終身保険で貯蓄する時のメリットとデメリット

最近は養老保険や年金保険に変わって、貯蓄目的で加入する人が増えているのが終身保険です。貯蓄目的で終身保険に加入する場合は死亡保障として加入する場合と違って注意すべきことがあります。契約内容や解約のタイミングによっては元本割れしてしまう事もあります。そこで今回は終身保険を使って貯蓄する場合に注意したいことについて紹介します。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

近年貯蓄目的で加入する人が増えているのが終身保険です。貯蓄目的で終身保険に加入する場合、契約内容や解約のタイミングによっては、思っている以上にお金が増えない事も。そこで今回は終身保険を使って貯蓄する場合に注意したいことについて紹介します。

1.終身保険で貯蓄に向いている理由

終身保険で貯蓄ができることをご存知の方も多いと思いのではないでしょうか。終身保険をはじめとして保険には貯蓄に向いているものも多くあります。そこで今回は終身保険で貯蓄ができる理由とそれ以外の保険との違いについて紹介します。

1-1.終身保険で貯蓄をすることができる理由

まずは終身保険で貯蓄できる理由について紹介します。終身保険で支払われる保険料は保険会社が、保険料を運用する時に必要な手数料を引いた残りを積立金として運用します。この積立金は公社債を中心に運用されて、将来の保険金の支払いに備えます。積立金は長期間運用するほど、増えていく可能性が高いです。終身保険はこのように生命保険会社が契約者から預かった積立金を運用し、他の保険に比べて預けた保険料よりも増える可能性が高いので終身保険で貯蓄できると言われ、貯蓄目的で終身保険を選ぶ人が増えています。

1-2.終身保険以外に貯蓄ができる保険

終身保険以外にも貯蓄をすることができる保険があります。貯蓄系の保険には、教育資金を準備するための学資保険。老後の資金を準備するための養老保険や年金保険があります。そこで次はそれぞれの保険の特徴を紹介します。

1-2-1.学資保険

学資保険は子供の教育費を準備する目的の保険です。特に高校卒業後、大学や専門学校に進学する場合は教育費が思っている以上に必要です。学資保険の多くはお子さんが高校を卒業する時期に満期になるものが多いです。学資保険には大きく分けると2つのタイプがあります。一つ目が純粋に教育費を準備するためのものです。もう一つは貯蓄と子供の医療保障を組み合わせたタイプです。貯蓄と医療保障を組み合わせた保険は、保険料の一部が医療保障に充てられるため、場合によっては元本割れをしてしまったり、思っている以上にお金が増えていない場合があります。そのため加入時に満期時にいくら給付金を受け取ることができるのか確認しましょう。

定期預金に比べ、同じ金額を毎月積み立てた場合学資保険の方が金利が高いため、お金を多く増やすことが可能です。また学資保険の多くは保険料の負担者である契約者が亡くなってしまった場合や、高度障害になった場合、保険料の支払いが免除されます。このように学資保険は将来に向けて子供の教育費を準備したいと考える人に向いている保険です。

1-2-2.養老保険

死亡時の保障と貯蓄の両方ができるのが養老保険です。養老保険の多くは、契約から満期日までの期間を自由に自分で設定することができる商品が多いです。養老保険は満期日までの被保険者が亡くなった場合や、高度障害になってしまった場合保険金が支払われます。もし満期日まで生存した場合は保険金と同額の満期給付金を受け取ることができます。ただし満期を迎える前に解約をしてしまうと、解約返戻金が払い済み保険料よりも少なくなってしまう可能性が高いです。養老保険はバブル期に多く販売されていました。そのためこの頃に加入した養老保険の中には金利の高いお宝保険が多くあります。そのため2000年よりも前に加入したもので、予定利率が高いものは解約せずにそのまま持っておくほうがいいでしょう。養老保険はバブル崩壊以降、全体的に金利が下がっているため、養老保険で貯蓄をするメリットが低くなっています。また各社が終身保険を販売するようになったため、養老保険の商品数自体減っています。

1-2-3.個人年金保険

個人年金保険は老後の経済リスクに備えるための保険です。そのため多くの個人年金保険は60歳以降に給付金を支払われます。給付金は一括もしくは月々の分割で受け取ることができます。また契約時に給付金の支払い時期を60歳と決めていても、将来支払い時期を先延ばしすることも可能です。もし保険料の支払い前に被保険者が亡くなってしまった場合は、死亡保険金として遺族に死亡保険金が支払われます。また個人年金保険は一定の条件を満たしていれば、毎年支払う保険料が個人年金保険料控除の対象になるため、所得税や住民税の負担を軽減する節税効果があります。個人年金保険は将来受け取ることができる年金額が決まっている確定年金、将来受け取る年金額が決まっていない変額年金など色々な種類が揃っているため、経済状況や将来準備したい金額に合わせて選ぶことが可能です。

2.終身保険で貯蓄するメリット

最近貯蓄をするために保険として人気が高いのが終身保険です。そこで次は終身保険で貯蓄をするメリットについて紹介します。

2-1.定期貯金などの比べて利率が高い

定期貯金の金利に比べ、終身保険の返戻率が高いです。返戻率は保険金総受取額(解約時)÷ 払込済保険料の総額×100で計算することができます。返戻率が100%なら払込保険料の総額と解約金の総額が同額です。返戻率が100%を超えている場合は、払込保険料の総額よりも、解約返戻金が多いことを意味しています。通常終身保険の場合、保険料の払込み後の返戻率が100%以上に設定されています。最近の定期預金は低金利の状態が続いているため、同じ金額を定期預金で預けるよりも、終身保険に預けた方がお金を多く増やすことが可能です。特に低解約返戻型の場合は他の終身保険に比べると、返戻率が高く設定されているため、他の終身保険に比べると、より効率的にお金を増やすことができます。

2-2.他の保険に比べて柔軟性が高い

学資保険の場合は子供の教育資金の準備のため、個人年金保険は老後の資金準備のためと目的が決まっています。例えば学資保険の場合、満期を迎えた時点で、預貯金があり学資保険の給付金を受け取る必要がなくても、そのまま加入し続けることができないため必ず給付金が契約者に支払われます。個人年金保険の場合は給付金の支払い開始が60歳以降に設定されています。また養老保険も同じく契約時に満期日を決めます。これらの保険に比べると、終身保険の場合、解約をして解約返戻金を受け取るため、お金を受け取る時期を自分の裁量で決めることが可能です。ただし早期に解約してしまうと、解約返戻金の金額が払込保険料よりも少なく元本割れしてしまう恐れがあるため解約時は注意が必要です。

2-3.万が一の時に備えることができる

終身保険は死亡保障がついているため、被保険者が亡くなった場合は高度障害になった場合、残された遺族に保険金が支払われます。それだけでなく終身保険には保険料免除特約を付帯することができます。保険料免除特約は3大疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)で所定の状態となってしまったときに保険料の払込が免除になる特約です。がんや心筋梗塞、脳卒中になってしまった場合、入院や手術、その後通院治療が必要になるケースが多く病気になる前と同じように仕事を続けることが難しいです。そのためこれらの病気になってしまうと多くの場合収入が減ってしまいます。この病気による収入が減ってしまうリスクに備えることができるのが保険料免除特約です。保険料免除特約は保険料が発生します。また所定の状態も保険会社によって条件が変わるため、契約時に内容を確認するようにしましょう。

2-4.生命保険料控除の対象になる

終身保険は生命保険料控除の対象になるため、毎年年末調整や確定申告で所定の手続きをすることが所得税や住民税の負担を軽減することが可能です。万が一のリスクに備える終身保険は生命保険料控除の中の一般保険料控除の区分に該当します。一般保険料控除はの対象になる保険は存と死亡に関して保険金や給付金が発生する保険です。生命保険料控除には旧制度と新制度の2つの制度があります。旧制度と新制度それぞれの計算方法は下記の通りです。

旧制度

所得税

・年間払込保険料25,000円以下

払込保険料全額

・年間払込保険料25,000円超50,000円以下

払込保険料×1/2+12,500円

・年間払込保険料50,000円超100,000円以下

払込保険料×1/4+25,000円

・年間払込保険料100,000円超

50,000円

一般生命保険と年金保険の保険料をそれぞれ上記の計算式で計算して合算します。所得税は最大で10万円まで控除を受けることが可能です。

住民税

・年間払込保険料15,000円以下

払込保険料全額

・年間払込保険料15,000円超40,000円以下

払込保険料×1/2+7,500円

・年間払込保険料40,000円超70,000円以下

払込保険料×1/4+17,500円

・年間払込保険料70,000円超

35,000円

住民税の控除額も所得税の同じくそれぞれ上記の計算式で計算して合算します。住民税は最大で7万円まで控除を受けることができます。

次に新制度の場合の計算式は下記の通りです。2011年12月31日以降に加入した保険、及び更新した保険が対象です。

新制度

所得税

・年間払込保険料20,000円以下

払込保険料全額

・年間払込保険料20,000円超40,000円以下

払込保険料×1/2+10,000円

・年間払込保険料40,000円超80,000円以下

払込保険料×1/4+20,000円

・年間払込保険料80,000円超

40,000円

新制度には一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つの区分があるためそれぞれの保険料を下記の計算式で計算します。所得税の場合は3つの区分を合算して最大12万円まで受けることができます。

住民税

・年間払込保険料12,000円以下

払込保険料全額

・年間払込保険料12,000円超32,000円以下

払込保険料×1/2+6,000円

・年間払込保険料32,000円超56,000円以下

払込保険料×1/4+14,000円

・年間払込保険料56,000円超

28,000円

住民税も同じくそれぞれの区分ごとに計算して、合算した合計額の最大7万円まで控除の対象です。旧制度の対象になるのか、新制度の対象になるのかどうか分からない場合は、毎年生命保険会社から送付される保険料保険料控除証明書に記載されています。もしご自分では判断できない場合は、専門家の方や契約時の保険会社の担当者へ相談するといいでしょう。

3.貯蓄目的で終身保険を選ぶ時のポイント

終身保険の本来の目的は死亡時の経済的リスクに備えるための保険です。そのため貯蓄目的で終身保険を選ぶ時に確認すべきポイントがあります。せっかく貯蓄目的で加入するなら、しっかりお金を増やしていきたいですよね。そこで次は貯蓄目的で終身保険を選ぶ時のポイントを紹介します。

3-1.貯蓄の目的を明確にする

貯蓄の目的を明確にすることによって、保険料の払込期間やどのタイプ終身保険を選ぶかが変わります。終身保険には定額終身保険、低解約返戻金型終身保険、積立利率変動型終身保険、変額終身保険、外資建て終身保険の5つの種類があります。教育資金など確実に必要な資金を必要になる時期までに準備したい場合は、より安全で確実に貯蓄できる定額終身保険、低解約返戻金型終身保険、積立利率変動型終身保険が向いています。老後資金など長期間かけて資金を準備する場合、他の種類に比べ、リスクとリターンが大きい変額終身保険や外資建て終身保険を選択肢に加えるのもいいでしょう。このように貯蓄の目的によって選ぶべき終身保険の種類が変わるため、貯蓄目的で終身保険を選ぶ場合は何のために貯蓄をするのかをまず決めましょう。

3-2.保険料の払込期間を決める

終身保険の多くは保険料を払込み後から解約返戻金が増えていくタイプのものが多いです。生命保険会社は契約者から預かった保険料の一部を積立金として、公社債などにまとめて運用していきます。そのため保険料払込後の期間が長くなるほど運用益によって積立金が増えていくため、結果的に解約時の解約返戻金が多くなります。また保険料の払込み期間を40歳や50歳までのように早めに終わらせることで、退職による収入減で保険料の支払いができなくなるリスクを防ぐことが可能です。

3-3.無理のない保険料で始める

終身保険の多くは保険料の払込みが終わる前に解約してしまうと、解約返戻金が支払い保険料の総額よりも少なくなってしまい元本割れしてしまう可能性が高くなってしまいます。保険料の支払いが難しくなった場合、払済保険に契約変更したり、契約者貸付などを利用することで解約を免れることができますが、元本割れしてしまう可能性が高いです。貯蓄目的で終身保険に加入する場合、できる限り解約してしまう事態を避ける必要があります。そのため貯蓄目的で終身保険に加入する場合は、万が一転職や失業などで収入が減ってしまっても支払い続けることができる無理のない保険料で始めましょう。

3-4.複数の商品を検討する

終身保険は各社から多くの商品が販売されています。同じ終身保険でも会社によって、返戻率が異なります。また保険料免除特約を付帯する場合、保険料や保険料が免除になる要件も違います。そのため同じ年齢で、同じ保障額の場合でも保険料や解約時の解約返戻金の金額が異なるケースが多々あります。もし貯蓄目的で終身保険に加入するなら複数の商品を同じ条件で、見積もりを出してから検討するといいでしょう。

4.終身保険で貯蓄する時に注意したいこと

終身保険で貯蓄をするなら少しでもお金を増やしていきたいですよね。終身保険で貯蓄した際に場合によっては、元本割れしてしまったり、解約返戻金に税金がかかってしまい必要な資金を準備できなかったということになってしまうこともあります。そこで次は終身保険で貯蓄をする場合に注意したいことを紹介します。

4-1.解約返戻金を確認する

終身保険で貯蓄をする場合、保険金としてお金を受け取るよりも解約返戻金として受け取るケースが多いでしょう。解約返戻金は解約する時期などによって、金額が変わります。定額終身保険や積立利率変動型終身保険や低解約返戻金型終身保険の場合は、契約時に解約返戻金の推移を確認することができます。契約時に担当者の方に確認するようにしましょう。変額終身保険の場合は積立金の運用金額によって、解約返戻金が変動します。そのため契約時にはあくまでも見込み額でしかわかりません。また同じく外貨建ての終身保険の場合も為替に影響を受けてしまうため、契約時に解約返戻金の金額がわかっていたも為替相場によって目減りしてしまう恐れがあります。そのため解約して解約返戻金を受け取る場合は、かならず解約の手続きをするために実際いくら受け取ることができるのか確認しましょう。

4-2.早期解約の場合は元本割れする恐れがある

終身保険は保険料の払い込みが終わってから、積立金が増えていく場合が多いです。保険料の払い込みが終わる前に解約してしまうと、元本割れしてしまうケースがあります。特に低解約返戻型終身保険の場合、保険料払込期間中に限り、解約返戻金額が通常の70%程度に設定されているいます。このように低解約返戻金型の終身保険は、保険料の払い込みが終わるまでの解約返戻金を少なく設定することで保険料が少なく設定されています。

終身保険の場合早期解約してしまうと、元本割れする恐れがあるため注意が必要です。

4-3.生命保険料控除が受けられないケースがある

加入している終身保険の保険料の全額が生命保険料控除の対象になる訳ではありません。1年で受けることができる控除額は決まっています。控除額を超えた分に関して生命保険料控除を受けることができないので、契約時に生命保険料控除の対象になるかどうか確認するようにしましょう。

4-4.預金のようにすぐにお金を受け取れない

定期預金の場合すぐにお金を受け取ることができます。しかし解約返戻金の場合は現金を受け取るまでに思っている以上に時間がかかってしまいます。解約返戻金を受け取るまでの手続きの流れは下記の通りです。

  1. 営業担当者や代理店、または生命保険会社のコールセンターなどに連絡し、解約に必要な書類を準備する
  2. 解約請求書類に必要事項を記入して生命保険会社へ送付する
  3. 生命保険会社にて書類を処理後、解約返戻金が指定口座へ振り込まれる

このように解約をするためには、書類を郵送でやり取りをする必要があるため、手続きが終わるまで時間がかかってしまうことがあります。また解約の請求は原則契約者本人にしかすることができません。代理人を立てて手続きをすすめることができますが、要件が厳しく、委任状など書類を準備する必要があります。このような理由から解約をする場合はなるべく早めに手続きを行うようにしましょう。

4-5.解約返戻金の受取り時に税金がかかる

終身保険の解約返戻金を受け取る時には、税金がかかってしまう可能性があります。解約返戻金は一時所得の対象です。一時所得の計算方法は下記の通りです。

(解約返戻金-支払保険料総額-50万円(特別控除))×1/2=課税対象額

一時所得は50万円の特別控除があるので、多くの場合解約返戻金は非課税です。ただし変額終身保険で利益が多く出た場合は所得税がかかってしまう可能性が高いので注意してください。

ただし、保険料を支払う契約者と、解約返戻金を受け取る受取人が別人の場合は贈与税の対象になってしまいます。贈与税には110万円まで基礎控除がありますが、110万円を超えた分は全額贈与税の対象になってしまいます。所得税よりも贈与税の方が税金が高くなってしまうため注意してください。

5.まとめ

終身保険は生命保険の中でも、貯蓄をするのに向いている保険です。ただし、注意しないと元本割れしてしまうケースがあります。もし実際に終身保険を使って貯蓄する場合は、事前に専門家に確認してから加入するようにしましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket