終身保険の返戻率|予定利率の高い保険の選び方のポイント

貯蓄を目的として終身保険に加入する場合は、返戻率や予定利率の高さを比較することが重要ですが、それだけでは見落としてしまいがちな保障内容の違いもあるので注意が必要です。この記事では、返戻率だけでは比較できない保障内容の違いや返戻率を上げる方法など、予定利率の高い保険を選ぶ際のポイントをまとめています。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

終身保険の返戻率は、マイナス金利の影響によって低下しています。

しかし、利率の下がった今でも終身保険を学費や老後資金のための貯蓄手段として選択する人は多くいます。ここでは、返戻率や予定利率の高さを重視して終身保険を選ぶ際のポイントについて解説していきます。

1.終身保険の返戻率の基礎知識

まずは、終身保険の返戻率について考えるための基礎知識を確認していきます。

1-1.返戻率とは

終身保険の返戻率(へんれいりつ)とは、契約者が支払う保険料総額に対して、中途解約をしたときに解約返戻金として受け取ることができる金額の割合のことを言います。計算式で表すと「返戻率=解約返戻金÷払込保険料総額」となります。戻り率と言う場合もあります。

返戻率が100%であれば払込保険料総額と解約返戻金は同額、100%を下回っていれば元本割れを起こしていることとなります。

貯蓄性を重視して、終身保険に加入するのであれば100%を超える返戻率を期待したいというのが共通の認識です。

1-2.予定利率とは

予定利率とは、保険会社が契約者に約束する運用利回りのことを言います。保険会社は契約者が納めた保険料をもとに運用をしています。円建て保険であれば、日本の国債や社債で運用をし、米ドル建て保険であれば、アメリカの国債等で運用をします。

日本でマイナス金利政策が実施され、日本の政策金利が低下したため、保険会社はこれまでよりも運用成果を出すことが難しくなってしまいました。そのため、今現在、円建て保険は軒並み予定利率が低くなっています。

一方で、アメリカではトランプ政権に変わってから政策金利が上昇しています。米ドル建て保険の魅力が高まっているのは、予定利率が上がりより良い条件で運用ができる可能性が高くなったからなのです。

予定利率が高いと、運用で期待できる利益を見越して保険料が割り引かれるため、返戻率が上昇する傾向にあります。

逆に、昨今のように予定利率が下がると保険料が割高となるため、保険の返戻率も下がります。終身保険の返戻率が下がった要因は、予定利率の低下にあるのです。

1-3.「予定利率の高い保険」=「返戻率の高い保険」とは限らない

ここまで見てきたように、基本的には予定利率が高いときは返戻率も高くなります。例えば、バブル期には景気もよく金利も高かったため返戻率の高いお宝保険がたくさん存在していました。

しかし、実は予定利率が高くてもその利益の分が解約時の返戻率ではなく死亡保険金額に反映されているケースもあります。

単純に予定利率だけを比べて保険を選んだとしても、実際に設計書に記載された返戻率を確認してみると、予定利率が少し劣っている方の保険で返戻率が高いということもあるのです。

予定利率の高い保険を選ぶときには、利率だけで確認するのではなく実際の返戻率も確認してみることをおすすめします。

2.終身保険の返戻率の特徴

次に、終身保険のタイプ別の返戻率の特徴を解説します。4つのタイプの終身保険についてまとめています。

2-1.低解約返戻金型終身保険

低解約返戻金型終身保険の返戻率は、保険料を払い込んでいる期間は低く、払込期間満了後に大きく増えるという特徴があります。

保険料支払期間中の元本割れリスクは大きくなりますが、その期間さえクリアできれば返戻率が大きく上がることから貯蓄性が優れているということができます。現在、保険のプロがおすすめする終身保険の多くがこちらのタイプです。

2-2.従来型終身保険

従来型終身保険は、払込期間中の解約で大きく元本割れをしてしまう低解約返戻金型終身保険に比べ、保険料払込期間中も一定水準の解約返戻金を維持していることが特徴です。そのため、払込期間満了のタイミングで大きく増えることもありません。

元本割れリスクは低解約返戻金ほど大きくありませんが、近年は予定利率の低下の影響から返戻率100%を超えるのにより長い時間を要するため、こちらタイプの終身保険は減少しています。

2-3.積立利率変動型終身保険

積立利率変動型終身保険は、10年ごとなど一定期間ごとに利率が見直されるタイプの終身保険です。

一般的に、終身保険の返戻率というのは契約時の予定利率に合わせて決定されており、何年後にいくらの解約返戻金が支払われるなどといった情報は全て設計書にあらかじめ記載されています。

しかし、積立利率変動型終身保険では、利率が更改されるため金利が上がればその分返戻率が上がるという特徴があります。また、最低利率も定められているため一定水準以下の返戻率になることはありません。

したがって、今後金利が上昇すると考えている方におすすめの保険です。「積立利率変動型×低解約返戻金型」と二つの特徴を組み合わせた終身保険も登場しています。

2-4.外貨建て終身保険

外貨建て終身保険は、アメリカドルやオーストラリアドルなどで運用をする終身保険です。そのため、上記3種類の円建て保険に比べて予定利率は高くなっています。

しかし、保険料支払時に円から外貨へ、解約返戻金(または死亡保険金)受取時に外貨から円へ両替をする必要があり、為替リスクが加わります。受取時に急な円高が起これば予定利率高く運用をしたものの実際に円で受け取る解約返戻金は少なくなり、結果的に返戻率が低いということも起こり得ます。

アメリカの金利上昇が追い風となって契約数も伸びていますが、リスクのある商品のため慎重な選択が必要です。

3.返戻率では比較できない保障内容

終身保険の貯蓄性を重視して保険選びをするときには、ただ単に「20年後の返戻率が一番高いから」などの理由で選ぶと思わぬ落とし穴がある場合もあります。ここでは、返戻率以外にもチェックすべき保障内容を解説していきます。

3-1.特約の有無

終身保険には、特約すなわちオプションとして、終身の死亡保険以外の保障が付加されていることがあります。

医療特約や定期保険特約などがあり、前者は掛け捨ての医療保険、後者は掛け捨ての死亡保険がプラスされます。いずれも掛け捨ての保険料分が上乗せされるため、貯蓄性のある終身保険を選んでも特約の保険料によって貯まりが悪くなってしまいます。そのため、特約有りの保険と無しの保険は単純比較をすることはできないので注意が必要です。

しかし、最近では終身保険に医療保障などをオプションで付けることは減ってきており保険ごとに単品で契約することが主流になってきています。

複数の保険会社の商品を取り扱う保険窓口が増え、保険会社にこだわらず良い保険を組み合わせることが容易になったという要因も大きいです。単品契約には、それぞれの種類の保険を本来の目的でしっかり活用できる、保険の見直しがしやすいなどのメリットがあります。

3-2.保険料払込免除の条件

保険料払込免除特約とは、保険会社が指定する病気などになった場合に以後の保険料を支払わなくても、保険が継続する制度です。

多くの終身保険で保険料払込免除特約を付加できるようになっていますが、保険会社によって払込免除が適用される条件が異なっています。

最も多い条件が三大疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)や高度障害です。しかし、その条件をもっと細かく見ていくと、がんであれば悪性新生物だけが対象となるもの、上皮内新生物も対象となるものなど保険によって異なっています。心筋梗塞や脳卒中は、治療のために手術を受けた場合対象となるもの、一定の日数以上の入院をした場合に対象となるものなど、基準は様々です。

いくら返戻率が高くても、払込免除となる条件が厳しければ総合的に見ると良い保険とは言えないなどのケースがあります。

保険料払込免除特約は付いているかどうかをチェックするだけでなく、その条件まで確認することをおすすめします。

3-3.保険金支払条件の違い

終身保険は、死亡時に保険金が支払われる保険ですが、保険商品によっては高度障害や三大疾病が払込免除特約の条件ではなく、保険金支払の条件となっているものもあります。また、介護認定で要介護2以上となった場合にも保険金を受け取ることができる保険もあります。

保険料払込免除特約と同様に、医師に三大疾病のいずれかと診断されたというだけでは条件を満たさず、長期入院をするなどの条件が必要となる場合があるので、保険金支払条件についても比較して選択するのが良いでしょう。

4.終身保険の返戻率を高くする方法とは

終身保険の返戻率を高くするには、複数の商品を比較することが大切ですが、その他にも返戻率を上げるためのポイントがあります。2つの方法を紹介します。

4-1.短期払いを利用する

保険会社によっては、10年払込、15年払込、60歳払込など払込期間の選択肢が多いものもあります。

終身保険は、払込を短期で完了させ、その資産を長く保険の形で置いておくことによって高い返戻率を得ることができます。

短期払いを利用すると、毎月(または毎年)の負担は増えてしまいますが、返戻率は上昇します。家計に余裕がある場合には短期払いを利用するのも一つの方法です。

4-2.被保険者を検討する

終身保険の被保険者は一家の大黒柱とするのが通例ですが、共働き世帯などで夫婦どちらを被保険者とするか迷っている場合には、夫婦二人分の設計書を作成してもらい返戻率を比較してみることをおすすめします。

一般的には、男性よりも女性、年齢がより低い方が保険料が割安となり返戻率が上がります。

また、最近では非喫煙者(一年以内)であれば所定の検査を受けることで割引保険料が適用される保険商品もあるため、タバコを吸うか吸わないかでも返戻率は変わってきます。被保険者は慎重に選んでみてください。

5.返戻率に満足できない場合の選択肢

死亡保障は欲しいけれど返戻率に満足できず契約を躊躇しているという場合には、定期保険や収入保障保険を検討してみるのもおすすめです。

いずれも、掛け捨てタイプで貯蓄ができるものではありませんが、貯蓄は別の手段で行い、保障は掛け捨ての少額保険を利用するという方法を選択している家庭も増えています。終身保険では保険料が高くなってしまうため高額の保険金は用意しづらいですが、定期保険や収入保障保険を使うと保険料を月々数千円まで抑えられる場合もあります。それぞれの特徴を詳しく見ていきます。

5-1.定期保険

定期保険は一定の期間のみの死亡保障を用意するための保険です。保険期間は10年、15年、20年などの年数で指定する年満了型と、60歳、65歳、70歳などの年齢で指定する歳満了型の二つのタイプがあります。同一の保険期間中は保険料は同額ですが、更新するたびに保険料は上がり、どんどん高額な保険となっていきます。

30代、40代などの働き世代では保険料はそれほど高額ではないため、子どもにお金がかかる期間などピンポイントで死亡保障を備えたい場合に向いています。

現在販売されている多くの定期保険で、非喫煙者割引があったり、血圧や体型によって決められている健康優良体の基準をクリアすれば保険料が割安になるなどの特典があります。

保険料が安ければ掛け捨てでも良いと考える人や、子どもが多いなどの理由で終身保険では準備できないような高額な保障を付けておきたいなどの希望がある場合に向いています。

5-2.収入保障保険

収入保障保険は、死亡時や高度障害時に年金形式の死亡保険が支払われる仕組みの保険です。定期保険や終身保険が一括でまとまった金額が支払われるのに対し、収入保障保険は死亡保険金受取人が一定の年齢に達するまで月10万円や15万円などの年金が給付されることになります。

したがって、死亡保険金総額は保険加入時が最も大きく、経過年数とともに減っていきます。このような理由もあり、一般的に定期保険よりも保険料がさらに割安です。子どもが大きくなるとともに必要な教育資金総額などは減っていくので、必要なタイミングに効率よく保障を用意できるメリットがあります。

6.まとめ

予定利率の高い終身保険の選ぶときのポイントや、返戻率を高くする方法などを解説してきました。

現在は円建て保険の返戻率が軒並み下がっている時代と言えますが、その中でも複数商品を比較し、払込期間などを工夫することによって銀行預金よりも高い利回りを確保することも可能です。

保障を備えつつ貯蓄もしたいという場合には終身保険は今でも十分有効な手段と言うことができるでしょう。

一方で、返戻率の現状を知り終身保険に加入する魅力を感じないという意見があるのも事実です。そのような場合には、投資信託などのより利回りを期待できる金融商品と少額で大きな死亡保障を用意できる定期保険・収入保障保険の組み合わせなどもぜひ検討してみてください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket