個人年金保険の種類|受取期間、運用方法、積立通貨別

個人年金保険には多くの種類があってどれを選べばいいか迷ってしまう方のために、年金の受取り期間、積立金の運用方法、保険料の支払い通貨別にわかりやすく解説しました。
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多くの個人年金保険は国内の保険会社から販売されているため、どの個人年金保険を選んでいいか迷っている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は年金の受取り期間、積立金の運用方法、保険料の支払い通貨別に特徴や向いている人について紹介しています。ぜひ、加入を検討する前に参考にしてください。

1:個人年金保険とは

個人年金保険は老後の生活費を確保するために、若い時にから準備することができる私的年金の一つです。年金には国が運営、管理する公的年金と、生命保険会社などの民間企業が運営、管理する私的年金があります。私的年金には個人年金保険や個人型確定拠出年金(iDeCo)などがあります。少子高齢化が進む日本では、多くの人が、公的年金だけでは老後の資金を準備することができないと考えています。そのため老後の生活費を準備するための手段として、私的年金が注目を集めています。

2:年金の受取期間別4つの種類

個人年金保険は老後の生活費を準備するためのものです。そのため年金の受取り開始が60歳以降に設定されています。個人年金保険は年金の受取り期間によって4つの種類があります。そこで次はそれぞれのタイプの特徴やメリット、デメリットについて解説します。

2-1:確定年金

確定年金は被保険者の生死に関わらず、一定期間内であれば年金を受取ることができるのが確定年金です。確定年金は契約時に年金の受取り期間と受取り金額を決めます。年金の受取り期間は5年、10年、15年、20年が一般的です。もし年金の受取り期間内に被保険者が死亡してしまった場合は、遺族が一時金もしくは年金を受取ることができます。確定年金は積み立てた保険料よりも増えて年金として支払われるため、元本割れのリスクがありません。また年金の開始時期も60歳以降であれば、任意で選択することが可能です。例えば70歳まで働くなら、70歳から年金開始するなどライフプランに合わせることができます。確定年金は年金の受取り期間を過ぎてしまうと年金の支払いが終わってしまうデメリットがありますが、一方で終身保険に比べると保険料を安く抑えることができるメリットがあります。このような理由から確定年金は将来の資産計画をしっかり立てておきたい人に向いていると言えます。

2-2:有期年金

有期年金は確定年金と同じく年金の受取り期間と受取り金額が決まっています。確定年金と有期年金は両方とも受取り期間内に被保険者が死亡してしまうと、年金の支払いが終わってしまいます。ただし有期年金の場合、被保険者の遺族は一時金や残りの期間の年金を受取ることができません。つまり被保険者が受取り期間内に死亡してしまった場合、元本割れしてしまう恐れがあります。一方で有期年金は、他の個人年金保険の中でも一番保険料を安く抑えることが可能です。このような理由から有期年金はできる限り保険料を抑えて、将来の経済的リスクに備えたいと考える人に向いています。

2-3:終身年金

終身年金は被保険者が生きている限り、一生涯年金を受け取ることができます。被保険者がいつ亡くなるかは契約時点ではわかりません。終身保険は、受け取ることできる年金額は決まっていません。仮に被保険者が80歳、90歳と長生きした場合は、支払った保険料よりも年金額が高額になってしまう可能性があります。このような理由から終身年金の保険料は、確定年金や有期年金に比べると高く設定されています。終身保険の場合保険料が高額に設定しているため、被保険者が早く死亡してしまうと、元本割れの恐れがあります。終身年金の中には元本割れのリスクを防ぐために、一定期間内に死亡してしまった場合、遺族が一時金や年金を受け取ることができる保証期間付き終身年金があります。ただ保証期間がある分保険料が高く設定されています。このような理由から終身保険は資金に余裕があり、将来の経済的リスクにしっかり備えたいと考える人に向いています。

2-4:夫婦年金

夫婦年金とは戸籍上の夫婦の一方が亡くならない限り、年金を受取り続けることができる個人年金保険の一つです。受取り期間が決まっていないため、終身保険に似ています。被保険者は戸籍上夫婦である必要があります。もし離婚してしまった場合は、解約や他の年金保険への契約変更をしなければいけません。夫婦年金の場合は契約時点では確定年金や終身保険として加入し、年金の受取り開始時点で夫婦年金へ変更手続きを行うのが一般的です。ただし年金の受取り時点での夫婦年金の年金額が保険会社の基準を下回る場合は、夫婦年金の手続きができないケースがあります。夫婦年金の場合は夫婦別々で加入するよりは保険料を安く抑えることができる反面、夫婦の一方が亡くなってしまった場合年金額が減額される恐れがあります。このような理由からも夫婦年金はできるだけ保険料を抑えて、老後の経済的リスクを少しでも抑えたいと考えている人に向いています。

3:積立金の運用方法別2つの種類

保険会社は契約社から預かった積立金を運用することによって、年金の原資を準備しています。個人年金保険は積立金の運用方法の違いによって2つの種類があります。次はそれぞれの種類の特徴や、メリットデメリットについて紹介します。

3-1:定額年金

定額年金は契約時点で年金額が決まっています。定額年金の場合、積立金の運用は生命保険会社の責任で行います。そのため運用が上手くいかず損失が発生したとしても、契約時に決めた年金額を契約者は必ず受け取ることができるため元本割れのリスクがありません。万が一年金の受取り期間の開始前に、被保険者が死亡したとしても死亡給付金として受け取ることが可能です。定額年金は支払った保険料よりも年金額が少なってしまうリスクがありませんが、変額タイプのように年金額が増える可能性がないためインフレリスクに備えることができません。定額年金は将来受取る年金額をある程度把握し、元本割れのリスクを負いたくない人に向いています。

3-2:変額年金

変額タイプは契約時点で年金額が決まっていません。変額タイプの場合、積立金の運用は契約者の責任で行います。契約者は生命保険会社が用意している運用商品の中から運用先の商品を選択します。運用で利益が出ればその分将来受け取る年金額に上乗せされますが、反対に損失が出てしまった場合は、元本割れしてしまうリスクがあります。運用の成績によって契約途中に、運用先を変更することができるものもあります。運用先を変更する場合、手数料を取られることもあるため事前に確認しておくといいでしょう。このように運用によって年金額が増減するため、変額タイプは投資信託に近く、インフレリスクに備えることが可能です。ただし保険には変わりないので年金の受取り期間開始前に被保険者が亡くなった場合は、死亡保険金として遺族が保険金を受け取ることが可能です。変額年金はリスクをとってもできるだけ保険料を抑えて、年金を増やしたいと考える人に向いています。

4:保険金の支払い通貨別2つの種類

個人年金保険は保険料の支払いの通貨によって2つの種類があります。それぞれの種類の特徴やメリットやデメリットについて解説します。

4-1:円建て

日本国内で販売されている個人年金保険で、商品名に外貨建てと書かれていなければ円建てと考えていいでしょう。円建ての場合保険料の支払いも、年金の支給もすべて円で行われるため、毎月の保険料や受取り年金額を簡単に把握できます。ただし円建てのタイプは外貨建てのタイプに比べると、予定利率が低いため少ない保険料で多くの年金を確保することが難しいです。このような理由から円建ての場合、インフレリスクに備えることができないデメリットがあります。円建ては将来受取ることができる年金額を把握しておきたい、できるだけリスクは最小限に抑えたいと考えている人に向いています。

4-2:外貨建て

外貨建ては日本円以外の米ドル、豪ドル、ユーロなどの外国の通貨で保険料支払いや年金の支給を行います。外貨建ての場合個人年金保険に限らず円建てに比べて、予定利率が高く設定されているため、少ない保険料で多くのリターンを期待することができます。

外貨建ての場合為替相場の影響を受けます。特に一時払いの外貨建て個人年金保険の場合は円安の時に保険料を支払い、円高の時に年金の受け取ってしまうと元本割れしてしまうリスクがあります。一方で円高の時に保険料を支払い、円安の時に年金を受取ることができれば、多く年金を受取ることが可能です。また外貨建ての場合、保険料の支払いの時や年金を受取り時に、円から外貨、外貨から円へ両替を行うため為替手数料がかかります。外貨建ての場合、為替レートに関するある程度の知識があり、元本割れなどのリスクをとっても将来の年金額を増やしたいと考えている人に向いています。

5:個人年金保険を選ぶ時に確認しておきたいこと

このように個人年金保険にはいろいろな種類があります。次はどのタイプの個人年金保険を選ぶとしても、事前に確認しておきたいことを紹介します。

5-1:無理のない金額かどうか

個人年金保険は途中で解約してしまうと、解約返戻金が支払った保険料よりも少なくなってしまう可能性が高いです。そのため月払いなどで個人年金保険料を支払う場合は、長い期間払い続けることができる、無理のない範囲で始めるようにしましょう。結婚や出産などライフプランが変わることで、収入と支出のバランスは大きく変わります。特に独身の時に加入する場合は、将来のことも考えた上で無理のない範囲でスタートすることが大切です。もし万が一月々の保険料を支払いが難しくなった場合は、払い済み保険へ契約変更する。契約者貸付を利用するなど解約せずに済む方法があるため、まずは専門家へ相談するといいでしょう。

5-2:リスクとリターンのバランス

定額年金や円建ての場合は元本割れのリスクがない反面、予定利率が低いので大きなリターンを望むことができません。一方変額タイプや外貨建ての場合は運用結果や為替相場の影響によって元本割れのリスクがある一方、少ない保険料で大きなリターンを得る可能性があります。このように個人年金保険はタイプによってリスクとリターンのが大きく変わります。

毎月老後のために毎月2万円貯金することができる場合、全て定額タイプの年金保険に回してしまうと、元本割れのリスクを防ぐことができますが、インフレリスクを防ぐことができません。もしくは全て変額タイプの個人年金保険に回してしまうと、運用で失敗してしまった場合のリスクに備えることができません。このような状況になってしまわないように定額タイプと変額タイプの両方の保険に加入するなどして、資産を分散させるといいでしょう。

5-3:保険会社の経営状態に確認すること

生命保険会社が破産してしまった場合、加入している個人年金保険がなくなってしまうことはありません。生命保険会社が破産してしまった場合は、その会社の保険契約は救済会社や生命保険保護機構に引き継がれます。契約はなくなってしまうことはありませんが、責任準備金が10%カットされ、予定利率が引き下げられます。減額の幅は決まってしませんが、予定利率が高くて保険期間の長いものほど減額幅が大きくなります。つまり個人年金保険は予定利率が高く保険期間が長いので、生命保険会社が破産した場合年金額がかなり減額されてしまう可能性が高いです。このような理由から個人年金保険に加入する場合は、事前に加入予定の生命保険会社の経営状態を確認するようにしましょう。

5-3-1:ソルベンシー・マージン比率

生命保険会社の経営状態を確認する一つ目の指針がソルベンシー・マージン比率です。責任準備金は将来の保険金の支払いに備えて積立てしている資金のことです。生命保険会社は保険法によって、責任準備金を積み立てるように義務付けられています。しかし東日本大震災など予測ができない大災害などが起こってしまった場合は、生命保険会社は一度に多くの保険金の支払いが必要になってしまいます。このような予測できない事態が起こってしまった時に、生命保険会社に支払い能力があるかどうかを判断することができるのが、ソルベンシー・マージン比率です。ソルベンシー・マージン比率は各生命保険会社のHPから確認することが可能です。ソルベンシー・マージン比率は200%を下回る場合は、財務状況が悪いと判断され行政指導が入ります。日本の生命保険会社のほとんどは600%を超えているため。600%を下回る場合は注意が必要です。

5-3-2:基礎利益

一般事業会社の営業利益に該当するものが基礎利益で、基礎利益を確認することで生命保険会社の収益性を確認することができます。経常収益(保険料収入+資産運用収益)から経常費用(保険料等支払金+責任準備金等繰入額+資産運用費用+事業費)を引いたものを経常利益といい、経常利益から有価証券の売買損益や臨時損益などを引いたものを基礎利益を言います。基礎利益を見ることで、保険業務での収益性を確認することができます。基礎利益が確保されていれば、予定利率を実際の運用実績を下回ってしまう逆ざやが起こった契約があったとしても、その会社の生命保険会社の経営状態は健全だと言えます。

5-3-3:格付け

格付け会社が公表している各生命保険会社の格付けも、生命保険会社の経営状態を確認することができる一つの指針です。格付けを確認することで、生命保険会社の保険財務力や保険金支払い能力を判断することができます。S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)や、MOOD’S JAPAN(ムーディーズ・ジャパン)が格付け会社としては有名です。

6:まとめ

個人年金保険にはいろいろな種類が揃っています。多くの個人年金保険の中から自分にぴったりの個人年金保険を選ぶのは至難の技です。もし将来の老後の経済的リスクに備えて個人年金保険に加入したいと考えるなら、一度専門家へ相談するのがおすすめです。

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