個人年金保険と税金|所得税・贈与税・相続税との関係まとめ

個人年金保険は老後資金準備が目的の保険です。そのため保険料の支払い時や年金受取り時の保険料の負担者と受取人との関係と、受取り方次第では税金を抑えることができます。特に受取り方や受取方法は契約時に決めることが多いです、そこで今回は加入を検討する前に知っておきたい個人年金保険と税金の基礎知識について紹介します。
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個人年金保険は保険料の支払い時は個人年金保険料控除で、年金の受取り時は保険料の負担者と受取人との関係と、受取り方次第で税金を抑えることができます。そこで今回は加入前に知っておきたい個人年金保険と税金の基礎知識について紹介します。

1.個人年金保険料の支払と税金

個人年金保険の保険料は個人年金保険料控除の対象です。そのため毎年年末調整や確定申告時に申請することで、所得税や住民税を軽減することができます。個人年金保険の加入を考えている人の中には、個人年金保険料控除が目的の方も多くいます。ただし個人年金保険料控除は個人年金保険であれば、どんな商品でも対象になるとは限りません。そこで個人年金保険料控除の条件や手続きの方法について紹介します。

1-1.個人年金保険料控除とは

所得税や住民税は一年間の収入から法律で定められた控除を引いた所得に対し、適用税率をかけて計算します。この所得控除は14種類あり、そのうちの一つが生命保険料控除です。生命保険料控除には死亡保険や収入保障保険の保険料が対象になる生命保険料控除。医療保険や介護保険、がん保険の保険料が対象になる介護医療保険料控除、そして個人年金保険の保険料が対象となる個人年金保険料控除があります。

1-2.個人年金保険料控除を受けるための条件

国内で販売されている個人年金保険の保険料が全て個人年金保険料控除の対象ではありません。個人年金保険料控除の対象になるためには4つの要件を満たし、個人年金保険料税制適格特約が付加された契約に限ります。個人年金保険料控除の対象となるための4つの要件は下記に通りです。

  • 保険料を支払う契約者と受取人が同一人物、もしくはその配偶者
  • 受取人と被保険者が同じ
  • 保険料を支払う期間が10年以上
  • 年金の受取開始が60歳以で、受取期間が10年以上

これらの要件を満たしていない場合は、生命保険料控除の対象になります。個人年金保険料の控除になるかどうかはパンフレットに記載されています。パンフレットを見てもわからない場合は保険会社の担当者に確認するといいでしょう。

個人年金保険料税制適格特約は保険料の発生しない特約です。ただし中途付加ができないため契約時に付加しておく必要があるので注意してください。

1-3.個人年金保険料控除を受けるための手続き

個人年金保険料控除を受けるためには、毎年申請が必要です。会社員の場合は年末調整で、自営業者の場合が確定申告の時に手続きをします。ただし会社員の方でも年末調整の時に申請を忘れていた場合は、翌年に確定申告をすることで控除を受けること可能です。申請の時には必ず生命保険会社から送付される生命保険料控除証明書の原本を添付する必要があるため、手元に届いたら大切に保管しておきましょう。

2.積立金の運用益に関する税金

個人年金保険の種類によっては、積立金を運用することによって得た運用益が非課税になります。そこで次は運用益が非課税になる個人年金保険の種類と、投資信託との税制上の違いについてみていきましょう。

2-1.対象になる個人年金の種類

変額個人年金は運用収益に対して課税されないという税制上のメリットがあります。変額個人年金は運用実績によって将来受け取る年金額が変動する個人年金保険です。確定年金や有期年金は保険会社に積立金の運用を任せるため、契約時に将来受取る年金額確定しています。一方変額個人年金は生命保険会社の運用先リストから、契約者が運用先を選ぶため、運用先の選択によっては年金額が増えることもあれば、予想よりも減ってしまうことがあります。このような特徴から変額個人年金は投資信託に似ていると言われています。

2-2.投資信託との税制上の違い

投資信託と似た特徴を持つ変額個人年金は、運用の途中で運用先を変更するスウィチングが可能です。投資信託の場合スウィチングをする時に信託財産留保額という費用が発生します。またこの時に運用益が発生している場合は、運用益に対して20.315%の税金がかかります。しかし変額個人年金の場合、スイッチング時の費用が発生せず(ただし回数制限あり)、かつ運用益から税金が引かれずに、変更後の運用先にそのまま全額再投資される税制上のメリットがあります。

3.個人年金保険の受取時にかかる税金

個人年金保険は契約者と受取人との関係や、受け取り方法によって課税される税金の種類が異なります。次はそれぞのケースにおいて課税される税金の種類を一緒にみていきましょう。

3-1.契約者と受取人の関係による税金の違い

契約者と受取人の関係によって、課税される税金の種類が異なります。

3-1-1.契約者と受取人が同じ

保険料の負担者の契約者、年金の受取人が同じ場合は、所得税(雑所得)の対象です。雑所得は総収入金額から必要経費を引いたものです。総収入は一年間に受け取る年金の総額です。必要経費は受け取る年金金額×払込保険料の合計額/年金の総支給見込額で計算することができます。最終的には他の所得と合算し、控除を引いたものが1年間の所得になります。

3-1-2.契約者と受取人が別人

保険料の負担者の契約者、年金の受取人が別人の場合は、贈与税と所得税(雑所得)の対象です。例えば保険料の負担する契約者がご主人で、年金の受取人が奥様の場合がこのケースに該当します。契約者と受取人が違う場合は、年金を受け取る権利を贈与されたと考えるため贈与税の対象となってしまいます。そのため年金を受け取る1年目は贈与税の対象で、2年目以降は所得税(雑所得)の対象です。贈与税は下記の計算式を使って計算します。

贈与税額=(課税価格‐基礎控除110万円)×税率‐控除額

税率と控除額は国税庁の贈与税の速算表を参照してください。贈与税は所得税よりも高くなってしまうため、契約者と年金の受取人が別人の場合は、契約者と受取人が同一人物の場合と比べて実際に受取る年金の総額が少なくなってしまいます。

3-2.受け取り方法による税金の違い

個人年金の受け取り方法は契約時に決めることが可能です。受け取り方法によって課税される税金の種類が異なります。一時金として年金を受け取る場合は一時所得の扱いになります。ただし保証期間付き終身年金の場合、保証期間の部分を一括で受け取る扱いになるため雑所得の扱いです。そのため個人年金保険の種類によって課税される税金の種類が異なるため注意してください。一時所得は、総収入金額-必要経費(支払った保険料の総額)-50万円(特別控除)の計算式で計算できます。次に年金として受け取る場合は雑所得の扱いです。雑所得は総収入金額-必要経費の計算式で計算することができます。また保険料の負担者と年金の受取人が同じ場合で一時金として受け取った部分は一時所得の対象となり、年金として受け取る部分雑所得の扱いとなります。

4.被保険者が亡くなった場合や契約を解約した場合の税金

被保険者がなくなってしまった場合や、保険料の支払いが難しくなってしまい個人年金保険を解約してしまった場合の税金について最後に確認していきましょう。

4-1.年金支払い前に被保険者が亡くなった場合

個人年金保険の年金支払い前に被保険者が亡くなってしまった場合、生命保険会社は受取人に対して死亡給付金を支払います。この時に保険料を負担者と被保険者が同じ場合は受取人に支払われる死亡給付金は相続税の対象です。次に死亡給付金の受取人が保険料を負担し、被保険者が亡くなってしまった場合は、受取人に支払われる死亡給付金は所得税(一時所得)の対象です。また保険料の負担者と死亡給付金の受取人と被保険者がそれぞれ別人で、被保険者が死亡した場合、受取人に支払われる死亡給付金は贈与税の対象です。

4-2.年金支払い後に被保険者が亡くなった場合

年金支払い前に被保険者がなくなってしまった場合、契約者と年金の受取り人との関係と法定相続人の受取り方法よって課税される税金の種類が異なります。契約者と年金の受取人が同一人物で一括で受け取る場合は、相続税の対象です。また年金として受け取る場合は個人年金保険の年金継続受取人が受ける年金の権利評価額に対して相続税がかかり、2年目以降に毎年受け取る年金が所得税(雑所得)の対象です。契約者と年金の受取人が異なる場合は、一括で受け取った場合は所得税(一時所得)の対象で、年金として受け取る場合は個人年金保険の年金受取開始時点に年金の権利評価額が贈与税の対象に、2年目以降は所得税(雑所得)の対象です。

4-3.途中で解約した場合

年金開始前に保険料が支払いができなくなってしまった場合、解約返戻金が保険会社から支払われます。保険料の負担者と解約返戻金の受取人が同じ場合、支払った保険料よりも増えた分が所得税の対象となってしまいます。ただし個人年金保険料を途中で解約した場合、ほとんどの場合利益が出ることがないのであまり心配しなくてもいいでしょう。しかし保険料の負担者と解約返戻金の受取人が違う場合は、解約返戻金の全額が贈与税の対象になってしまうため注意してください。

5.まとめ

個人年金保険は保険料の支払いの時には個人年金保険料控除によって、税制上の優遇措置があります。また老後の給付金の受取り方法によって税金の負担を軽減することができ、お得に受け取ることが可能です。個人年金保険の税金はちょっとしてポイントを抑えることで節約できます。もし個人年金保険に加入時はしっかり税金についても確認するようにしましょう。

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