がん保険|終身型と定期型の特徴と見直しのポイント

がん保険には大きく終身型と定期型の2種類に分けられます。それぞれの仕組みや保障内容の特徴、見直しのポイントなどについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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がん保険には終身型と定期型の二つのタイプがあり、がん保険を選ぶときには多くの人が「終身型と定期型はどちらが良いのか」という疑問に直面します。

がんは高齢になるほど罹患率が高くなることや、再発や転移のリスクもあることから「がん保険に入るなら一生涯保障が続く終身型一択だ」という意見もよく聞かれます。

その一方で、一定期間のみの保障となる定期がん保険は、保険料の安さや独自の保障内容で人気が根強いのも事実です。

この記事では、がん保険の終身型と定期型の特徴や保障内容、保険タイプ別に見直しをする上でのチェックポイントを解説していきます。新たにがん保険に加入する人、保険の見直しをしたい人双方に必要な情報を解説していくので、ぜひ参考にしてください。

1終身がん保険の特徴

まずは、終身がん保険について、仕組みやどんな人に向いているかということを確認していきます。

1.1終身型の仕組み

終身がん保険は、「終身」というその文字通り、保障が一生涯続くことが特徴です。70歳や80歳で保障が終わりとなってしまう保険と比較して、長生きに備えられるというメリットがあります。がんは、高齢になればなるほど発症率が高くなる病気であるため、保障だけでなく安心感を得ることができるのも終身保険の利点です。

一般的に保険料は生涯変わりません。この保険料は、保険に加入した年齢を基準に算出されるため、若いうちに終身保険に加入すると安い保険料が生涯続くことになります。

しかし、終身がん保険の保険料は生涯の保険料を一定としているため、若い世代のうちは次に説明する定期がん保険と比較して保険料が割高となっています。若いうちは割高ですが、高齢になればなるほど定期保険に比べ保険料は圧倒的に割安となってくるので長期的に加入することでお得感を実感することができます。一方で、若いうちだけ加入して中途解約をしてしまうと損をしてしまうことになります。

終身がん保険は、生涯一定の保険料なので、将来の支出の見通しもつきやすいです。支払方法には、生涯保険料を支払い続ける「終身払い」と、収入源のある現役のうちに計画的に保険料を納めることができる「短期払い」(「有期払い」と呼ぶこともあります)があります。短期払いを選択した場合には、老後の負担を軽くすることができるというメリットもありますが、早くに亡くなってしまったとしても払った保険料は返ってこないので支払方法は良く考えて選ぶことが大切です。

保険会社によりますが、終身がん保険には「払込免除特約」という制度があります。がんになった場合には、それ以降の保険料を払うことなく一生涯保障を受けることができます。この特約を付加すると保険料は高くなりますが、がんになったときの経済的負担を減らすことができます。

1.2終身型が向いている人

終身がん保険が向いている人は次の通りです。

  • 一生涯の保障がほしい
  • 計画的に保険料の支払いをしたい
  • 妻や子どもなど、扶養すべき家族がいる
  • 退職金や老後の生活資金に不安がある
  • がん家系である

退職金や老後の生活資金に不安がある場合には、終身保険の60歳払込などの短期払いを選択することでその不安を減らすことが可能です。

また、がんは遺伝性の病気でもあるため身近な親族でがんに罹った方がいる場合には、終身がん保険に加入しておくと安心です。

2定期がん保険の特徴

次に、定期がん保険の仕組みや向いている人をチェックしていきます。

2.1定期型の仕組み

定期がん保険は、保険期間が5年や10年など一定期間限定となっていることが特徴です。保険期間が満了しても自動更新されるものが一般的ですが、更新のたびにその契約時年齢を基準に保険料が算出されるため高齢になればなるほど保険料は上がっていきます。

終身がん保険に比べると、同様の保障内容であっても若い世代では割安な保険料、高齢になると割高な保険料となる傾向があります。

自動更新がされていっても、70歳や80歳で保険が終期となってしまうことが一般的で、生涯の保障を得ることはできません。がん保険は、加入する際に健康告知があり、一度重い病気をしてしまうと加入することができなくなってしまうため更新のタイミングで保険料が高額になり自動更新を断念せざるを得ない場合や、70歳や80歳で保険が終わってしまったときに新たな保険に入ることができなくなるリスクがあるため注意が必要です。

しかし、定期がん保険には終身がん保険にはない自由診療給付といった保障内容がある保険もあり、その保障を得るために定期がん保険を選択する人もいます。一生涯の保障というわけにはいきませんが、保障内容のバリエーションは終身型よりも豊富なのです。

2.2定期型が向いている人

定期がん保険が向いている人は次のとおりです。

  • 子育て中や住宅ローンの支払いのある経済的責任が重い期間のみスポットで保険に加入したい
  • 子宮頸癌や乳がんなど女性特有のがんの発症率が高い30代や40代のうちのみスポットで保険に加入したい
  • 定期的に保険の見直しをしたい
  • 経済的余裕はないががん保障は欲しい若い世代
  • 終身保険に加入しているが、一時的に保障の上乗せをしたい
  • 自由診療の保障がほしい

若い世代では、「終身がん保険と比べて安い」という理由で定期保険に加入する人が多いのが現状です。

また、より手厚いがん保障を得たいという場合に終身がん保険の上乗せとして定期がん保険に加入する人もいます。保障のバリエーションを増やすことが可能です。

3終身型と定期型の保障内容の比較

ここでは、終身がん保険と定期がん保険の保障内容を見ていきます。終身がん保険と定期がん保険の保障内容で大きく異なるのは、自由診療給付金です。この保障は定期型のみに存在するものです。その他の保障は基本的に終身型、定期型双方にあるものですが、保険ごとに条件が異なっている場合もあるので保障の中身を知った上でご自身が重視したい保障内容についてはより条件の良い保険を選ぶということを心がけてみてください。

3.1診断一時金

診断一時金とは、がんと診断された場合に100万円などまとまった金額が給付される保障です。注目すべきポイントは、診断一時金が給付される回数と期間の条件です。1回限り有効なもの、複数回の給付が可能なもの、2回目以降の給付を受け取るためには2年以上期間が空いていることが条件となっているものなど様々です。診断一時金の保障を付加するかしないかだけではなく条件を比べてより好条件のものを選ぶようにすると良いでしょう。

3.2入院給付金

入院給付金は、入院した日数に応じて日額5,000円や10,000円などの金額が給付されるものが一般的です。

がん保険の入院給付金は限度日数がなく、入院している限り無制限で給付されることが特徴です。近年は、医療技術の進歩で日帰り治療が増えていることや、患者を長期入院させずに回転率を上げなければ病院側が儲からないなどの経営上の事情によって入院が短期化しており、入院給付金に重きを置かないがん保険が増えてきています。

3.3通院給付金

通院給付金は、がん治療で通院した場合に日数に応じて給付される保障です。入院後の通院のみを対象としているもの、入院の有無に関わらず手術、抗がん剤、放射線治療といった三大治療を受けた場合を対象としているものなど、保険によって条件が異なってきます。

入院が短期化している代わりに、通院治療は近年増加してきているので給付を受けられる条件をしっかり確認しておくことが大切です。

3.4三大治療給付金

三大治療給付金は、入院・通院を問わず手術、放射線、抗がん剤の三大治療をした場合に給付金を受け取ることができる保障です。

手術や放射線の給付金は主契約に含まれていることが多いですが、抗がん剤治療の給付金は特約となっていることやそもそも保障のラインナップにないというケースも多いのが現状です。抗がん剤治療は一度きりの投与で終わるものではなく数週間間隔を空けて複数回行うことで効果が出るものなので、治療が長期化しやすいという特徴があります。また、副作用も大きいことから就業不能リスクも高いため、抗がん剤治療に備えた保障を付加したいという意見も多いです。その場合には、抗がん剤治療にも対応しているかどうかという基準で保険を探してみることも必要です。

3.5自由診療給付金

終身がん保険と定期がん保険で大きく差がつくのが自由診療給付金の有無です。自由診療給付金は現状では定期がん保険のみに存在する保障内容です。

自由診療とは、健康保険が適用にならない医療技術や薬を用いた治療のことを言います。海外では承認されているが、国内では未承認の薬剤を使った治療などもこの自由診療に分類され、医療費は全額自己負担となります。

自由診療給付金では、この実損分が給付されます。経済的理由で治療を諦めずに済み、治療の幅が広がるというメリットがあります。

3.6先進医療特約

先進医療も自由診療と同様に公的健康保険が適用にならない治療です。全額自己負担という点では同様ですが、先進医療は厚生労働省が定めた限られた保険外治療のことを示し、がん治療に関する先進医療は具体的に言うと陽子線治療、重粒子線治療があります。いずれも一回の治療ごとに300万円前後かかる高額な治療方法です。これらの治療を受けた場合に、治療費や治療のための交通費・宿泊費が通算で2,000万円まで保障されるのが先進医療特約です。自由診療給付金とは異なり、終身型、定期型双方で付加できる保障です。

3.7女性特約

子宮がん、乳がんなど女性特有のがんになった場合に、入院給付金などの保障額が一定割合増額されるのが女性特約です。保険によって、どの保障内容が優遇されるのかが異なるので加入前によく確認することをおすすめします。

そもそもの給付額が十分足りていると考えるのであれば特段女性特約を付加する必要はありませんが、30代、40代など女性特有のがんになりやすい年代のうちは付加しておいて、その時期が過ぎたあとに特約を外して保険料を下げるという方法も可能です。一般的に保険の特約は中途付加をすることはできませんが、契約時に付加していたものを外すということは可能です。

4終身がん保険に入っている人の見直しのポイント

ここからはがん保険の見直しのポイントを解説していきます。まずは、今加入しているがん保険が終身タイプだった場合にチェックしていただきたい項目を見ていきます。

4.1先進医療特約があるか

先進医療特約とは、がんの陽子線治療重粒子線治療など保険対象外の先進医療に関わる治療費や交通費、宿泊費などを保障してもらえる特約ですが、この特約が一般的になったのは2006年頃です。20年以上前に加入したがん保険などであれば先進医療特約は付いていないでしょう。

がん治療の先進医療は1回約300万円と高額で、自己負担での治療は容易ではありません。先進医療が受けられることを保険加入のメリットとして考えるのであれば先進医療が付いていない古い保険を最新のものに切り替えるなどの検討をすることをおすすめします。

ただし、先進医療が付いていない保険でも、その保険を活かして先進医療特約のみ新たに付加できる場合もあるので保険会社に確認してみることも大切です。また、先進医療特約付きの医療保険に加入している場合は、がん治療の先進医療保障もカバーされているのでがん保険で付加する必要はありません。

4.2払込免除特約があるか

終身タイプの保険には払込免除特約がある場合が多いです。がんになった場合にはそれ以降の保険料が免除されるというものです。

がんになって治療をしながらでも払込が可能と判断できる保険料であれば付加する必要はありませんが、保険料が高額で病気の治療をしながら払っていくのが大変そうだと考えるのであれば付加するメリットがあります。もちろん、その分保険料は高くなるので金額と安心のバランスで見極める必要があります。

払込免除特約のある保険に加入したいが、今の保険にはついていないという場合には新たな保険に入り直し、払込免除特約を付けるという見直しをすることになります。

4.3夫婦型がん保険に加入している場合

夫婦型(家族型と呼ばれる場合もあります)がん保険とは、一般的にメインの被保険者を夫として、妻のがん保障をオプションの形で付加するタイプのもののことを言います。

この保険に加入している場合、メインの被保険者が亡くなったときの取扱いをしっかり確認しておくことが大切です。注意していただきたいのは、メインの被保険者が亡くなったときにその保険契約自体が消滅してしまうものや、一人分の保障が減ったにも関わらず保険料は変わらず割高になってしまうものです。このようなものでは、終身型のつもりで加入していても配偶者にとって生涯の保険とはならないからです。また、離婚した場合にも配偶者の保障が消滅してしまうというリスクもあります。

夫婦型がん保険に加入している場合には、配偶者にとっても有利なものかを確認し、生涯続ける上で不利になるポイントがあるのであれば配偶者のオプションを外し、配偶者は夫婦型でない新たな終身がん保険に加入しておくと安心です。

4.4解約ではなく追加という方法も

加入しているがん保険を見直していくと「診断一時金の保障がなく不安なので一時金のあるものに切り替えたい」「通院治療をした場合の保障がないので、通院で抗がん剤治療や放射線治療をした場合の保障もほしい」など様々な要望が出てくるかもしれません。

希望の保障がある保険に切り替えるというのも一つの方法ですが、今ある保険を活かし「診断一時金のみのがん保険」や「抗がん剤、放射線治療保障のみのがん保険」など足りない分だけ補うということも可能です。がん保険は従来のバランス型と呼ばれる入院給付金、手術給付金、診断一時金がセットになったタイプのみではなく、診断一時金を主契約とする一時金型、治療ごとの給付を主契約とする治療給付型などバリエーションが多様化しているのです。複数の保険を組み合わせることで、オーダーメイドのように欲しい保障が揃った保険を得ることができます。

5定期がん保険に入っている人の見直しのポイント

次に定期がん保険の見直しポイントについて解説していきます。

5.1一生涯の保障の必要性を考える

定期がん保険で懸念されるポイントは、なんと言っても「一生涯の保障でない」ということです。70歳や80歳になってしまったときに保険が切れるリスクや、更新によって保険料が高額になり解約せざるを得なくなるリスクがあります。

このようなリスクが付き物であることから、若いうちは終身がん保険と比べて割安となる定期がん保険に加入していたとしても、一生のうちのどこかのタイミングで終身がん保険に切り替えるというケースが多いのも現状です。

一度大きな病気になってしまうとがん保険に加入できなくなってしまうため、一生涯の保障の必要性を定期的に考え直し必要があれば見直しをすることも大切です。

5.2ライフステージの変化を見極める

ライフステージの変化があったときに保険の見直しをすると現状に適した保障を備えられたり、保障の無駄を省くことができて節約につながるなどのメリットがあります。

生涯の保険料を均して支払っているため若い世代では割高な保険料となっている終身がん保険と比較すると、定期がん保険は途中でやめても損にならないと考えることができます。そのため、定期保険は保険の見直しのハードルはより低いと言うことができます。

この定期保険の長所をしっかり活かすためにも、結婚、出産、子どもの独立、定年退職などのライフステージの変化をしっかりと見極めて、その都度「定期保険のまま継続して良いのか」「増やすべき保障、削るべき保障はないか」ということを確認することをおすすめします。

6番外編|がん保険を選ぶ上で知っておきたいこと

最後に番外編として、がん保険を選ぶ上でぜひ知識として押さえていただきたいことを紹介していきます。

6.1公的保険制度「高額療養費」とは

「高額療養費制度があるから民間の保険には加入しない」などという意見を聞いたことがあるかもしれません。

高額療養費制度とは、病院や薬局で支払う健康保険対象となる医療費が一定額を超えた場合にその金額を超えた分が国から返ってくる制度のことを言います。

年収が370万円から770万円の方であれば、この制度によってひと月の医療費の上限額は8万円程度になります。貯蓄があり、この金額を負担することに不安がなければあえて民間の保険に加入する必要がないというケースもあります。

また、公的保険対象の治療は高額療養費制度に頼り、民間の保険では先進医療や自由診療などの高額療養費制度対象外となっている医療費に重点を置くという考え方もできます。

6.2掛捨ては損か

保険には解約をした場合に返戻金のない掛捨てタイプと、返戻金のある貯蓄機能がついたタイプがあります。

掛捨てタイプと貯蓄タイプを比較すると、一般的に掛捨て保険の方が保険料は割安になっています。

貯蓄性の保険の場合には、一定期間保険に加入しなければ返戻金が増えないものが多くその時期が到来する前に中途解約をしてしまうと割高な保険料を支払ってきたわりには期待する額の返戻金が戻ってこないというケースもよく見受けられます。

「掛捨て保険は損」と考えている人も多いですが、実際には貯蓄性保険と比べて割安な保険料で、切り替えたいときにタイミングを気にせず切り替えられるなどのメリットがあり掛捨て保険は使い勝手が良いという見方もできます。

特に、がん保険は医療の進歩によるがん治療の変化に合わせて年々重視すべき保障内容が見直されてきている分野なので「返戻金がないから損」と考えるよりもフレキシブルに保険を見直せるというメリットに注目して選ぶのも良いでしょう。

6.3免責期間とは

がん保険の医療保険や生命保険との違いの一つに「免責期間」が設けられていることが挙げられます。

免責期間とは、保険契約後、保障が始まるまでの一定期間のことを言います。不填補期間、待機期間、待ち期間などと表現されることもありますが、いずれも同義です。

がん保険では一般的に90日間の免責期間を設けています。この期間中にがんと診断されたとしても保障対象にはなりません。

そのため、がん保険を見直しする際には、新しい保険の免責期間が完了し保障が始まるまでは旧保険を解約せずに継続しておくことをおすすめします。

6.4上皮内がんの取り扱い

「がん」という表現で一括りにされがちですが、がんには大きく分けて悪性新生物と上皮内新生物(上皮内がんとも呼ばれます)があります。これらの違いは、がん細胞が基底膜を超えているかどうかです。

悪性新生物は、がん細胞が基底膜を超えた状態となっており再発や転移の可能性があるものです。悪性新生物になれば、例外なく該当するがん保険の保障が降りると考えて良いでしょう。

一方で、上皮内がんは、がん細胞が基底膜を超えていない、いわばその部分を手術などで切除してしまえば他に転移したり、再発するリスクも低いものです。「がんの一歩手前の症状」などとも言われ、生存率も高いことから保険会社によって上皮内がんはがん保障の対象外としていたり、満額の保険金給付にならないなどの条件が付いています。加入前に上皮内がんの取扱いをチェックしてみてください。

7まとめ

この記事では、終身がん保険と定期がん保険の特徴や保障内容、見直しをする上でのチェックポイントを解説してきました。がん保険の種類は終身型、定期型ともに非常に多く、選ぶ保険が違えば保障される内容も大きく異なってきます。保険の中身をよく知った上でがん保険を選ぶこと、一度加入した保険でも定期的に見直しをすることがいざというときの安心につながります。ご自身にあったがん保険を選ぶために、ぜひ参考にしてみてください。

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