個人年金保険に加入している場合、会社員の方でも確定申告をする必要がある場合や、確定申告をした方が得するケースがあります。そこで今回は個人年金保険に加入している場合に、確定申告をしなければいけないケースや確定申告をすることで得するケースを紹介します。
1.確定申告が必要な場合と不要な場合
会社員の方でも個人年金の保険料の支払い時や、年金の受け取り時に確定申告が必要なケースがあります。会社員の方にとって確定申告は馴染みがないことかもしれません。そこで今回は確定申告に関する基礎知識や、確定申告が必要な場合、不要な場合などについて一緒に確認しましょう。
1-1.確定申告とは
確定申告は毎年1年間で全ての所得に対して、所得税の額を計算し、税金を支払う手続きのことです。自営業者の方は確定申告で納税をします。会社員の方は源泉徴収によって納税します。所得税の支払い払いすぎた分には年末調整によって還付されますが、それでも払いすぎている場合は還付申告をすることによって戻ってきます。このように確定申告は自営業者の方だけでなく、場合によっては会社員の方でも確定申告が必要なケースや、得するケースがあります。
1-2.確定申告が必要な場合
確定申告が必要な方は下記の通りです。該当する方は確定申告をして納税する必要があります。
- 配当所得があった人
- 不動産所得があった人
- 事業所得があった人
- 給与所得があった人
- 退職所得があった人
- 譲渡所得があった人
- 山林所得があった人
- 一時所得があった人
- 雑所得があった人
会社員の場合確定申告は不要です。ただし下記の該当する場合は会社員でも確定申告が必要です。
- 給与収入が2,000万円を超えている場合
- 2ヵ所以上の会社から給与を受け取っている場合
- 配当所得や不動産所得などの副業所得が20万円を超える場合
- 医療費控除、雑損控除などを受ける場合
- 住宅ローン控除を初めて受ける場合(2年目以降は年末調整で行う)
- その年の途中で退職し、再就職しておらず、年末調整を受けられない場合
- ふるさと納税の納付先自治体が6ヵ所以上の場合
例えば病気や怪我で入院し、その医療費が10万円を超えている場合は医療費控除の対象です。そのため確定申告の時に還付申告をすることが払いすぎている分の税金が戻ってきます。このように会社員の方でも必要なケースや、確定申告をすることで得するケースもあるので毎年確認するようにしましょう。
1-3.確定申告が不要な場合
日本には確定申告をせずに源泉徴収で行うことで、確定申告による負担を軽減するための確定申告不要制度があります。確定申告不要制度の利用条件は下記の通りです。
- 公的年金など(老齢基礎年金、老齢厚生年金、企業年金、恩恵)の収入金額合計が400万円以下で、全てが源泉徴収の対象になっている
- 公的年金など以外の所得金額合計額(給与所得、一時所得、不動産所得、株式譲渡、公的年金以外の雑収入)が20万円以下の場合
この条件に当てはまる場合は確定申告が必要ありません。また株式で配当を受けている場合、下記の条件に該当しているなら確定申告が不要です。
- 少額配当(1銘柄につき1回に受け取る金額が、「10万円×配当計算期間(最高12カ月)÷12」以下であること)
- 上場株式等に係る配当等(大口株主等を除く)
- 特定株式投資信託や公募証券投資信託の収益の分配特定投資法人の投資口の配当等
- 上場会社等の発行済株式等の3%以上を保有する大口株主
ただし確定申告不要制度を利用してしまうと医療費控除などの控除を受けることができません。確定申告不要制度を利用した方がいいかどうかは個人の状況によって異なります。もしご自分で判断ができないような場合は、専門家に相談するといいでしょう。
1-4.確定申告の流れ
確定申告は書面もしくは、e-Taxで申告することができます。どちらの方法で申告する場合もまずは確定申告に必要な書類を準備しましょう。必要な書類が準備できたら、申告書を作成し税務署へ提出し、申告後に納税を行います。確定申告をすることで還付金があれば後日指定口座に振り込まれます。申告内容によって必要書類や申請書の種類が異なるため、事前に必要な書類などを確認しておきましょう。
1-5.確定申告し忘れてしまった場合
生命保険会社は税務署に年金支払調書を提出する義務があります。税務署は年金支払調書によって生命保険会社からいくら年金が支払われているか把握しているので、個人年金を受け取っているのに確定申告を忘れてしまうと税務署から連絡が入ることがあります。そのため毎年確定申告が必要かどうか確認しましょう。確定申告すべきなので申告しなかった場合や、納税しなかった場合は延滞税や無申告加算税が発生してしまうので注意してください。
2.個人年金の受取開始前に確定申告が必要な場合
個人年金の受取開始前に確定申告が必要な場合は個人年金保険料控除を受ける場合と、個人年金保険を解約した場合、被保険者が亡くなってしまった場合です。次はそれぞれの場合に注意したいことを中心にお伝えします。
2-1.個人年金保険料控除を受けるため
個人年金保険料控除は毎年、年末調整や確定申告の時に申請しなければ受けることができません。自営業者の場合は他の控除と合わせて確定申告の時に申請することで受けることができます。会社員の場合は年末調整の時に行うのが一般的ですが、例外的に確定申告の時に行うケースがあります。そこで次は個人年金保険料控除を確定申告で申請する場合に注意したいことを確認していきましょう。
2-1-1.会社員の場合
会社員の場合、個人年金保険料控除は年末調整時に勤務先で行うため個人年金保険料控除を受けるために確定申告する必要がありません。例外的に書類が年末調整の書類の提出期限までに準備ができず、受けることができなかった場合は、還付申告をすることで受けることができます。還付申告の場合は翌年の1月から受付してもらえるので、早めに申告するようにしましょう。この時に必要な書類は確定申告書A第一表・第二表、源泉徴収票、生命保険料控除証明書です。申告後おおよそ1ヶ月から2ヶ月くらいで指定口座に還付金が振り込みされます。
2-1-2.自営業者の場合
自営業者の場合は確定申告の時に他の控除と合わせて手続きを行います。個人年金保険料控除を受けるには、毎年10月から11月頃に生命保険会社から送付される生命保険料控除証明書が必要です。生命保険料控除証明書は原本を提出する必要があります。確定申告よりも数ヶ月前に届くため、紛失しないように大切に保管しておきましょう。万が一紛失してしまった場合はなるべく早めに再発行の手続きをしましょう。
2-2.個人年金保険を解約した時
個人年金保険を解約した場合も確定申告が必要な場合があります。保険料の支払者と解約返戻金の受取人が同じ場合で必要なケースは、解約返戻金が払込み保険料の総額よりも増えていて利益が発生していた場合です。ただしこのケースの場合ほとんどが元本割れしているため、実際のところする必要がないケースがほとんどです。しかしもし保険料の支払者と解約返戻金の受取人が違う場合は、解約返戻金が贈与税の対象になるため確定申告が必要です。贈与税の申告を行う場合、添付書類として戸籍謄本などが必要になってくるため早めに必要な書類を準備するようにしましょう。
2-3.個人年金保険の被保険者が亡くなってしまった場合
個人年金保険の被保険者が亡くなってしまった場合、生命保険会社は受取人に対して死亡給付金を支払います。死亡給付金は保険料の負担者と被保険者が同じ場合は相続税の対象に、保険料の負担者と受取人が同じ場合は所得税の対象です。また保険料の負担者と死亡給付金の受取人と被保険者がそれぞれ別人の場合は贈与税の対象になるため、死亡給付金やそのほかの所得額によっては確定申告が必要な場合があります。課税される税金によって必要な書類が異なり、手元に届くまで時間がかかるものもあるため、必要な書類早めに準備をしておきましょう。
3.個人年金の受取開始後に確定申告が必要な場合
個人年金を受取開始後に確定申告が必要な場合があります。保険料の負担者と受取人の関係、および受取り方によって課税される税金が変割ります。所得額によって確定申告が必要か不要か決まります。そこで次は年金受取時の税金や確定申告が必要な場合について説明します。
3-1.年金受取時の税金
年金受取時の税金は、保険料の負担者と受取人の関係、および受取り方によって課税される税金が異なります。保険料の負担者と受取人が同じ場合は所得税、異なる場合は贈与税と所得税の対象です。保険料の負担者と受取人が同じで一括で受取る場合は一時所得になるため所得税、保険料の負担者と受取人が異なる場合は贈与税の対象となります。課税される税金によって必要な書類が違うため、まずはどのケースに該当するが確認しましょう。
3-2.確定申告が必要な場合
確定申告が必要かどうかは年金の総額だけではなく、他の所得があるか扶養家族がいるかどうかによって変わります。そこで次は確定申告が必要な場合について紹介します。
3-2-1.公的年金受給している場合
個人年金の他に公的年金を受給している場合、下記の条件に該当した場合は確定申告が必要です。
- 公的年金が400万円超ある
- 源泉徴収されていない公的年金を受け取っている
- 公的年金以外に20万円超の所得(個人年金保険の雑所得や一時所得も含む)がある
このような場合は確定申告が必要です。年金受給者の場合必要な書類は、確定申告書Aと公的年金などの源泉徴収票です。また年金受給者の中でも源泉徴収で納税している場合は、還付申告をすることで払いすぎている分が戻ってくる可能性があります。
3-2-2.個人年金とは別に給与所得がある場合
給与所得がある場合は、給与所得や退職所得以外の所得の合計が20万円を超えたら確定申告が必要です。個人年金で受取る年金が雑所得に該当する場合、年金(年額)×払込保険料合計額÷年金受取合計額にて雑所得を計算します。もし個人年金を含めた雑所得が20万円を超えた場合は確定申告が必要になるため注意してください。
4.まとめ
個人年金保険の場合、年金の受取り開始前かもしくは開始後かによって確定申告が必要な場合があります。特に会社員の中には年金を受け取ることで退職後初めて確定申告をする人もいるかもしれません。確定申告をしなければいけないのに申告が漏れてしまうと、延滞税や無申告加算税が発生してしまうケースもあります。そのためライフスタイルが変わった時などは確定申告が必要かどうか確認するようにしましょう。