学資保険と終身保険|学費・教育資金の積立と保障の考え方

近年、学資保険の代わりに終身保険を使うことが増えています。終身保険は、教育資金の積立をしつつ親の死亡保障の上乗せができるというメリットだけが注目されがちですが、解約時のペナルティなど学資保険と比較して不利になる点もあります。この記事では、学資保険と終身保険をよく比較した上で選択いただけるよう5つの違いや向き・不向きをまとめています。
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学資保険加入のために保険相談に行くと、終身保険を提案されることが増えています。

学資保険と終身保険はどちらも積立で教育資金準備ができるという共通点がありますが、保障の面で違いもあります。この記事では、学資保険と終身保険の違いや、向き・不向きを解説していきます。

1.学資保険とは

学資保険は、子どもの教育費の貯蓄を目的とする積立タイプの保険です。現在は予定利率が下がっていますが、親の死亡時の保険料払込免除特約の制度など貯蓄にはない魅力があるため今も需要のある保険商品です。

学資保険には、貯蓄性を重視する貯蓄型学資保険と、子どもの医療保障や死亡保障なども付いた保障型学資保険があります。

今現在の予定利率では、保障型学資保険に加入すると満期時の返戻率が100%を割り込んでしまうため、契約される学資保険の多くが貯蓄型学資保険となっています。

2.終身保険とは

終身保険は、死亡や重度障害に対する一生涯の保障を得ることを目的とする保険です。

学資保険の代わりに利用されることが多い終身保険は、低解約返戻金型終身保険というタイプのものです。保険料払込期間の解約返戻率を抑えることで、払込満了後の返戻率や死亡保険金を高く設定していることが特徴です。

低解約返戻金型終身保険の中には、保険料払込期間を10年や15年にすることで子どもの大学進学時までに返戻率を100%以上にすることが可能な商品もあります。そのため、子どもの教育費の積立をしながら親の死亡時の保障を充実させることができ、学資保険代わりに利用する人が増えています。

商品によっては、親の重度障害時に保険料払込免除となるものもあります。

3.学資保険と終身保険の比較

ここでは、学資保険と終身保険の5つの違いを取り上げて比較していきます。

3-1.加入できる時期

学資保険は、終身保険と比較して加入できる時期が限られています。

子どもが生まれたあとでなければ学資保険には加入できないと思っている人も多いですが、多くの学資保険では出生予定日の140日前から加入することが可能です。

そして、6歳前後を契約年齢の上限としているケースが多くなっていますが、一部の保険では3歳までを加入可能年齢としている例もあります。したがって、早めに検討する方がより広い選択肢から選ぶことができると言えます。

一方で、終身保険は親が被保険者となるため子どもの年齢に関係なくいつでも加入することが可能です。学資保険のように出産予定日の140日前を待たずに、妊娠がわかった段階で先取りして加入するということもできるのです。

契約年齢の上限は被保険者である親が75歳になるまでとしている保険商品が多いですが、学資保険代わりに使う場合は、保険料払込期間および返戻率が100%を超えてくるまでの期間を考えると学資保険同様6歳前後(10年間積立をして2年間据え置く)が上限と言うことができます。

いずれの保険も早く始めれば始めるほど返戻率が高くなる特徴があります。

3-2.受取の時期

学資保険は、主に18歳(早生まれの場合は17歳)で満期保険金として一括で受け取るタイプと、中学、高校、大学と進学するごとにお祝い金としてこまめに受け取ることができるタイプに分かれます。どちらのタイプにせよ、子どもの進学に合わせたタイミングに受け取ることとなります。

終身保険の場合は、そもそも満期がない保険商品のため学費として使う場合には中途解約をすることとなります。学費を預金で賄うことができるため解約が不要だったなどの場合には解約せずにそのまま死亡保険として持っておくことができますし、子どもの大学院進学費用、海外留学費用、結婚費用もしくは自分たちの老後資金など柔軟に受取のタイミングをずらすことができます。解約時期を先送りする分には返戻率が減る心配もなく、むしろ解約返戻金が増えていくというメリットがあります。

3-3.中途解約時の返戻率

中途解約時の返戻率は学資保険がより高く、払込保険料の90%程度となります。

一方で、保険料払込期間中の終身保険の返戻率は50%から70%となっており、中途解約をすると大きく元本割れをする仕組みになっています。学資保険代わりに使う終身保険は低解約返戻金型終身保険というものが一般的で、死亡保険金や払込期間完了後の返戻率を大きくするために中途解約のペナルティが大きくなっているのです。

3-4.受取時の返戻率

学費として受取をするときの返戻率は、契約者、被保険者の加入時年齢や性別、加入のタイミングにもよるため一概には言えませんが、いずれも100%〜110%の範囲内となるケースが一般的です。

低解約返戻金型終身保険を選択すると商品によっては学資保険より返戻率が良くなる場合もあります。ご自身の年齢や性別の条件に合わせて設計書を作ってもらい見比べてみてください。

3-5.保障内容

貯蓄型の学資保険の保障には、契約者である親が死亡したときの保険料払込免除特約があります。これは、未払いの保険料を支払うことなく予定していた満期保険金を受け取ることができるというものです。保険料払込免除となった場合も契約時に設定したプランが継続され、保険金の受取時期は進学に合わせたタイミングとなるのが特徴です。

一方、終身保険では被保険者である親が死亡した場合には、亡くなったタイミングで死亡保険金を受け取ることとなります。この死亡保険金は、一般的に払込予定の保険料と比べて高額となっています。支払う予定の保険料以上の保障が付くということが終身保険の特徴です。

4.学資保険と終身保険の選び方のポイント

次に、前章で見てきた学資保険と終身保険の違いを踏まえて、選び方のポイントを見ていきます。

4-1.貯蓄の使途を考える

学資保険と終身保険の選び方のポイントの一つ目は、貯蓄の使途を確認するということです。必ず学費として使う資金であれば、自動的にそのタイミングで満期が来る学資保険が向いていると言えます。

しかし、積立で準備する資産以外にも定期預金などの金融資産があり保険で積み立てた資金を学費に充てずに済む可能性や進学しない可能性がある場合には、解約返戻金を据え置いておくことができる終身保険が向いています。終身保険は使途や使う時期が定まっていなくても長く置いておく分にはデメリットとなることはありません。一部解約も可能となっており、自由度が高いと言えます。

4-2.既加入保険の保障内容を確認する

前章で見てきたように、親の死亡時の保障がより大きいのは終身保険です。

既に、定期保険や収入保障保険などで親の死亡時の保障がしっかり準備できている場合には学資保険の払込免除特約で十分と言うことができます。

しかし、親の死亡時の保障が十分ではないと考える場合には、学資保険代わりに終身保険に加入することで死亡保障を用意することが可能です。その上、終身保険の場合には定期保険や収入保障保険などのように掛捨てではなく、貯蓄をしながら死亡保障を増強できるというメリットがあります。

4-3.中途解約の可能性の有無を考える

中途解約をしたときにより大きな元本割れを起こす可能性があるのは終身保険だということを前章で確認しました。

積立タイプの保険で中途解約をする理由として多いのは、生活が苦しくなったことや、ローンなど大きな買い物をするときに頭金として使わなければいけなくなったなどの経済的理由や、私立中学や高校に入学するための資金が必要になったなどの進路変更が多いです。

中途解約の可能性をよく吟味して、少しでも解約の可能性があるのであれば学資保険を選択しておいた方が元本割れのダメージは小さく済むこととなります。

5.学資保険がおすすめの人

ここでは、終身保険よりも学資保険が向いている人の特徴をまとめていきます。

5-1.貯蓄の目的は教育費一択

貯蓄の目的が教育費と定まっており、他の使途で利用するために据え置きをするなどの可能性がない場合には学資保険を選択するのがおすすめです。

使途を柔軟に変えることができる終身保険では、返戻率が100%を超えた途端に学費以外の別用途で使ってしまい学費が足りなくなるという例もあります。

学費を貯めるという確固たる考えがある場合には学資保険の中で返戻率を比較して、最も条件の良いものに加入すると良いでしょう。

5-2.私立の中学・高校へ進学する可能性がある

私立中学・高校へ進学する可能性がある場合には、あらかじめ中高の進学額資金が用意されている学資保険に加入するのも一つの方法です。返戻率は、大学進学時にまとめて受け取るタイプの学資保険に比べて下がる傾向がありますが、計画的に貯蓄をしたいという場合には選んでも良いでしょう。

また、転勤などで子どもの教育環境が変わったことにより当初予定のなかった私立中高へ進学することとなった場合でも、学資保険であれば多少の元本割れは起きてしまいますが終身保険よりも少ないダメージで中途解約をして資金を用意することが可能です。少しでも私立への進学の可能性がある場合には学資保険を選択した方が無難と言えるでしょう。

5-3.既に手厚い死亡保障がある

定期保険などで既に一家の大黒柱に手厚い死亡保障を備えているのであれば、終身保険で死亡保険を増やす必要性は低く、学資保険で十分と言うことができます。

5-4.万が一のときのお金の管理が不安

親が死亡するとすぐに死亡保険金を受け取ることとなる終身保険に対し、学資保険は親に万が一のことがあった場合でも満期時期は変わりません。したがって、もしものときのお金の管理が不安という場合にも学資保険は向いています。

進学時期よりも早くに終身保険で死亡保険を受け取ってしまうと、本来は学費に充てるべきところ生活費の補填に充ててしまうケースもあり、いざ学費が必要なときに残っていないという可能性も考えられます。

絶対に学費を確保したいという場合にはやはり学資保険がおすすめです。

6.終身保険がおすすめの人

次に終身保険をおすすめするタイプを解説していきます。

6-1.柔軟に貯蓄の使途を決めたい

子どもが進学するかわからない場合や、他にも貯蓄があり積立保険で貯めた資金は必ずしも学費になるとは限らないなどの場合には、状況に応じて柔軟に使途変更ができる終身保険がおすすめです。

子どもに大学院進学や留学をさせたい場合にも、終身保険を契約しておくことで必要な時期まで据え置くことができ返戻率も上昇します。

6-2.親の死亡保障が不十分

親の死亡保障額が家族構成や家族の年齢に対して不十分な場合には、終身保険で学費を貯めることで死亡保障を大きく上乗せすることができます。

死亡保障額に不安がある人は、終身保険を選択することをおすすめします。ただし、終身保険を解約すると当然保障もなくなるので、それ以降も保障が必要な場合には学費の積立と死亡保障は別々で考える方が良いというケースもあるので注意が必要です。

6-3.金融資産に余裕があり、中途解約の可能性が低い

終身保険最大のリスクは積立期間中に低い返戻率で解約をしてしまうことです。終身保険を選択するのは、家計にある程度の余裕がある場合に限るのが得策です。

7.まとめ

この記事では、学資保険と終身保険の違いや、向き・不向きを解説してきました。

いずれも積立を継続しながら計画的に子どもの学費を用意できるという共通点がありますが、保障や解約時の返戻率に違いがありました。ご自身がどちらに向いているのかを見極めて加入することをおすすめします。

また、保険販売者の視点で学資保険と終身保険を比べると、実は終身保険の方が手数料の高い「儲かる商品」と言うことができます。丁寧な比較や向き・不向きの検討なしに終身保険ばかりを勧められた場合には、手数料の高さゆえに勧められている可能性もあるため、販売者の意見だけを鵜呑みにせずご自身で適正を見極める判断力も必要です。

学資保険と終身保険の選択に迷った場合には、ぜひこの記事の内容を参考にしてみてください。

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