合は国民健康保険に加入するため、医療費の自己負担額は3割です。会社員の場合は退職後、国民健康保険に加入するので老後の医療費の自己負担額は3割です。国民健康保険は74歳まで加入できますが、それ以降は後期高齢者医療制度に加入します。ただし64歳から74歳でも障害がある場合は後期高齢者医療制度の対象者です。そのため75歳以上の場合、後期高齢者医療制度の対象になるため医療費の自己負担額は1割です。ただし75歳以上でも現役世代と同程度の所得があれば自己負担額が3割負担になります。
ただし医療費が高額になってしまったとしても高額療養費制度を利用することで、毎月一定額以上の医療費がかからないようになっています。高額療養費制度は、所得によって1ヶ月の自己負担額の上限が異なります。
例えば70歳以上で所得区分が一般の場合は、通院のみで18,000円、通院+入院の場合で57,600円が上限です。このように公的医療保険制度によって医療費は高額になることにはなりません。ただし通院にかかる交通費や入院中の差額ベット代などは公的医療保険制度の対象にならないため、病気や怪我をした時に備えて資金を準備しておく必要があります。
では次は介護費用の相場について一緒に見ていきましょう。介護保険も医療保険と同じく公的介護保険制度によって自己負担額の限度額が決まっています。介護保険は要介護状態によって、1ヶ月あたりの支給額限度額が決まっています。そしてその範囲内で予防サービスや介護サービスを受けることが可能です。自己負担額は所得によって異なりますが通常1割から3割です。支給限度額を超えてサービスを受けた場合は全額自己不負担になってしまいます。介護費の自己負担額も医療費と同じように1ヶ月あたりの自己負担額の限度額が決まっています。世帯構成によって限度額が異なりますが、現役世代並みの所得者がいる世帯でも世帯の自己負担額の上限は44,000円です。
高齢者が病気や怪我になってしまうと医療費と介護費用の両方がかかってしまうケースが多いでしょう。しかし医療費も介護費も自己負担額の上限が定められています。例えば収入区分が一般に該当する場合は、年間医療費の自己負担額の限度額は56万円です。今の制度ではこの上限額を超えた分に関しては、手続きをすることによって払い戻されます。ただしあくまでも現状の制度の話になるため、将来的にどのようになるかはわかりません。老後は病気や怪我のリスクが若い時よりも高くなってしまうため、そのリスクに備えてお金を準備する必要があると言えます。
1-1-3:生活費以外に必要なお金
生活費以外にかかる費用の代表的なものには、お子さんへの援助や持ち家なら定期的なリフォームなどの費用が必要です。例えばお子さんの結婚式費用や住宅購入の費用は、親なら出してあげたいと思うのではないでしょうか。それ以外にも車を利用しているなら定期的に車検や自動車保険の費用、また買い替えの費用なども老後の費用として頭に入れておく必要があるでしょう。生活費以外に必要なお金はご家庭によってもバラバラで一概にどのくらいが必要かは言えませんが、生活費や医療費などと合わせて資金を準備しておくと安心でしょう。
1-2:老後の生活を支える収入源は
今までは老後にかかる費用をみてきましたが、次は老後の生活を支える収入源について一緒にみていきましょう。
1-2-1:公的年金
公的年金は国が管理運営する年金制度です。日本国内に在住する20歳以上の国民は全員加入する義務があります。公的年金は老後の生活を支える大切な収入源の一つです。詳細に関しては後述で詳しく解説します。
1-2-2:私的年金
私的年金とは、公的年金では足りない部分を補うために、個人で加入する年金です。主なものには確定拠出年金や国民年金基金、生命保険会社が販売している個人年金保険などがあります。
1-2-3:預貯金
お金を準備する手段として一番代表的なものが預貯金です。預貯金も老後の生活を支えるために重要な資金源になります。
1-2-4:退職金
退職金を老後の資金にと考えている人も多いのではないでしょうか。退職金は企業によってどのくらいの金額が支給されか異なるため、事前に確認しておくといいでしょう。また自営業者の方も小規模企業共済などを利用することが退職金を作ることが可能です。
1-3:今から準備するべき老後資金の計算方法
老後の経済的リスクに備えて、今からいくらくらい必要か計算する方法を紹介します。今から準備しておくべき老後資金を計算するために、まずは老後の年間不足金額を計算します。計算方法は下記の通りです。
①1年間収入を計算しましょう。
老後主な収入源は公的年金と私的年金です。公的年金の受給金額の調べ方は、後ほど解説しますので、そちらを参照してください。私的年金に関しては、この機会に加入状況などを確認してみましょう。
②1年間の収入から1年間の支出額を引いて、不足する金額を計算します。
年間の支出額は平成28年度生命保険文化センター「生活保障に関する調査」などを参考にして計算してみましょう。
③老後に必要な金額を計算します。
不足する金額に必要年数をかけます。必要年数は60歳時点の女性の平均余命は29歳のため89歳かから、(夫退職時の年齢ー妻の年齢)を引いた年数です。この金額にリフォーム費用などの生活費以外にかかるお金を足します。
④老後費用として必要な金額を計算する。
退職時に手元にあるお金から③でわかった老後の必要な金額を引いて、マイナスになった場合は老後生活費などの費用が不足してしまう恐れがあるため、今から老後の費用を準備しておきましょう。
2:老後の生活を支える公的年金とは
老後の生活の主な収入源が公的年金です。日本国内の20歳以上の成人は全員加入義務があります。国民年金や厚生年金に加入しているけれど、どのような仕組みかよくわかっていない人も多いのではないでしょうか。そこで次は公的年金制度について詳しく解説していきます。
2-1:公的年金とは
日本の公的年金制度は「国民皆保険」の方式を採用しているため、日本国内の20歳以上の成人は全員加入義務があります。公的年金制度は、国が管理、運営する年金制度です。年金と聞くと、老後の生活を支えてくれるものと思われがちです。しかし若い世代でも障害年金や遺族年金という形で年金を受け取ることできます。実は公的年金制度には、予測できない人生の万が一に備える社会のセーフティーネットの役割があります。
2-1-1:公的年金の仕組み
公的年金は自分が現役時代に積み立てたものを受け取る「積み立て方式」ではなく、現役世代が納めた保険料を現在の受給者の年金の原資とする「賦課方式」を採用しています。そのため少子高齢化の状況が続いてしまうと保険料を支払う現役世代の負担が大きくなってしまいます。その一方で年金の支給額は毎年物価や賃金水準に合わせて年金額が決まるため、急激なインフレに強い仕組みになっています。
2-1-2:公的年金が守る経済的リスクとは
公的年金は老後の生活は守る老齢年金だけではありません。公的年金には万が一障害を負ってしまった場合の経済的リスクや。一家の大黒柱が亡くなってしまった時に、残された遺族を経済的リスクから守る役割があります。これらは障害年金や遺族年金を呼ばれます。障害年金と遺族年金は一定の条件を満たすことでそれまでに支払った保険料の総額に関わらず年金が支給されます。
2-2:公的年金の種類
2015年9月30日まで公務員や私立学校の教職員が加入する共済年金がありましたが、2015年10月1日から共済年金は厚生年金一体化したため、現在は公的年金は、国民年金と厚生年金の2種類です。
2-2-1:20歳以上の国民全員に加入義務がある国民年金
国民年金は日本国内に在住する20歳以上60歳未満の成人全員に加入義務があるため、自営業者や会社員など働いている人だけでなく、学生や専業主婦の方も加入しなければいけません。国民年金に加入することで、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の3つの年金を受給できます。国民年金は未納期間が長い場合、障害基礎年金や遺族年金を受け取ることができなくなってしまうことがあります。そのためもし学生や失業中など毎月の保険料の支払いが難しい時は、免除や猶予制度があるのでこれらの制度を活用しましょう。
2-2-2:会社員なら必ず加入する厚生年金
民間企業の勤める会社員や公務員は国民年金と合わせて厚生年金に加入します。厚生年金に加入することで老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金の3つの年金を受給するとができます。厚生年金は自分で加入するかどうか決めることができません。厚生年金に加入している企業や団体に常用雇用されているなら加入しなければいけません。厚生年金保険料は会社と折半で支払い、毎月の給料から天引きされます。また国民年金保険料は収入に関わらず保険料は同じですが、厚生年金保険料は収入によって保険料が変わります。このように厚生年金は国民年金にプラスして加入するため、国民年金だけに比べると受け取る年金額が増えます。
3:公的年金の受給額を調べる方法
自分が一体いくら将来年金を受け取ることができるかご存知ですか。老後資金を準備するためにも、公的年金額の受給額をある程度把握しておく必要があります。そこで今から公的年金の受給額を調べる方法を紹介します。
3-1:ねんきん定期便で確認する
公的年金の受給額は毎年誕生日月に日本年金機構から送付されるねんきん定期便で、確認できます。ねんきん定期便は50歳未満と50歳以上で記載内容が異なります。50歳未満の場合は「これまでの加入実績に応じた年金額」、50歳以上の場合は「老齢年金の年金見込み額」が記載されています。つまり50歳以上の場合はねんきん定期便で老後の老齢年金の支給額を分かりますが、50歳未満はねんきん定期便で実際に受給できる年金額を分かりません。通常ねんきん定期便はハガキで届きますが、35歳、45歳、55歳の時には封書で届きます。封書には年金の加入記録の確認方法が記載されたパンフレットと年金加入記録回答票が同封されているため、この時年金の加入状況を確認するといいでしょう。
3-2:ねんきんネットを使って調べる
50歳未満の場合はねんきんネットを使って、将来受給することができる年金額を調べることができます。基礎年金番号があれば利用登録することで、年金記録、将来の年金見込み額、ねんきん定期便の内容、日本年金機構からの各種通知内容を確認することができます。老後資金の準備をしようと考えているなら、まずはねんきんネットに登録しておくといいでしょう。
4:公的年金では足りない老後資金を準備する方法
「平成30年度 生命保険に関する 全国実態調査 〈速報版〉」によると、今後増やしたていきたい保障として、「世帯主の老後の生活資金の準備」が27.1%(前回28.0%) と最も多く、次は「配偶者の老後の生活資金の準備」25.1%(前回25.3%)という結果からも、多くの人が公的年金では老後の資金が足りないと感じていることが分かります。
老後の生活に必要な資金の額と公的年金の将来の受給額が分かれば、老後資金として準備すべき金額を把握することが可能です。
そこで次は個人年金保険など老後の生活資金を準備する方法について解説します。
4-1:定期預金
お金を貯める方法として代表的なのものが定期預金です。定期預金であれば元本割れすることなく、確実に貯めることができます。しかし定期預金の利率は低金利の状態が続いているため、銀行に長く預けてもほとんど増えることがありません。また将来インフレが起こってしまった場合、インフレリスクに備えることができないので実質的には目減りしてしまうことも。老後資金の準備は定期預金だけでなく、長期的に運用することでお金を増やすことができる方法と組み合わせるといいでしょう。
4-2:個人年金保険
保険でお金を貯める代表的に方法が個人年金保険です。個人年金保険は生命保険会社に保険料を納めることで、将来年金の形で受け取ることができる保険です。個人年金保険には大きく分けると2つのタイプがあります。将来の受け取る金額が確定している定額タイプと将来受け取る年金額が決まっていない変額タイプです。定額タイプの個人年金保険は定期預金に似ていて、変額タイプの個人年金保険は投資信託に似ています。また個人年金保険は保険料を支払う時に個人年金保険料控除の対象になるため、老後の資金を準備しながら節税することが可能です。ただし多くの個人年金保険は契約途中で解約した場合、解約返戻金が支払った保険料よりも少なくなってしまう恐れが高いため、無理のない保険料で始めるようにしてください。
4-3:個人型確定拠出年金
個人型確定拠出年金は公的年金制度とは別に自分で年金を準備することができる制度です。運用管理機関の金融商品を選んで、毎月掛け金を積み立てていきます。毎月の掛け金は加入資格によって上限が決まっています。自営業者なら毎月68,000円、企業型確定拠出年金制度がない企業の社員や専業主婦であれば毎月23,000円というように上限が決まっています。運用先は投資信託などになるため定期預金に比べると、積み立てた掛け金の総額に比べて増える可能性があります。一方で運用が上手くいかな買った場合は元本割れしてしまうリスクがあります。個人年金保険と同じく個人型確定拠出年金には節税効果があります。個人型確定拠出年金の毎月の掛け金は全額所得税控除の対象になり、運用によって得た利益は非課税です。また年金として受け取る時も控除の対象になります。ただし個人型確定拠出年金は老後資金準備のためのものなので、途中で解約することができません。
4-4:投資信託
投資信託も老後資金の準備方法の一つです。投資信託は運用会社が投資家から集めたお金をまとめて運用し、その利益を還元してくれる商品です。実際の投資は専門家が行うため、投資の知識がなくても資産運用をすることができます。投資信託の商品は証券会社や銀行、郵便局などから購入することができます。老後資金の準備のために投資信託を始めるなら、NISAを利用するといいでしょう。NISAとは少額投資非課税制度です。NISAには一般NISAと積み立てNISAの2種類があります。NISA口座を開設して投資信託を始めれば、上限が決まってしますが運用で得た利益は非課税扱いになります。老後資金の準備の場合は非課税期間の長い、積み立てNISAを選ぶ方がいいでしょう。またNISAの場合個人年金保険や個人型確定拠出年金と違い、いつでも口座に預けた資産を引き出すことができます。ただし投資信託などを利用するため運用が上手くいかない場合、元本割れの恐れがあります。
5:まとめ
個人年金保険で老後の資金を準備するべきかどうか判断する前に、まずは老後に向けてどのくらいの資金を準備するべきか知る必要があります。そのため老後どのくらい資金が不足してしまうか計算することからはじめてみましょう。もし自分ではどこから手をつけていいか分からない場合は、ファイナンシャルプランナーなど資格を持った専門家に相談するのがおすすめです。