スキーやスノーボードは、スポーツというよりもレジャーのイメージの方が強いかもしれませんが、実際は危険度の高いスポーツであることを忘れてはなりません。万一事故が起これば、骨折や脳震盪など重傷になりやすく、誰もがケガをする側にもさせてしまう側にもなりえます。
ここではそんなもしもの時のためのスキー保険について解説していきたいと思います。
スキー保険の補償内容とは
スキー保険の補償内容は主に以下の4つです。
※現在スキー・スノーボード専用の保険は少なくなっており、スポーツ保険やレジャー保険など総合的な保険が多くなっています。
自身のケガの傷害補償
死亡・後遺障害補償、入院補償、通院補償など、スキー中にご自身がケガをしてしまった場合に補償されます。スキー中以外でも、家を出発してからの道中や、普段の日常生活でのケガも補償してくれる保険が多いです。
他人への賠償責任補償
スキー中に他人にぶつかりケガをさせてしまった、ぶつかって他人のボードを折ってしまった、など他人への賠償責任が発生した場合に補償されます。
スキー中の事故では後遺症が残ったり、死亡してしまったりと重症になる場合も多く、万一そうなってしまえば数千万円など非常に高額な賠償責任を負うことになります。スキー保険の中ではもっとも高額設定が必要な補償です。
携行品損害補償
自身のスキー用品を破損した、盗難にあった、という場合に補償されます。
救援者費用
スキー場では毎年多くの行方不明者が出ています。誰も滑っていないパウダースノーを楽しみたくて、スキー場が許可している範囲を出て滑るスキーヤーは残念ながら必ずいるようです。万一行方不明になり、ヘリコプターでの捜索や警察・消防の捜索隊などが出動する事態になれば、後から高額な費用が請求されることになります。そのような救援活動にかかった費用を補償してくれるのが救援者費用です。
スキー保険の特徴
では、スキー保険はどのような特徴があるのか見ていきましょう。他の保険でカバーできる場合もありますが、頻繁に行くからしっかり補償したい、反対に数回しか行かないのでその時だけかけたい、などご自身の都合に合わせて選べます。
短期で掛け捨てがほとんど
スキーは冬場だけのレジャーですので、スキー保険も年間契約よりも短期で加入できるものがほとんどです。その分保険料も抑えられており、掛け捨てタイプで1回数百円くらいで加入できるものが多いです。
1日だけ、当日加入も可能
毎年スキーに行くとはいっても、ワンシーズン数回だけという方も多いかと思います。そのため、1日だけや1泊2日などのプランもたくさんあります。また、急なお誘いでスキーに行くことになった場合も、当日加入が可能な保険もありますので安心です。
ファミリータイプもある
家族で楽しむレジャーとしても根強い人気のスキー。近年はキッズパークや子供向けスキー教室、託児所など子連れファミリー向けの施設を充実させているスキー場も多くなってきています。家族で楽しむなら、子供は特にケガをしやすいため、全員で保険に加入しておきたいものです。そのような方向けに、家族みんなで加入できるファミリータイプの保険もあります。それぞれ個別に加入するより手間も省け、保険料もまとめて契約することで少し安くなる場合もあります。
クレジットカード付帯のスキー保険も
クレジットカードに付帯している保険の中にも、追加でスキープランをつけられるものもあります。補償の対象も本人のみや夫婦、子供も含めた家族型があり、カードを持っている方であれば誰でも申し込めます。また、ゴルフ保険やスポーツ保険など別の名称がついている中にスキーやスノーボードも含まれている場合がありますので、そちらもチェックしてみてください。
補償される事例・補償されない事例
具体的にどんな場合に補償されるのか、またどんな時は補償されないのかを、事例で見ていきましょう。
補償される事例
- 滑走中転んだ拍子にデジタルカメラが破損してしまった
携行品損害補償はスキー用品に限らず補償される保険がほとんどです。
- 滑走中に他のスキーヤーにぶつかり、相手が頭部をぶつけ後遺症が残ってしまった
死亡や後遺症など重大な賠償責任を負う事態になった場合は数千万円の賠償金が発生することもあります。そのような事例から、現在は保険料は数百円でも賠償責任補償は1億円などのプランが多くなっているので、このような事態にも対応できます。
- スキー場に向かう道中のパーキングエリアでケガをしてしまった
スキーを目的に家を出発した時点から、家に帰り着くまでの間の事故が補償されるので、道中の事故においても補償されます。
補償されない事例
- 携帯電話を落として壊してしまった
携帯電話は携行品損害補償の対象外となっている保険が多くなっています。(国内旅行保険をベースにした保険であれば対象になる場合もあります。)
- 財布をトイレに置き忘れ、取りに戻った時にはなくなっていた
置き忘れ、紛失は補償されません。置き引きは盗難ですが、置き忘れたという過失があるため、対象外となってしまいます。
- レンタルしていたボードを折ってしまった
携行品損害補償は契約者の持ち物に対しての補償のため、レンタル品や友人から借りている物に関しては対象外となります。
スキー保険を選ぶ際の注意点
現在はスキー保険という名称で販売されている保険はごくわずかです。その代わり、スポーツ保険やレジャー保険といった年間の傷害保険をベースとした保険と、スポット契約の国内旅行保険をベースとした保険と2種類があります。
どちらをベースにしているかで補償の内容が違ってくる部分がありますので、選ぶ際にはご自身に必要な項目をしっかりチェックしてから選びましょう。
携行品の対象範囲に注意
国内旅行保険をベースにした保険ですと、スマートフォンやタブレット端末なども携行品に含まれる場合が多いですが、年間傷害保険ベースのものだと対象外になっていることがほとんどです。買ったばかりだから不安、という方は対象になっているか確認しておいた方がよいですね。
包括保険に入っているスキー場もある
スキー場来場者全てを対象にした包括保険(スキー場入場者保険)に加入しているスキー場もあります。この保険に加入しているスキー場であれば、万一他人に損害を与えた場合の賠償責任補償が受けられます。またリフト券購入者には自身のケガに対する補償も受けられるというスキー場もあります。
スキー場はどこでもいい、という方であればこのような包括保険に加入しているスキー場を選ぶのもよいでしょう。
1事故の上限額を要チェック
例えば携行品損害補償の上限が30万円であっても、1事故の上限は10万円などと設定されている保険もあります。そのような場合は例え20万円のボードが盗難にあったとしても、支払われる保険金は10万円になります。また、免責金額が設定されていて、3,000円は自己負担などと決まっている場合もあります。
損害額が全額支払われるとは限りませんので、所有している用品の価値と照らし合わせて必要な保険を選びましょう。
バックカントリーを滑るなら特約を
バックカントリーを滑走する場合は通常のスキー保険では対象外になります。バックカントリーの滑走はリスクが高いため、山岳保険など運動危険保障を特約でつけられる保険を検討されてはいかがでしょうか。
示談交渉サービスはあるか
スキー場での事故は車の事故とは違って揉めることが多いようです。車の事故のようにドライブレコーダーもありませんし、そもそも交通ルールが存在していないので、どちらが悪かったと判断することが難しいのです。また、ヘルメットやゴーグルで顔がはっきりわかりにくいため、逃げられてしまいやすいことや、吹雪いていて状況がよく見えないなど、スキー場特有の難点があります。事故の相手との交渉もその場でできるとも限らないので、後から目撃者を探すことも大変です。
そのような状況では交渉が難航する場合が多いため、示談交渉サービスがあればとても助かります。現在はほとんどの保険についているようですが、加入の際には確認しておくことをおススメします。
スキー保険以外の保険でカバーするなら
スキー保険は使う時期が限られているので、他の保険でカバーできるのであれば新たに加入する必要はありません。では、それぞれの補償に対してどのような保険でカバーできるのかを見ていきましょう。
医療保険・傷害保険
ケガの補償については医療保険や傷害保険でも対応できます。万一死亡・後遺障害になってしまった場合には生命保険でも可能です。
スキー保険そのものが、傷害保険をベースに追加の補償をプラスしたものなので、年間の傷害保険に加入されている方はそちらに特約をつけることでほとんどカバーできると言えます。
個人賠償責任保険
他人への賠償責任補償は、個人賠償責任保険や火災保険・自動車保険の特約である賠償責任補償で対応できます。個人賠償責任保険だけで加入している方は少ないかもしれませんが、実は火災保険や自動車保険に特約がついていた、というケースが多いため、新たに加入する前に現在加入中の保険を1度確認してみてください。
火災保険や旅行保険の携行品損害補償
火災保険についている家財の保険でも携行品損害をカバーすることができます。これは「持ち出し家財」として、身の回りの品が損害を受けた場合に補償されます。
国内旅行保険にも必ず携行品損害補償がついていますので、こちらでも対応可能です。ただし、火災保険の携行品と旅行保険の携行品は対象物が違いますので、保険でカバーしたい物が対象になっているかという点で選ぶのもよいでしょう。
国内旅行保険は自動付帯しているクレジットカードが多くあります。自動付帯しているカードを持っていれば、その補償内容で足りない部分のみ別の保険や特約でカバーすることで保険料は安く抑えることができます。
しかし旅行代金をカードで支払った場合のみ適用されるなどの規定もありますので、事前に確認が必要です。
国内旅行保険の救援者費用
国内旅行保険はほとんどが救援者費用もついています。
スキー場は山の中ですから、少し道を逸れると途端に迷ってしまうこともよくあります。天候によっては非常に視界も悪くなりますので、救援者費用はぜひつけておきたい補償です。海外でスキーをする場合は特に救援者費用が非常に高額になるケースがあるため、クレジットカード付帯の海外旅行保険を利用する場合は、金額が不足していないかどうかもチェックしておきましょう。
スポーツ保険やレジャー保険
現在スキー専用保険の取り扱いは少ないため、ほとんどがスポーツ保険やレジャー保険の中にスキーやスノーボードも含まれるという形になっています。スキューバダイビングやゴルフなど他のスポーツもされる方は、総合的なスポーツ保険をかけていれば広い範囲で補償されるので安心です。
家族でスキーやアウトドアを楽しみたい方には、レジャー保険もおススメです。
スキーやスノーボードはもちろん、ハイキングや海水浴も補償されるので、1年中安心してレジャーを楽しむことができます。日常の事故にも対応できる物も多いので、スキーだけでなく他のレジャーなどの頻度と照らし合わせて検討してください。
自動車保険の特約でも
自動車保険の特約でも、傷害補償と携行品損害補償を受けられる保険があります。
車を降りている間に起きた事故に対して補償され、もちろんスキー中のケガも対象です。こちらの特約も家族型が選べるため、つけておけば家族全員の補償が得られるため安心ですし、その特約で保険を利用しても等級は下がらないのも嬉しいところです。
スキー保険の加入方法
ではスキー保険はどこで加入することができるのかご紹介したいと思います。
保険代理店で加入
他の保険と同じように、保険代理店で加入できます。郵送の場合は申込用紙のやり取りに時間がかかるため、スキーの予定が決まっている場合は早めに手続きされることをおススメします。
コンビニで加入
コンビニの端末から加入できる保険もあります。コンビニが開いている時間であればいつでも加入できます。
インターネットで加入
インターネットで24時間手続き可能な保険もあります。支払いはクレジットカードが使えたり、携帯電話の料金とまとめて支払ったりできますし、出発当日でも直前でも思いついたらすぐに加入できるのがメリットです。
スキー場で加入
加入するのをすっかり忘れてしまっていた、という方のためにスキー場で加入できる保険を用意しているところもあります。ただし、事故が起こってからの加入では補償されませんので、着いたらすぐに加入しておきましょう。
ツアーと一緒に申し込む
シーズン中は格安のバスツアーもたくさん出ますので、利用される方も多いでしょう。ツアーの場合もツアー申し込み時に保険に加入することができます。
バスツアーは人数が多く団体割引で保険料が安くなっています。補償の内容を変更することはできませんが、ツアーの申し込みと一緒に済ますことができるので、自分で保険を選んだり別で申し込んだりする面倒がないことがメリットです。
スキー保険の請求方法と注意点
では実際に事故が起こってしまったらどうしたらいいのか、いざという時パニックにならないよう事前に把握しておきましょう。
スキー保険の請求方法と注意点
スキー場という特殊な環境での事故になるので、請求時に必要な物が足りずに保険金がおりなかった、とならないためには事故直後の対応が重要です。
【ケガをした、させてしまった時】
- パトロールを呼ぶ
- 調書を取り、事故証明書を発行してもらう
- 相手の連絡先を聞く
- 病院で診断書をもらう
- 保険会社に連絡する
- 後日、保険金請求書や事故証明書など必要な書類を送付する
- 保険金が振り込まれる
事故の場合パトロールは必ず呼びましょう。スキー場の事故では相手に逃げられてしまったり、その場ではたいしたケガはないと思っても後から症状が出てきたりということも多いので、当事者だけでその場を解決しようとすることは避けてください。
事故が起こった証明書はパトロールに報告していないと、後から請求しようと思っても出してもらえない可能性が高いので、忘れずもらっておきましょう。
【スキー板などを破損した時】
- スキー場のスタッフに報告し、事故証明書を発行してもらう
- 破損した用品の破損状態がわかる写真を数枚撮っておく
- 保険会社に連絡する
- ショップで用品の修理見積書か修理不能証明書を発行してもらう
- 保険金請求書、見積書など必要書類を送付する(同行者の署名捺印も必要)
- 保険金が振り込まれる
事故証明書は必要ない保険会社もありますが、念のためスキー場での事故であることを証明できる書類として準備しておいた方がよいでしょう。
補償額は、消耗分を差し引いた現価か修理額のどちらか金額が低い方になるので、購入時の金額が出るわけではありません。
また、盗難の場合は警察への届け出が必須になります。
まとめ
スキー保険とは結局のところ、傷害保険に追加の補償をつけた保険商品、ということになります。ですから、傷害保険を掛けている方は賠償責任補償や救援者費用などの特約をプラスすることでカバーすることができ、スキー単独で保険に加入する必要性はないと言えます。
ゴールドカードなど年会費の高いカードを持っている方は、国内旅行保険の内容も充実しているため、そちらでほとんどが補償できる可能性もあります。
元々あまり保険に加入されていない方は、スキーに行く予定に合わせてスポットで1泊2日数百円などの短期のスキー保険がコストパフォーマンスもよくおススメです。
保険はたくさん加入していれば良いというものはではないので、補償が重複しないよう無駄を省きつつ、賢く選ぶことが大切ですね。